観戦すること以外にも様々な楽しみ方があるプロ野球。その中に成績表を眺めるのが好きな人がいます。
ただ数字の羅列の様に見えますが実はロマンが詰まっていて、一見、ただの数字の列挙に見えますが、中には心に刺さる『萌える成績』というものがあります。今回は文字列の芸術『萌える成績』について紹介します。
萌える成績とは……?
成績表を見ていて何が楽しいかというと、チームや選手の成績の推移や成長・衰えをダイレクトに感じることができるからです。また、その選手の役割や個性にそぐう成績(数字の配列)だと美しさも感じ取ることができます。
無機質な数字の文字列から選手のストーリーを夢想できるのが魅力で、さらに数字の並びのいびつさがある選手は、その不器用さが伝わってきて、なお萌える場合があります。
分かりやすい萌える成績
打率.208 22本塁打 37打点 131三振
この数字の並びを見ただけで萌える成績ファンは誰の成績かわかると思います。そう、元横浜の古木克明さんの2003年の成績です。
低い打率と三振過多からイメージされるパワーヒッター感、その答えの様に22本塁打を放つも、37打点という効率の悪い低打点が、古木氏の天才性と不器用な所が伝わってきます。
10勝7敗 防御率6.26
2004年の斉藤和巳投手の成績。ホークスの一時代を支えた大エースでありながら、この年だけは不調という言葉では片づけられない数字です。先発投手で、最低限の10勝をあげるも防御率6点台というのは近年でもなかなか見られない成績。それでも先発で使われる斉藤の信頼感がうかがえ萌えます。
ぼくのかんがえるもえるせいせき
この項は主観なので異論があると思いますが、私がぐっとくる萌える成績を紹介します。
元横浜で主に1番打者を担った石井琢朗氏の成績です。
1999年 打率.292 8本塁打 58打点 39盗塁 出塁率.382
2000年 打率.302 10本塁打 50打点 35盗塁 出塁率.375
この2年だと99年の成績が萌えます。この年は1番打者っぽいところとぽくないところが混在していて美しいです。「ぽいところ」はわずかに3割に届かないけど高打率、しかし3割を打った翌年より出塁率が高い。本塁打も2ケタに届かない8本。10本に乗ると中距離バッターのイメージが付くので少し減点になる印象です。
そんな中、輝くのは58打点。打点に絡みにくい1番打者にしてこれは高い数字。高すぎるとクリンナップ、低すぎると下位打線、もしくは凡庸の1番打者感があるので、この数字は萌えます。これはいい意味で旧来の1番打者のイメージをそのまま数字に置き換えたような成績ですが、次に紹介するのは違った意味でうっとりします。
2007年、巨人の高橋由伸氏の成績
打率.308 35本塁打 88打点
完全にクリンナップの成績ですが、この年は主に1番打者で起用されていました。このように「ウソみたいだろ、これで一番打者なんだぜ」という文字列も非常に魅力的です。
実例 萌える成績
元阪神 福原忍投手
2004年 10勝15敗 防御率3.87
先発投手でしたが援護に恵まれずシーズン最多の15敗を喫しました。しかし10勝を上げ防御率もまあまあというところが、孤軍奮闘した感じが伝わってきます。
元オリックス 金田政彦投手
2002年 4勝9敗 防御率2.50
援護に恵まれなかった先発投手で、福原投手と違うところは勝敗にすらからめないというところ。さらに最優秀防御率を獲得したところもロマンを感じます。
元西武 秋山幸二外野手
1990年 打率.256 35本塁打 91打点 51盗塁(盗塁王)
主に3番打者だった秋山選手。3割を打った年もあればトリプルスリー、40本塁打超えなども何度もあった天才的な選手。あえてこの年を萌えるとして取り上げるのは、打率は低いもののクリンナップとしては素晴らしい長打力と打点を上げているのに、キングを獲得してしまった盗塁数。
役割的に盗塁を稼ぎにくい状況でこの数字は美観だけではなく、球団や仲間からよく思われていなかっただろうな、という勝手な妄想が出来るところが美しいです。
上記で紹介したようにぱっと見の成績の良し悪しではなく文字列の美観や数字から垣間見えるストーリーが萌えるのです。
さて今回、代表例ともなるヤクルトの古田氏、阪神の今岡氏(両元選手)を取り上げませんでした。というのもこの2人は、萌える成績+『三倍打点』というカテゴリーにも分類されるためです。この『三倍打点』についてはまたいつか紹介します。