4月27日から公開の映画『パパは奮闘中!』。
悪待遇ながらも生活の為、配送業の倉庫で働く主人公。家族ぐるみで付き合いのある同僚が「年配で仕事が遅い」とクビになり、そのまま自殺。頭を抱えてると、今度は主人公の奥さんが突然の失踪。わんぱく盛りの息子2人の育児と職場の問題と七転八倒するパパ奮闘記がスタート!!
日本も笑えないブラック職場っぷり!!
妊娠したからと女性従業員をクビにしたり、出勤と同時に残業を言い渡され、暖房を着けてと言ったら「嫌なら辞めろ」と返ってくる恐ろしいブラックな職場環境。全然、日本も他人事ではないです。
それだけでもダウナーな展開なのに、奥さんが何も言わずに失踪と、まるでホラー映画。仕事と育児をしつつ、奥さん探しミステリーもオプション追加。
それでも、作品全体のトーンがダークになり過ぎないのは、主人公の息子たちの茶目っ気にあり。母親がいない事に小首をかしげながら、父親との距離感をはかる様子は微笑ましく、とても可愛いです。それでいて、深夜、ベッドの上で、母親の香りが残る衣類の匂いを嗅いで寂しさを誤魔化すシーンが泣けます。
勿論、そんな母親のいない状況に、息子たちも問題を抱え始めていきます。
企画のスタートは監督の離婚劇?!
メガホンを取るのは、長編映画初監督作となる『Keeper』で、70を超える映画祭に招待され20以上の賞を受賞したベルギー生まれのギヨーム・セネズ監督。長編2作目となる本作も2018年のカンヌ国際映画祭批評家週間に出品、称賛されました。
本作の企画のスタートは監督自身の離婚。先日、マガジンサミットでインタビュー取材に行った際には、「確かに妻がいなくなるんですけど、本作では彼女を批難や糾弾しないというのが、テーマなんです。母親であり、妻である女性はいなくなるんですけど、その不在によって、存在感がますます増すというのを意図しています」と語っていました。その想いは、見事に作品の中に織り込まれています。
撮影現場で役者に脚本を見せない?!
主人公を演じるのは、映画ファン以外には日本での知名度は低いものの、フランスでは人気俳優のロマン・デュリス。フランスの鬼才監督セドリック・クラピッシュの作品で俳優探しをしてた所、街角でスカウトされ『青春シンドローム』でデビュー。その後も『スパニッシュ・アパートメント』『ロシアン・ドールズ』『ニューヨークの巴里夫』の三部作へ出演。さらに、ベルリン国際映画祭で金熊賞にノミネートされた『真夜中のピアニスト』では夢に向かって悪戦苦闘する主人公のピアニスト役を熱演。様々な賞にノミネートされたお方。
本作でも、安定の演技力により、仕事&育児に追われる奮闘の日々の中、息子たちとの絆を見出だす主人公を熱演。
実は本作は役者たちに脚本を渡さず、現場でのディスカッションによりシーンを撮影していったとの事。「この仕事のやり方のいい所は俳優に自由を与え、自発的なリアリティを引き出される事なんです。それによって観客は、描写を信用できますし、リアルな登場人物に感情移入できるんです。結果的に登場人物が言葉に詰まったり、言葉を探したり、台詞がバッティングしたり。なぜか他の映画はそういう自然さを消そうとしますよね」というのは、 セネズ監督の弁。 その自然さは観客への感情移入を手伝い、静かだけど、心に染みてくる一本に仕上がっています。
映画『パパは奮闘中!』は、4月27日(土)より新宿武蔵野館ほか全国順次公開となります。
@2018 Iota Production / LFP – Les Films Pelléas / RTBF / Auvergne-Rhöne-Alpes Cinéma
ギボ・ログ★★★☆☆
映画『パパは奮闘中!』
監督・脚本:ギヨーム・セネズ
共同脚本:ラファエル・デプレシャン
出演:ロマン・デュリス『タイピスト!』『モリエール 恋こそ喜劇』レティシア・ドッシュ『若い女』、ロール・カラミー『バツイチは恋のはじまり』、バジル・グランバーガー、レナ・ジェラルド・ボス、ルーシー・ドゥベイ
ベルギー・フランス/2018年/99分/フランス語/字幕:丸山垂穂
配給・宣伝:セテラ・インターナショナル
宣伝協力:テレザ、ポイント・セット
協賛:ベルギー王国フランス語共同体政府国際交流振興庁(WBI)
http://www.cetera.co.jp/funto