野球選手にとって憧れであるプロ球界。ドラフトに指名されれば1も2もなく入団…というわけではないようで、稀に入団拒否の意向を示す選手がいます。今年でいえば、大阪代表として甲子園にも出場した履正社の山口投手が日ハム6位を蹴って社会人への意思を発表しました。
理由は「ドラフト下位指名だから」。そこには切実な理由があるようで下位は契約金、年俸といった金銭的待遇はもとより、“扱い”(起用法・育成法)などがまるで違うという。果たして下位指名は不利なのか?そこで下位指名でもプロ野球史に名を残した選手を紹介します。
現役の下位指名選手
ドラフト4位…イチロー選手(現マイアミマーリンズ)
高校を経て91年、オリックスに入団した、説明不要の日本を代表するプレーヤー。入団し2年間は、独特なバッテングフォームもあり干された状態でしたが、仰木監督になると才能が開花。メジャー移籍まで7年連続首位打者を獲得しました。
ドラフト5位…摂津正投手(ソフトバンクホークス)
社会人を経て08年に入団。初年度から頭角を現し70試合に登板、39ホールドポイントで最優秀中継ぎ投手を獲得し新人王に。3年目からは先発に転向すると、12年には17勝をあげ、沢村賞に選出されました。
ドラフト6位…新井貴浩選手(広島カープ)
大学を経て98年、広島に入団。1年目から長打力を見せつけ、3年目にはレギュラー定着。以後、ホームラン王、打点王に輝くなど、所属したチームの打線の中核を担っています。今年の広島快進撃の立役者の一人でもあります。
ドラフト7巡目…角中勝也選手(ロッテマリーンズ)
独立リーグから06年にロッテに入団。しばらくはくすぶっていましたが、6年目に打撃開眼でいきなり首位打者。今年は二度目の首位打者に輝きました。
育成ドラフト…山口鉄也投手(巨人)
05年、複数の入団テストで不合格する中、巨人で合格。その年始まった育成ドラフトで入団。1年目から1軍登板を果たし、巨人の投手陣にはなくてはならないサウスポー。10年間で624登板、270ホールドは日本記録更新中。年俸も推定3億2000万円という、育成ドラフト選手の中でトップの活躍を見せています。
引退した下位指名の名選手
・6位…工藤公康さん 西武に入団。以後5球団をわたり歩き通算224勝。防御率タイトル4度。実働29年は日本記録。
・7位…福本豊さん 阪急入団し通算2543安打。1065盗塁は日本記録。国民栄誉賞を断る。
・6位…掛布雅之さん 阪神で3度のホームラン王に輝いたミスタータイガース。
・ドラフト外…石井琢朗さん 長らく横浜のショートを守った名リードオフマン。4度の盗塁王。1度目はアイドル、2度目はアナウンサーと結婚。
・ドラフト外…秋山幸二さん 走攻守揃った天才。メジャースカウトも目をつけていたスラッガー。
・ドラフト外…松永浩美さん 78年、阪急入団。通算1904安打で史上最高のスイッチヒッターと呼ばれた。日本球界初のFA権行使選手。
・ドラフト外…大野豊さん 76年、広島に入団。148勝138Sと先発・抑えとフル回転のサウスポー。
・7位…大矢明彦さん 69年、ヤクルト入団。高い盗塁阻止率を誇り長年ヤクルトの捕手の座を守った。
下位指名で打線を組んでみた
1番…福本豊(左:D7:阪急)
2番…石井琢朗(遊:D外:横浜)
3番…イチロー(右:D4:マーリンズ)
4番…掛布雅之(三:D6:阪神)
5番…秋山幸二(中:D外:西武)
6番…新井貴浩(DH:D6:広島)
7番…福浦和也(一:D7:ロッテ)
8番…後藤光尊(二:D10:楽天)
9番…大矢明彦(捕:D7:ヤクルト)
先発投手…工藤公康(D6:西武)
中継投手…山口鉄也(育成D:巨人)
抑え投手…大野豊(D外:広島)
ドラフト制以降の選手を紹介しましたがいかがだったでしょうか。今回挙げた選手の中には、制度の穴をつき一本釣りや下位指名で入団した選手もいるため、一概に『下位指名』とくくるには異論がある方もいると思います。とはいえ、下位指名でも這い上がれる素地は確実にあるプロ野球界。最初は恵まれていなくても才能と運があれば山口投手のように3億円稼ぐことも可能ということです。