プロ野球球団拡張「参加企業・団体を大募集しよう!」新コミッショナーで変われNPB

2017/11/17
放送作家 石原ヒサトシ

 

2017年日本シリーズは、セ3位が進出したことでCSの在り方が話題に。“チームが少ない”という声もよく聞かれました。そんな中、日本野球機構(以下、NPB)では、1127日に新コミッショナーに斉藤惇(さいとうあつし)氏が就任の見込みと報じられました。そこで、改めて、時々出ては消えるこの話題を本当に検討してほしい。

 

提案「プロ野球球団を数年計画で12から16へ増やす」

 

斉藤氏は野村証券副社長、東京証券取引所社長、日本取引所グループ取締役兼代表執行役グループCEOなどを歴任。今年7月からNPBコミッショナー顧問に就いているという人物です。過去に多かった天下りとは違い、オーナー側からのコミッショナー選出ですから、しっかりとリーダーシップを取ってほしい、そして後世に名を残す大改革を起こしてほしいと思います。

 

これは、一人の野球ファンとして、またテレビ・ラジオに携わる人間の目線も交えて考察した、NPBへの嘆願です。

 

15球団時代があった

 

まず、歴史を少し振り返ります。そもそも15球団あったことを知っていますか? 1950年(昭和25年)、プロ野球が2リーグ制になったときは

 

セ・8球団(松竹、中日、巨人、大阪、大洋、西日本、国鉄、広島)

パ・7球団(毎日、南海、大映、阪急、西鉄、東急、近鉄)

 

これが最大で、それから数年間は、統合、消滅、新規参入など目まぐるしく変化。ちなみに1954年~1956年の3年間はパ・8球団でした。そして1958年から現在の12球団になります。

 

チーム減少の危機は二度ありました。1973年、人気低迷のパ・リーグで日拓がロッテに合併を打診。南海と近鉄との合併も取り沙汰され、1リーグ10球団への動きがありました。結局、日拓が日本ハムに身売りして騒動が収束。その後、特にパ・リーグは1年毎に身売りが続くこともありました。

 

2004年には、オリックスと近鉄が合併する騒動に。新球団に楽天が誕生し12球団を保ちました。これらの出来事がトラウマなのでしょうか、来年で60年間、チーム数は変わらずってことになります。

 

メジャーは増やしに増やした

一方、よく比較される米国メジャーリーグはどうでしょう? 55年前はたった16球団でした。地方都市にチームを次々誕生させ活性化、1998年に2球団増やして現在の30球団になりました。近年は経営が好調なため5、6年後に2球団増やす構想を発表しています。

 

日本と国土面積がかなり違うので比べ物にならない・・・と思われそうですが、人口は米国が3億1千万、日本は1億2700万です。マーケットの違いなどありますが人口比率だけ考えると、球団を増やすのはそんなにムリな事? と思います。

 

2014年、政府が16球団構想を…

覚えている人も多いと思いますが、2014年のアベノミクス成長戦略に、プロ野球を16球団に球団拡張する構想が盛り込まれました。この時の、プロ野球関係者の声をあげると・・・

 

A監督「小さくしたらプロ野球は活性化しない。国民を喜ばすという理念には賛成」

B監督「球界にとってありがたい話。ただ、レベルが下がっていけない」

 

野球評論家Cさん「アホとしかいいようがない。誰が新球団の経営をやるの。寝ぼけたことを」

 

ネット上でも意見が飛び交いました。あるサイトでのアンケートを見ると賛成55%反対45%でした。反対意見で多かったのは「現状でも経営が難しい球団があるのに無謀。参入に手を挙げる企業があるのか?」「ファンが減少傾向にあるのに奪い合うことになる。経営が悪化する」「プロ野球のレベルが低くなる」といったところ。全体的に経営が苦しいならNPBも「ムチャ言わないで下さい」と言えそうですが…。

 

球団経営はほぼ黒字!?

 

赤字球団ばかりとよく言われますが、今年出された「会社四季報業界地図2017年版」(東洋経済新報社)を見て下さい。数字は2015年のものです。

 

 

観客動員で約20%セ・リーグが上回っていますが、売上高の差は殆どありません。2005年に楽天が誕生したと同時に経営改革に本腰を入れた各球団は、メジャーリーグの戦略などを手本にしてファンを獲得。約10年で利益が見込める経営術やノウハウを身につけたわけです。

 

公式戦の観客動員数を見ても・・・

2005年 19,924,613人(846試合 1試合平均23,551人)

 

2016年 24,581,914人(858試合 1試合平均29,116人)

2017年 25,139,463人(858試合 1試合平均29,300人)

 

マイナスになった年もありましたし、微増の年が殆どですが、長いスパンで見ると右肩上がりなんです。つまり、球団経営に一応のビジネスモデルができている、といえます。

 

日・米コミッショナーの違い

 

MLBは先頭に立つ

米国MLBのコミッショナーは、オーナーの投票でMLB関係者の中から選出されます。現コミッショナーのロブ・マンフレッド氏は、弁護士として1980年代から労使交渉などでMLBに携わり、1994年のストライキ騒動の際にはオーナー側の相談役を務めました。その後、MLB入りし、薬物問題などでも活躍、長年の実績が評価されて、2015年にオーナーの投票によりコミッショナーに就任します。

 

そして、ロブ氏はこんな方針を打ち出しました。

 

「都市部などでの野球スペースの確保や、リトルリーグやユースプログラムの拡大など、子供達が野球をプレーする機会がより多くなるよう環境を整えていく。メジャーリーグの歴史や伝統を重んじた上で、試合時間短縮など近代化を図っていく」

 

野球ができる環境整備と野球人口の拡大を念頭に掲げるなど、明確に謳っていますMLB関係者で現代野球の事情を把握し、未来のビジョンを持っていますよね。リーダーシップを執っています。

 

NPBは見習うべき

2004年球団再編問題の際に「日本にもMLB程の権限を有し、実際に行使できるコミッショナーを待望する」という声が高まりました。それまでは、政府の天下り的な人が務めていて、オーナーより威厳がなかったんですね・・・というか、そんなに変わっていない気がします。退任する熊崎勝彦コミッショナーがホームページに載せているご挨拶を見ると

 

「組織の整備、強化」、「野球事業の拡充」、アマチュアとプロの一層の連携等を図り、球界全体の規模を大きくし、活力あるものにするために邁進しなければいけないと考えております』

 

“球界全体の規模を大きくし”など、色々言っていますが、MLBと違って、具体的にやりたいことが書いてないです。リーダーシップは執れていると思えませんし、今まで何をやっていたかよくわかりません。

 

NPBは社員約80名とありますが、社員名簿を見ると12球団名が書いてあり、更に役員名簿を見ると、トップに代表理事の熊崎勝彦氏が載っていて右欄は空白。その下に理事12人、監事2人の名前があり、右欄は全て“非常勤”となっています。リアル関係者じゃなく天下りなんでしょうか。

 

政治的にしょうがないのかもしれませんけど役員が多すぎ、ファンのチケット代などから給与が支払われているなら感じ悪いです。それなら永くNPBで意欲的に働いているリアルな職員さんを上に立てて欲しいですし、なんか理不尽です。

 

 

構造改革のプロジェクトを

 

NPBは、7月にNPBエンタープライズなどの事業経営方法について助言するコミッショナー顧問を、数名就けたそうです(その中に、斉藤惇氏がいます)。

 

2005年に、プロ野球構造改革協議会という、オーナーや選手会、各界の有識者が集う会が発足されましたが、このようなプロジェクトを組み、プロ野球の未来を見据えた議論を継続していくべきだと思うんです。新コミッショナーは、こういった、NPBのリアル関係者に加え、選手会、そして外部の有識者などを集めた会議を定期的に行い、プロ野球の未来を育む改革案を話し合って、ファンに公表するといったことをしてほしいと思います。

 

最初からムリだと決めつけてない?

何が残念かというと、2014年政府から16球団拡張構想が出た際、NPBからのコメントをほぼ聞かなかったことです。コミッショナーは何かリアクションしたのでしょうか? オーナー会議で16球団に増やすとしたら…と少しでも前向きに検討したのでしょうか? そんな詳細を聞かないうちに政府は戦略から外して騒ぎは消えてしまいました。残念です。そこで、言いたいのです。

 

NPBさん、球団拡張を最初からムリだと決めつけていませんか?

チームが少ないよりも多いほうが理想的ですよね? 日本一の伝統と人気を誇るプロスポーツ集団なんですよ? それが60年変わらないんですよ? 本気で拡張計画を検討したことがありますか? 世間に声をかけ募集したことありますか? 大々的にやって反応をみましょうよ。例えばですよ…

 

プロ野球新規参入大募集!

プロ野球は球団を◯年計画で4球団拡張したいと考えています

そこで、新規参入したいという企業・団体を大々的に募集します

クリア条件はこちらです

(*ちなみに、楽天の場合は、こんな条件があったとか?!)

・資金100億円

・NPBへ25億円の預かり保証金

・野球振興協力金4億円

・加入手数料1億円

など

審査、面接などを経て検討の上、決定。応募多数の場合は抽選です

承認チーム数が満たない場合、計画見送りもあります

 

アホなこと言ってると思うでしょ? でも単純な疑問があります。プロ野球規約の第6章「参加規約」を読むことはできますが、プロ野球チームを作りたいという企業・団体があったとして、NPBが本気で募集をかけなければ手は挙げませんよ。参入を希望する企業・団体って、全国にどれくらいあるかわからないですよね? 

 

今や儲かっているIT企業は沢山あるし、12球団の親会社より稼いでいる企業なんて沢山あります。資金力がある企業が参入してくれたら嬉しいでしょ? 大々的に募るわけだから、加入料なし、他のお金もNPBが少し補填する懐の大きさを見せて、初期投資額のハードルを少し低くし、色々な条件も見直して受け入れ間口を広くしましょう。

 

そうすれば手を挙げる所は1つや2つじゃないと思います。ちなみに、お金は一括じゃなくて参入決定から数年の分割払いで。MLBはそうしています。参加企業を秘密裏にリサーチするとかじゃなく、こういうことを大々的にやりましょう!

 

というか、この提案もおかしな話で、親会社ありきで話を進めるのではなく、本来は「球団を作る」とNPBが決めて率先的に動くことが大事なんですけどね。“球団を増やそう”とは、誰かが言わなきゃ始まりません。2014年も政府から提案されるなんておかしな話で、本来はNPBが発信すべき事案なのです。決めるのは本来、最高権限者なんですよ、新コミッショナーさん。

 

2004年の再編騒動で、野村克也さんは、よくこんなことを言っていました。「プロ野球はずっと12球団のままだからダメなんだ。増やすことを考えなければ」。

 

サッカー、バレー、バスケット、他のスポーツでプロが増え、しかもチーム数は12以上あります。規模、経営スタイル、選手年俸といったレベルの違いはさておき、プロ野球にチームが増えないというのはなぜ? できないからやらない、ではなく、やらないからできない、のではないでしょうか。今こそ、新コミッショナーの威厳とやる気に期待したいのです。

 

では、どうすればうまく16球団でプロ野球が遂行できるか?! 考察したコラムは「プロ野球大改革! 数年かけて16球団に増やすシミュレーション」で。

 

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この記事を書いた人

放送作家 石原ヒサトシ

放送作家 「クイズ雑学王」、「ボキャブラ天国」等 バラエティを中心にイロイロやってきました。なんか面白いことないかなぁ~と思いながら日々過ごしています。野球、阪神、競馬、ももクロ、チヌ釣り、家電、クイズ・雑学、料理、酒、神社・仏閣、オカルトなことがスキです。

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