「痛くなってから」を終わらせる。予測型歯科医療が守る、患者の未来

2026/04/21
マガジンサミット編集部

美容院に通うように、歯科医院へ通う。そんな未来が当たり前になる。歯は一度失えば二度と戻らない。それにもかかわらず、日本の歯科医療は長く「削って詰める」治療を繰り返してきた。その在り方に疑問を抱くのが、山梨県韮崎市で地域医療を支える小林歯科医院の院長・小林健二氏だ。悪くなってから治すのではなく、悪くならないように守る。そのために必要なのは、治療技術の提供だけでなく、歯科医療の“考え方”を変えることだという。父から受け継いだ医院で挑む、新しい歯科医療の真意を伺った。 

歯は、失ってからでは守れない

天然の歯に勝るものはありません。私は、歯科医の父と歯科衛生士の母のもとで育ち、「歯は守るもの」だと幼いころから教え込まれてきました。歯並びが整い、天然の歯がすべてそろっていることこそが、口にとって最も健やかで強い状態です。

しかし、歯が重なり磨き残しが生じやすい環境があれば、そこから虫歯は始まってしまいます。だからこそ、まずは口腔環境を整え、大切な歯を守り抜くことが何より重要なのです。

実家の敷地内にあった小林歯科医院には、何度も通う患者さんの姿がありました。「どうして同じ人が、これほど頻繁に通うのだろう」―子ども心に抱いたその疑問が、歯科医師となった今の私の原点です。

虫歯治療は、小さな詰め物から大きな修復、神経の処置、そして抜歯へと進むことがあります。一度削った歯は二度と元に戻りません。それどころか、再治療を繰り返すリスクさえ抱えることになります。

雑誌のアンケートでも「失って後悔するもの」の上位には、常に「歯」がランクインします。私自身、幼いころに乳歯を一本失い、その喪失感を身をもって実感しました。

だからこそ大切なのは、虫歯にならないこと。天然の歯を守り続けるための「予防医療」を、これからも追求していきたいと考えています。

すべてを「見える化」し、納得から始める

治療の第一歩は、口の中の状態を「クリアにすること」です。

歯科医院は「虫歯を治す場所」というイメージが強いですが、痛みが出てからでは手遅れになるケースも少なくありません。まずは患者さんと丁寧に対話し、レントゲン撮影などを通じて口腔内全体を正確に把握する。そして、その情報を余すことなく患者さんに共有します。何が起きているのか分からないまま治療が進むことほど、不安なものはないからです。

そのうえで、私たちは治療計画を共に立てていきます。保険診療に限らず、将来を見据えた多様な選択肢を提示し、心から納得して選んでいただく。従来の「悪くなったら削る」という場当たり的な考え方ではなく、互いに同じゴールを目指し、前向きに向き合える関係を築くことが理想です。

また、どれほど精密な治療を施しても、ご自宅でのセルフケアが不十分では再発を防げません。そのため当院では、形式的なアドバイスにとどまらない「TBI(専門的な歯磨き指導)」に注力しています。染め出しによって磨き残しを可視化し、ご自身の癖を理解したうえで正しいケアを習慣化していただく。これは治療の前段階として欠かせない、本質的なプロセスです。

万が一、病気が進行してしまった場合には、歯科用顕微鏡「マイクロスコープ」を用いた精密な治療を行い、再発リスクを最小限に抑えます。

すべてを明らかにし、共有し、自ら守る力を高めていく。その積み重ねこそが、大切な歯を一生涯守り続ける唯一の道だと信じています。

治す医療から、守る医療へ

歯科医院は、ただ治療をする場所ではありません。いま、その役割は確実に変わり始めています。

私の理想は、美容院に通うような感覚で、3〜4カ月に一度、定期的なメンテナンスに気軽に足を運んでいただける存在になることです。

虫歯や歯周病を防ぐことは大前提。そのうえで「美しさ」や「自信」まで支えるのが、これからの歯科の役割だと考えています。整った歯は社会的な印象にもつながります。当院ではホワイトニングやセラミックなどの審美歯科に加え、ボツリヌス治療やリジュランといった美容医療も導入。歯だけでなく口元、さらには顔全体までを視野に入れた「木も見て、森も診る」診療を行っています。

口元は体の入り口であり、表情や姿勢にも影響する重要なパーツです。健康と美容は切り離せません。歯科と美容医療を融合させ、見た目だけでなく機能まで支える「医療としての美容」を提供したいと考えています。

同時に、軸にあるのはあくまで予防です。歯科の根本的な課題は「痛くなるまで受診しない」こと。その背景には、失って初めて歯の価値に気づくという現実があります。だからこそTBIを徹底し、セルフケアの質を高めることを最優先に取り組んでいます。

さらに今後は、噛み合わせや生活習慣などのデータを蓄積し、将来のリスクを予測する「予測型歯科医療」へと進化させていきます。目指すのは、歯で後悔しない人生をつくること。山梨県韮崎市から、歯の健康寿命を延ばす地域づくりを実現していきます。

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