脂質(油脂)の健康価値や日常生活でのとり入れ方を発信しているヘルシーオイル・プラス・コンソーシアムが「今年の冬こそ知りたい!ヘルシーオイルの可能性」メディア勉強会を開催。脂質・油の中でも近年、特に注目を集めている「MCT」と「オメガ3(アマニ油・えごま油)」の2つの油が、なぜ今年の冬におすすめなのか、その健康価値について医師など専門家によって説明があった。
最新調査では直近10年で男性肥満者の数や男女ともに悪玉コレステロール値が増加している事実があり注意すべき健康課題になっている。しかし油を避けるのではなく、上手とり入れることが大事で、中でも「MCT」「オメガ3(アマニ油・えごま油)」の摂取をすすめている。それについて医師による解説が次のようにあった。
先ず、登壇したのは虎ノ門中村クリニック院長 中村康宏先生。ココナッツなどヤシ科植物の種実、牛乳や母乳に含まれる成分でもある中鎖脂肪酸(Medium Chain Triglyceride)「MCT」について語った。
MCTの特徴としては一般的な油(LCT)より効率よく分解され約4倍も早くエネルギーになる。そのため、MCTを継続的にとると、普段の生活を送るだけで効率よく脂肪燃焼できると言う。
エネルギーを生み出すための方法として、糖と脂肪の2つの燃焼回路があり、まずはすぐエネルギーとなる糖から使う。そのため、人は活動する時、先に糖燃焼回路を多く使うため、脂肪からエネルギーを生み出すことが少ない。そして脂肪燃焼回路を上手に使えないと蓄積した脂肪は減らず、肥満につながるのだ。そこでMCTを摂取すると普段の生活レベルでも脂肪燃焼効果を高めることができると中村先生は説明した。
実際にMCTを食事にとり入れた実験を行うと、12週間(約3ヶ月)で一般的な油に比べて4.4kg分の体脂肪をエネルギーに変えることができる結果が出た。
※出典:M.Kasai,et al. Asia Pac J Clin.Nutr.12(2),151-160(2003)
これは脂肪燃焼回路を動かす鍵がケトン体のためである。MCTを継続的に摂取するとケトン体が増加し、エネルギーをつくるミトコンドリアが活性化。脂肪燃焼回路がスイッチオンとなり、糖燃焼回路と両方の回路が働くハイブリッドエネルギー回路になるのだ。
エネルギーがつくられると脂肪燃焼だけでなく、体温も上昇するため、この寒い冬にMCTをとることは冷え対策にも繋がる。MCTオイルの使い方のポイントとしてはまずは小さじ半分(2g)から空腹時を避けてとる。
そして加熱には不向きなので、できあがった料理にかけるのがおすすめだ。ドレッシング、青汁、ヨーグルトに入れるのもいいそうで、ぜひこの寒い冬からMCTを摂取してほしいと語った。
工藤内科院長 工藤孝文先生からはオメガ3について解説があった。
オメガ3とは体内ではつくることのできない必須脂肪酸。アマニ油やえごま油、サンマ、サバ等に含まれている。オメガ3はからだのめぐりを整えてくれると工藤先生は言う。細胞の膜(細胞膜)は脂質(油)からできていて、栄養や老廃物を通す役割やホルモンの調整など重要な役割をもつ。
しかし細胞膜が硬いと細胞は本来の働きができない。細胞膜の柔軟性に必要なのがオメガ3なのだ。そして細胞膜の柔軟性が上がると栄養や水分を取り込みやすくなり、老廃物を出しやすくなる。さらに、細胞膜が柔らかければ赤血球も柔らかくなり酸素がからだの隅々までいきわたり、血流も良くなる。これにより、オメガ3をとることで、からだのめぐりが整うと解説した。
また今年の冬は寒暖差が激しく、脱水や自律神経の乱れにより、長期間、血流が悪い状態が続いている。それにより冷え性やむくみ、凝り、肌荒れ、薄毛などにつながるため、オメガ3を摂取してからだをめぐらせることをすすめると工藤先生は語る。
お肉やタンパク質中心の食生活を続け悪玉コレステロールが蓄積しノロノロ血流になっている人は心筋梗塞や脳梗塞になりやすい。急に冷え込んだ11月よりこの病気も急激に増えているため、血栓ができるのを抑制するなど血管の炎症を抑える効果があり、過剰な悪玉コレステロールの合成を抑えるオメガ3をとるといい。
オメガ3を多く摂取するイヌイットは心臓病による死亡率が低いという調査結果も出ているほどだ。その他、冷え性改善や肌の改善などオメガ3を摂取することは健康と美容にも良い影響を及ぼしてくれる。オメガ3の使い方としては熱に弱いため、完成した料理にかける、たんぱく質と一緒に摂るのもおすすめ。また、アマニ油は女性にはホルモンを整えてくれる働きもあっていいと工藤先生はアドバイスした。日々の週間として積極的に摂りたい油である。
日清オイリオグループ株式会社 技術本部 基礎研究所 第 1 課 渡邉 愼二氏からはMCTの研究の歴史とBMIが高めの方の日常活動時の脂肪燃焼を高めるエビデンス紹介があった。病気中はなかなか栄養がとりづらいこともあり、エネルギーとしてすぐに利用されやすいMCTは1950年代から各種医療領域でも使用されている。
研究の背景としてあるのが「非運動性熱産生(NEAT)」の減少。NEATとは、日常生活で消費するエネルギーのうち、「運動(エクササイズ)」以外のエネルギー消費のことを指す。昨今、運動不足だけでなく、座位時間の増加や家事の省力化などにより、NEATが減少しているのだという。
MCTオイルをとり入れ、NEATを少し増やすことで肥満解消や脂肪燃焼を促進するということが今回の研究で明らかになっている。
このように、MCTをとると脂肪代謝がアップ、メタボ予防効果もあるため、現代の肥満率が上がっている社会にもあっている。一層、手軽な体脂肪対策のサポートのためMCT等の油脂の可能性を開拓していきたいと話した。
MCTやオメガ3のオイルは積極的に摂りたい油であることがわかる。適量を毎日、続けることが大切なので、ご自身の健康・美容のために摂取をスタートしてみてはいかがだろうか。