ちくわや魚肉ソーセージを食べるだけで筋肉が増える? スケソウダラの速筋タンパク質が注目されている理由

2020/02/12
マガジンサミット編集部

かまぼこやちくわ、魚肉ソーセージといった“練りもの”の原材料として利用され、和食文化にかかせない魚、スケソウダラ。今、この日本人にとって身近すぎる魚の驚くべき栄養機能が注目されていることをご存じでしょうか。

スケソウダラは、各種アミノ酸をバランスよく含み、体内に吸収されやすい質の高いタンパク質が摂れる他、ビタミン(特にB12)やミネラル、カリウムなどを豊富に含み、近年、健康食としての需要が高まっています。さらに、そのタンパク質に筋肉増加効果があることが発見され、筋肉内の瞬発力を司る「速筋」が増えた実験例が報告さているのです。

筋トレをしなくても、スケソウダラを食べるだけで筋肉が増えるらしい? だとしたら画期的な情報です。早速、編集部は都内で開催されたメディア向けセミナー『食べるだけで筋肉がつく スケソウダラの速筋タンパク質の最新研究』に参加してきました。

そもそも「速筋」とは?

筋肉の筋線維は大きく「速筋」と「遅筋」の2種類に分けられます。それらは筋繊維内でモザイクのように構成されており、それぞれ、速筋は瞬発力…筋トレや短距離走(無酸素運動)を、遅筋は持久力…ウォーキングやマラソン(有酸素運動)に力を発揮し役割を分担しています。

速筋が衰えると、すばやい動作が苦手になったり、ブレーキが効かなくなったりする他、安静時の熱生産が減少し“冷え性”になる傾向があります。特に40歳以降になると速筋繊維の割合が減り繊維が細くなり、加齢にともなう筋量の減少と筋力の低下(サルコペニア)を生じやすくなります。

石井 直方先生(東京大学 教授 スポーツ先端科学研究拠点 拠点長)は、健康寿命をまっとうするためにも、特に速筋繊維を鍛えることが大切であり、若い頃に比べ「階段を上がるだけで太ももが張る、重いものが持てなくなった、身体の冷えを感じやすくなった、食べる量は変わらないのに太りやすくなった…などと感じている方は意識して速筋力をアップさせてほしい」と訴えました。

写真)石井 直方先生

ラットの筋肉が白色化! 実験の驚くべき結果

速筋繊維はスクワットなどの筋力トレーニングによって肥大し鍛えることができます。しかし、スケソウダラを食べるだけで増えるとは一体どのようなメカニズムなのでしょうか。

スケソウダラの身はほぼ速筋でできており、その身に含まれているタンパク質は速筋タンパク質です。岸田 太郎先生(愛媛大学 大学院農学研究科生命機能学専攻 教授 APP 研究会 幹事)によると、スケソウダラの速筋タンパク質をラットに与えたところ、同じタンパク質の多い牛乳(カゼイン)と比べ腓腹筋が増加する結果が得られ、さらにホエイや大豆、卵白などのタンパク質や同じ魚類のマグロと比べても効果が高かったそうです。

(6週間の投与で、腓腹筋の筋肉量のカゼイン(コントロール)との比率は、カゼイン100.0% ホエイ99.2% 大豆101.0% 卵白100.8% スケソウダラ105.2%)

岸田先生は、「スケソウダラの速筋タンパク質を食べたラットの腓腹筋は、筋肉の色が白色化(速筋化)し、筋繊維の太さがコントロール食に比べ1.4倍になった。このときの遅筋の増加は1.2倍程度だった」と説明し、スケソウダラの速筋タンパク質を食べると特に速筋が増加することが裏付けられたとしています。

写真)岸田 太郎先生

なぜ速筋が増えるのか詳しいメカニズムは研究中

現段階では、なぜ、特別な負荷運動なしにスケソウダラの速筋タンパク質を食べるだけで、速筋が増えるのかその詳しいメカニズムはまだ明らかではありません。

しかし、65歳以上の女性に運動を介入せず1日4.5g(ミンチ30g)を3カ月間摂食させた実験では、減少しやすい下肢筋肉が1.5%増加。さらに60代以上の男女に負荷運動(週2回のレッグプレスを10回3セット)と併用で4.5g(ミンチ30g)を6週間にわたり摂食させた実験でも、筋力が効率的に増加する結果を得たそうです。

これらの実験をふまえ岸田先生は、筋肉が再生過程の途中から活性化していることから「スケソウダラの速筋タンパク質を摂ると、運動による筋肉損傷からの再生過程と同じような機構を活性化し、再生スイッチが入るのではないか。 また、その理由としてミオシン、コラーゲンといったタンパク質、あるいはそのペプチドのアミノ酸配列が関与しているのではないか」とし、引き続き研究を重ね解明していきたいとしています。

速筋タンパク質をどう取り入れていくか

このように、筋肉を形成するうえで欠かせない栄養素の1つであるタンパク質ですが、近年は、朝食を抜く、またはスムージーなどのドリンクで済ませる。魚、肉、卵、乳製品などのタンパク質をあまり食べないなどの食生活の変化により不足傾向にあります。さらに、日本人の1日あたりのエネルギー摂取量は終戦直後と同程度まで落ち込んでおり深刻な問題となっています。(出典:厚生労働省 国民栄養調査結果の概要/2015年)

スケソウダラは日本人にとって身近な魚。ちくわ、魚肉ソーセージ、かまぼこなどの錬製品の原料になる他、卵巣はタラコとして広く親しまれており、これらを積極的に利用しない手はありません。

(株)しょくスポーツ代表取締役で、公認スポーツ栄養士、管理栄養士、健康運動指導士の こばた てるみ先生は、手軽に食べられる健康食として、筋肉づくりに役立つスケソウダラの速筋タンパク質を使ったレシピを提案。セミナー参加者に紹介しました。

写真)こばた てるみ先生

かにかまミルク雑炊

彩りが美しく味も見た目もおいしい「かにかまミルク雑炊」。水のかわりに牛乳を使うことでタンパク質とカルシウム、ビタミンB2を手軽に摂れます。「かにかま」は手でほぐして入れるだけ。1人分ならば電子レンジ調理で手軽に完成します。

写真)かにかまの塩気が絶妙。マイルドでやさしい美味しさです!

かまぼこスティックを使ったキャンディサンド

ラップの上に潰した食パンを置き、バター、サラダ菜、スライスチーズ、魚肉ソーセージを巻いてあっという間に出来上がり! アクセントに梅肉を挟むのがコツです。忙しい朝のお弁当レパートリーにどうぞ。

写真)可愛らしくて食べやすいので、子供も喜びそうです。

ちくわでマヨコーンピザボート

トーストとちくわがこんなに相性が良いなんて驚きです。朝食としてもお酒のつまみとしても幅広く使えるレシピです。アレンジしやすので足りない栄養素を追加したオリジナルレシピを作ってみてはいかが?

写真)ごぼうと相性抜群。食物繊維も摂れますね。

白身魚フライのフィッシュサンド

夕食で出した白身魚のフライをアレンジし、翌日も楽しめるレシピに。フライは多めに作って朝食やランチに活用しましょう。ロールパンをイングリッシュマフィンに変えても美味しいですよ。

白身魚つくねのミルクスープ

クリームシチューの具材に白身魚はいかがでしょう? 牛乳とタラのミンチからはタンパク質、野菜からはビタミンと繊維質、さらにマカロニからは炭水化物(糖質)が摂れる一品完結型のレシピです。

白身魚そぼろの四色丼

緑(ほうれん草)、赤(パプリカ)、黄色(卵)、茶(白身魚そぼろ)と彩りと栄養豊かなご飯。炒り卵にジャコを入れるのもおススメです。白身魚そぼろは「白身魚のミンチ」や「おさかなミンチ」などとしてスーパーでも売っているので活用してみて。

ちなみに、スケソウダラの速筋タンパク質は1日に4.5g以上摂るのが理想的で、その目安は「使っている魚肉がスケソウダラ100%」の場合でちくわ1本(約33g)、カニカマの棒タイプで1.6本(約50g)、魚肉ソーセージ1本 (約60g)、白身魚フライ1個(約60g)、ミンチで約30gに含まれているそうです。

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