日本は今、空前のプロテインブームです。たんぱく質補給商品市場は10年前とくらべ3倍以上のびており、うち7割がプロテイン関連の商品。なかでも筋力増強目的の商品ラインナップが拡充傾向にあります。
その影響なのか「筋肉=プロテイン」といったようなイメージもあり、スポーツ選手でもボディビルダーでもない自分には関係ないと感じている人も多いようです。しかし、たんぱく質の機能は筋肉増強だけではないのです。
実はQOL向上のために必要不可欠な栄養素である“たんぱく質補給”。改めてその必要性と重要性を探るため、「一般社団法人ウェルネス総合研究所」が開催した医師と栄養士によるメデイアセミナーを取材しました。
心療内科医で「ひめのともみクリニック」院長の姫野友美先生(写真左)と、管理栄養士で上級食育アドバイザーの板垣好恵先生。(写真右)
たんぱく質はなぜカラダに必要なのか?
三大栄養素のひとつであるたんぱく質は、身体を組成している栄養素のなかで水分(60%)の次に多い20%の割合をしめています。脳・血液・血管・内臓・骨・筋肉・皮膚・組織などカラダの主成分として存在し、酵素・ペプチドホルモン・輸送・受容体・免疫・筋収縮性などの機能を担っています。
さらに脳にいたっては乾燥重量の40%がたんぱく質であり、不足すると神経伝達物質や受容体などに影響を及ぼします。神経伝達物質を作りだすたんぱく質の構成成分である必須アミノ酸は、セロトニン(安心感・幸せ感・落着き)、GABA(安定・平穏)、ドーパミン(元気さ・快活さ)、ノルアドレナリン(やる気・快活さ)メラトニン(睡眠)などの脳内ホルモンホルモンの原料となるため、私たちの感情や情緒とも密接な関係があり、欠乏するとうつ病になる恐れもあるそうです。
骨や皮膚に欠かせないコラーゲンもたんぱく質、筋肉を収縮させるのもたんぱく質、薬を患部まで輸送するにもたんぱく質の機能が必要、そして細菌やウイルスなどの異物の侵入を防ぐ粘液もムチンという糖を含むたんぱく質でできているなど「構造」「機能」「免疫」「精神」とまさに八面六臂の活躍なのです。
効率の良いたんぱく質の摂り方は?
このように人が生きるために欠かせない“生活するためのたんぱく質”を、普段から充分に摂るためにはどうすれば良いのでしょうか。特に高齢になるとカラダの機能低下により、たんぱく質を取り入れる力が衰え、体内での合成速度が遅くなります。65歳以上の高齢期に入れば、フレイル(虚弱)やサルコペニア(筋肉量の減少や筋力の低下)、認知機能低下などの対策として、より多くとる必要性があります。
ちなみに、厚生労働省によると65歳で活動レベルが通常の男性の場合、1日90~120グラム、一食あたりにすると30グラムが目標量とされています。
出典)日本人の食事摂取基準(2020年版)/厚生労働省
さらに、たんぱく質は接種すれば良いというものではなく、必須アミノ酸のバランスが良いほど栄養価が高く、10種類のアミノ酸それぞれの摂取量に差がない状態が望ましいそうです。
そこで、効率良くたんぱく質を摂る方法として、以下を目安にすると良いでしょう。
■動物性たんぱく質と植物性たんぱく質は「2:1」
動物性たんぱく質の摂取が50%未満だと平均寿命が短いという統計結果があるそうです。逆に70%以上と多すぎては動脈硬化性心疾患の増加の心配があります。
出典)『肉を食べる人は長生きする』柴田博(著)より
■プロテインスコアが高いものを選ぶ
卵:100スコア
鯵(あじ):89スコア
牛肉:80スコア
牛乳:74スコア
大豆:56スコア
出典)(株)MSS 栄養療法通信より
■1日に必要なたんぱく質
「卵」1個、「豆乳チーズ」1個、「肉」100グラム、「魚」1切れ、「豆腐」半丁、「納豆」1パック、「豆乳」200ml、その他、間食に小魚やナッツ類をつまむと良いでしょう。出典)ひめのともみクリニックより
■たんぱく質は「朝食」時に多く取り入れる
サルコペニアを発症している高齢者を対象にした実験では、夕飯よりも朝食時に充分なたんぱく質を摂取した群は、筋力が有意に高い値を示し、朝食時のたんぱく質摂取の割合と筋肉量・筋力の間には正の相関が認められているそうです。出典)「時間栄養学・時間運動学に基づく健康科学」/柴田重信先生の資料より抜粋。
手軽に摂れる”かけるだけ・まぜるだけ”の粉末タイプのたんぱく質”を試す
卵、牛乳、大豆など、日本人の身近な食品に多く含まれているたんぱく質ですが、必要な量を毎日とるのは難しいと感じます。特に忙しい朝や高齢者の食のニーズを考えると、もっと手軽に摂れる方法が必要です。
実際に、近年、食事や飲み物に“かけるだけ・まぜるだけ”といった粉末タイプのたんぱく質商品が増えており、例えば以下のような商品を活用しながら効率よく摂取するのがおススメです。
大人のためのプロテイン タンパク生活/森永乳業
https://www.tampakulife.morinagamilk.co.jp/
乳にこだわる森永乳業が、消化吸収性が良い乳清たんぱく質を使用して作った粉末。溶かしやすくほぼ無味無臭のため、手軽に飲み物や料理に加えることができます。
豆乳おからパウダー/キッコーマン
https://www.k-tounyu.jp/cp/okara/
食物繊維・植物性たんぱく質がたっぷりと含まれた豆乳おからパウダー。きめが細かくクリーミーな口当たりで毎日の食卓に手軽に取り入れられます。
さっとタンパク/鈴廣かまぼこ
https://www.kamaboko.com/sakanano/satto/product.html
ご飯やお味噌汁などにさっとかけるだけ。魚肉たんぱく(魚肉ペプチド)がぎゅっとつまったアミノ酸サプリです。低栄養やタンパク質不足の方におススメ。
例えば、ビザトースト、コーンスープ、フルーツ入りヨーグルト、コーヒーという組み合わせの朝食メニュー(総たんぱく質量20グラム)の場合、粉末タイプのプロテインをティースプーン1杯ずつ(2.5グラム程度)各料理にプラスすると、たんぱく質が30グラムに増えます。これを昼食と夕食時にも行えば、1日約90グラムのたんぱく質が摂れる計算になります。
カラダの土台であり、生きるために必要不可欠なたんぱく質。10代の成長期だけでなく高齢者ふくめ世代関係なく大切な栄養素であることが分かりました。今後はカラダだけでなく心も元気にしてくれるたんぱく質を、普段の食事に積極的に取り入れ、現在、そして未来の健康生活に備えたいものです。