「こどものとも」が横長絵本になった理由

2017/06/01
N田 N昌

昨年、創刊60周年を迎えた月刊絵本「こどものとも」。みなさん、一度は読まれたことがあるのではないでしょうしょうか。1956年の刊行以来、「ぐりとぐら」や「おおきなかぶ」、「はじめてのおつかい」をはじめ、数々のロングセラー絵本を生み出してきた月刊誌でございます。

 

出典:http://www.fukuinkan.co.jp/

 

みなさんのご存じの「こどものとも」は、横長の形をした薄い絵本だと思いますが、実は…刊行当時は縦長絵本だったのをご存じでしょうか。横型絵本に変わったのは、1961年、64号から。この時、本文のテキストも縦書きから横書きに変わりました。

 

みなさんのご存じの「こどものとも」は、横長の形をした薄い絵本だと思いますが、実は…刊行当時は縦長絵本だったのをご存じでしょうか。横型絵本に変わったのは、1961年、64号から。この時、本文のテキストも縦書きから横書きに変わりました。

 

ではいったいなぜ、縦型から横型に変わったのか…

 

「こどものとも」創刊を手掛け、編集を担当していた松居直さんによると…。当時、「こどものとも」の編集と並行して、松居さんが着手していた仕事が、「100まんびきのねこ」と「シナの五人きょうだい」というアメリカ絵本の翻訳出版の企画でした。

 

その2冊(原書)は、横長の形で横書きでした。それを見た松居さんは、横長の画面に魅力を感じたのでございます。縦長絵本に比べ、左右に広がる画面では、より「絵が動く」という視覚的な効果があり、ストーリ展開していくうえで実に効果的なのでは!!と考えたのでございます。

 

ところが、当時の日本では、縦長、縦書きが主流中の主流で、横長の形、横書きの絵本に対して大きな抵抗がありました。

 

松居さんはその後、「100まんびきのねこ」と「シナの五人きょうだい」を翻訳出版しましが、これらは原書が横書きなので、テキスト部分だけ縦書きに直すことはできません(絵のレイアウトを変えるわけにはいかないので)。

 

その結果、原書と同じ、横長の形、横書きで出版しました。ところが、これが受け入れられたのでございます。もちろん、抵抗もありましたが。当時、大人からの評判はイマイチだったそうですが、子供からの評判がすこぶる高かったんだそうです。

 

そこで、松居さんは「こどものとも」も横長にしては!と考えたのでございます。しかし画面を横長にすると、タテ書きの文章の入れ方が難しくなります。そこで思い切って、「こどものとも」を横長判にし、文章も横書きにする決断をしたのでございます。

 

そして横長版「こどものとも」1号として出されたのが、「とらっく とらっく とらっく」(渡辺茂男さく・山本忠敬え)でございます。

 

出典:http://www.fukuinkan.co.jp/

 

松居さんは、横に動かすのなら乗り物に限る。高速道路を走るトラックの絵本だ!と思ったそうです。そこで、乗り物を得意とする渡辺茂男さんと山本忠敬さんに依頼したそうです。

 

この「とらっく とらっく とらっく」、図書館に行けば置いてあると思いますので、是非この経緯を思い浮かべながら読んで頂きたい!

 

「これがもし縦長の形の絵本だったら…」とイメージしながら読んでいただきたいのでございます。きっと、ご納得いただけるはずです。以上、「こどものとも」の横長版・横書きの歴史でござました。

(文:NN昌)

 

 

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この記事を書いた人

N田 N昌

放送作家・ナンセンス絵本マニア 「有田とマツコと男と女」「レゴニンジャゴー(アニメ)」 「天才テレビくんMAX」「小島慶子のオールナイトニッポンGOLD」 など、テレビ・ラジオ番組の構成脚本を担当。

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