”リアル” アイドルを襲った事件簿、ファンが自覚すべき距離と壁

2017/02/22
放送作家 石原ヒサトシ

1月24日、人気アイドルグループ「仮面女子」の神谷えりなさんのブログの書き込みコメント欄に、殺害予告と受け取れる内容があり、その後事件として扱われた。犯人は、匿名性の高いソフトを使っているため特定は難しいという。

 

神谷さんは会見を開き、「このままでは殺害予告がし放題の、野放し状態。勇気を出して会見することで、1日でも早く国内外で規制がされれば」とコメントした。犯人が捕まらない限り、神谷さんは、応援してくれるファンを見るたび、“この中にあの犯人が紛れているかもしれない”と疑ってしまうことがとても辛いだろう。警察は諦めないで犯人を突き止めて欲しいと願う。

 

アイドルとファンとの事件簿

 

2016年東京・小金井市で、アイドル活動をしていた女子大生の富田真由さんがストーカーに殺傷された事件は記憶に新しい。女性アイドルが心無い人間によって傷つけられる事件は昔からあった。脅しではなく直接危害を加える事件になると最悪だ。そんな犯人の心理パターンはいくつかあって…

 

・元々熱烈なファンで、好きの度を越えてしまい支配したい衝動に駆られた者

・他のタレントのファンで、疎ましい対象を懲らしめたい行動に出る者

・なにかやらかして世間を騒がせたいという愉快犯的な行動に出る者

 

などがある。そこで、有名女性アイドルを狙った凶悪な事件を幾つか振り返る。どれも卑劣で身勝手極まりない。

※( )の年齢は当時

 

美空ひばり塩酸襲撃事件 昭和32年(1957)

東京・浅草国際劇場で公演をしていた美空ひばり(19)が舞台脇で出番を待っていたファンの女(19)に塩酸300グラムを浴びせかけられ、左顔面、胸、背中に3週間のヤケドを負った。

 

犯人は熱烈なひばりファンで、自宅に電話をかけたり、押しかけたりと行き過ぎた行動を見せていたという。バックの中には「ひばりちゃんに夢中になっている。あの美しい顔、にくらしいほど、みにくい顔にしてみたい」と書かれたメモがあった。

 

島倉千代子 自宅爆破事件 昭和35年(1960)

東京都港区で、島倉千代子(22)の自宅を爆破しようとして、ファンだという16歳の男性工員が逮捕された。1月3日「家を爆破する」という脅迫状を4通送り、1月10日、自作のダイナマイトを投げ入れ玄関で爆発させる。1月23日、島倉邸前をうろついている男に警官が近寄ったところ、ナイフで切りつけてきたため逮捕。自作のダイナマイトを所持していた。

 

吉永小百合自宅襲撃事件 昭和38年(1963) 

当時、人気絶頂だった吉永小百合(18)の、渋谷区にある実家2階にナイフと拳銃を持った男が侵入した。

 

妹が吉永を引き離し、両親が警察に連絡。駆けつけた警察官一人が撃たれ負傷、機動隊が出動する大騒動に。捕まった男は25才、吉永の大ファンで結婚しようと思ったが無理だと分かって自暴自棄になったようだ。

 

並木葉子(こまどり姉妹)刺傷事件 昭和41年(1966)

鳥取県倉吉市で公演中、18歳の少年が突然舞台に駆け上がり、こまどり姉妹・妹の葉子(28)の腹部を刃物で刺した。狙ったのは双子の姉・栄子だったが間違って刺した。熱烈な栄子のファンで、手紙で結婚を何度も臨んだが応じてもらえず無理心中を図るつもりだったという。

 

岡田奈々監禁事件 昭和52年(1977年)

犯人の男は、深夜、岡田奈々(18)の自宅マンションへ窓から侵入した。男が持つナイフをつかんでしまい血だらけに。男はシーツやネクタイで岡田の手足を縛り、明け方には出て行くと言って、目の前でタレントとしての心構えや演技についてなど説教をし、新曲をテープで流しながら歌って踊ってみせた。約5時間籠城し出ていったという。岡田は手に30針縫う大けがを負っていたが、なんと二日後には仕事に復帰した。犯人は捕まらないまま事件は時効が成立。

 

松田聖子殴打事件 昭和58年(1983)

沖縄市でのコンサート中、少年(19)がステージに上がって松田聖子(21)の頭を金属棒で数回殴った。松田は腕を打撲し、しばらくは包帯を巻いて仕事をしていたが、トラウマで襲撃時に歌っていた「渚のバルコニー」をしばらく歌えなかったという。少年は彼女の大ファンで、事件を起こして有名になりたかったと自供(19歳で名前も公表されないのに)。高校卒業後ノイローゼで精神病院に入院しており、外出許可を取って埼玉県から来ていたという。

 

倉沢淳美切りつけ事件 昭和63年(1984)

3人ユニット「わらべ」で人気を博し、ソロデビューした倉沢淳美(17)。札幌でのサイン会終了後、会場玄関で、参加していたファンの男に刃物で切りつけられ右手首を6センチ切る大けがを負った。犯人は26歳の会社員で「生意気だからやった」と供述した。

 

山口智子襲撃未遂事件 平成4年(1992)

山口智子(28)が自宅マンションに居たところ、インターホンが鳴り「◯△プロダクションからお届け物です」と言われてドアを開けた。すると配送業者ではなく二人の男が侵入し、襲い掛かってきた。山口が悲鳴をあげると、当時交際していた俳優・唐沢寿明が飛び出してきて格闘に。犯人は逃げて行った。ガムテープや手錠、カメラを持っていたのが見えたそうで、おそらく強姦目的で犯行に及んだのだろう。しかし彼がいたのは計算外だったようだ。犯人はまだ捕まっていない。

 

AKB握手会傷害事件 平成26年(2014)

 

岩手県滝沢市で行われた握手会イベントでAKB48のメンバー、川栄李奈(19)、入山杏奈(18)が、列に並んでいた男にノコギリで切りつけられ、川栄は右手親指骨折、入山は右手小指骨折と頭を負傷した。

 

犯人は青森県に住む24歳の男、「人の集まるところで人を殺そうと思った。AKBなら誰でも良かった」等と供述した。

 

大事にはならなかったが・・・

1982年には、新宿音楽祭のエンディングで小泉今日子に向かって観客から生卵が投げつけられた。異変を察した中森明菜が小泉をステージ袖へ連れて行ったという。その中森明菜も、翌年、「歌のトップテン」(日テレ)の生放送中、ステージで歌っている際に男から大学ノートを投げつけられた。ノートには明菜に対する想いが綴られていたという。命の危険は少ない行為かもしれないが、心の傷は深いはずだ。

 

この他にも、部屋に誰かが侵入していた、不審人物に付きまとわれた(ストーカー)、など、ケガをしていないだけで危険な目に遭っているアイドルなんて数え切れないほどいる。

 

今はTwitterやブログなどの書き込みで簡単に攻撃してくるが、昔はファンレターの中に、新聞の見出しを切り貼りした手紙で脅迫文が送られていた。手紙の封を破る時に手を切るようカミソリを仕組まれたなんてこともよくあった。見えない相手からの攻撃は想像を絶する恐怖だ。

 

アイドルとファンの距離、今と昔

 

昔のアイドルは、ファンの目を警戒し滅多矢鱈に接する機会は作らなかった。新人の頃はキャンペーンでサイン会を行うなどあったが、人気が出るとほぼやらなくなる。ファンが会えるのはテレビの前か、コンサートなどのステージ上と客席で、とにかくそこには距離があり実際に近づこうにも近づけなかったものだ。こんなに好きなのに気持ちが伝えられないというジレンマは強かった。

今と比べると、日本人の一般的なモラルやエチケットのレベルが低かったこともあるので、アイドル側の警戒レベルは嫌でも高かったはずである。

 

それが今では真逆だ。距離が近いほど応援してくれる率が高い。

アイドルがどこにいてもネットを通じて情報が早く伝わり、文字で会話だって可能。小さなライブ会場なら間近で観られるし、サイン会や握手会で簡単に触れ合うこともできる。ダイレクトに気持ちが伝えられ、リアクションが返ると嬉しいし、更に好きになって応援したくなる。

 

しかし、それは危険を招くシチュエーションを増やした、ともいえるわけだ。ファンはアイドルに親近感を持っても、目の前に壁は作らなければならない。越えてはいけない一線はあるのだ。自分がされたら嫌なことはアイドルだって嫌だ。具体的に言えば、体に触られること、プライベートエリアに入られることなど。それはファンのエゴでしかなく、相手にとって恐怖でしかない。恐怖を与えた時点でファン失格といえる。

 

大多数のファンは常識的にアイドルとの距離に暗黙の了解を作っていて、そのルール、秩序を守る。アイドル側に嫌な思いをさせないようにという“思いやり”もある。

 

でも、世の中まともな人間ばかりじゃない。一握りの…いや、ひと粒のバカもんが一線を越え、アイドルとファンで作り上げた良い関係を一瞬で台無しにしてしまう。

 

アイドル側もその辺りは重々承知でファンと付き合っているだろうが、残念ながら信じきれない部分もあるので警戒レベルを上げていく必要がある。真のファンなら少し距離が遠のいても理解してくれるはず。今回の神谷えりなさんの件しかり、特にインターネットに関する新たな法規制の構築、システムのレベルも上げて欲しいものだ。早く。

 

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この記事を書いた人

放送作家 石原ヒサトシ

放送作家 「クイズ雑学王」、「ボキャブラ天国」等 バラエティを中心にイロイロやってきました。なんか面白いことないかなぁ~と思いながら日々過ごしています。野球、阪神、競馬、ももクロ、チヌ釣り、家電、クイズ・雑学、料理、酒、神社・仏閣、オカルトなことがスキです。

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