3億円超え!27年バリュー投資家が明かす、配当&安定利回りの秘密【ヘムさん】

2024/03/18
マガジンサミット編集部

今回お話を伺うのは、27年間もの投資経験を持ち、X(旧Twitter)で2万人以上の方々にフォローされている、主にバリュー株に注目している兼業投資家、ヘムさん(ヘム/ 配当&優待&DOE 雪だるま投資@pygmy_hem)です。

ヘムさんは、日本の個別株をメインに投資をしており、その資産は現在3億円を超えています。また、一部の投資信託や海外ETFを通じて、米国株や欧州株、さらには金や銀にも投資しているそうです。

ヘムさんはご自身で独自の手法を開発しておられ、こうした手法を多くの人に知ってもらいたいとのこと。

どんなユニークな手法なのでしょうか…?早速お話を伺いたいと思います。

ヘムさん(以下ヘム):投資において、私が掲げる2大テーマは次の通りです。

①受取配当の最大化

②安全で再現性が高い形で年間10%の利回りを達成すること

ー年間10%とは、随分高利回りですね!そんなことが可能なんでしょうか?

ヘム:はい。理論的には難しくないかと思います。その為に私が重視しているのは次のことです。

・分散投資

・安全マージンの確保(価値ある株を、市場価格よりも低い価格で購入)

・将来の増配の見極め

・暴落時に狼狽売りしない

仮に年率10%であれば資産は7年間で約2倍になります。同じように14年後には4倍、21年後に8倍となるならば、リターンとしては十分です。

ーなるほど、年間10%の利回りを目指すとは、初心者投資家にとっても非常に魅力的に聞こえます。分散投資をするべきというのはよく聞くセオリーですが、小型割安投資、というのはどのような手法なのでしょうか?

ヘム:株式市場では、一般的に「効率的市場仮説」が知られています。これは、市場が利用可能な全ての情報を即座に価格に反映するという理論です。

つまり公開された情報を使って将来の価格を予測することが難しいということです。ただしこれは「十分な参加者がいること」と「参加者が優秀で合理的な判断が出来ること」が大前提でなければなりません。その点でいくと、大型株は概ね「効率的市場仮説」が機能していると考えられます。

ーすると、大型株で個人投資家が市場平均を超える投資先を探すのは、結構難しいということですね。大どんでん返しなどは起こりにくい、と。

ヘム:そうです。その一方、小型株への投資は、大きな機関投資家が目を向けにくい分野です。なぜなら、市場規模が小さいため、大量の資金を投資しにくいからです。

その結果、このセグメントには、一般的な投資家の目には止まらないような銘柄が多数存在します。これらの銘柄には、市場の効率性が完全には働いていないため、情報の非効率性を利用した投資戦略が可能になります。

私はここがα(市場平均を超える投資先)がとれる場所だと睨んでいます。

さらに、私が注目しているのは、市場における機会の偏在です。日本市場では、時価総額300億円未満のいわゆる超小型株が全体の58%を占めています。

これらの中には、価値が見落とされている銘柄が数多くあり、適切に選別することで、市場平均を大きく上回るリターンを期待できるのです。

実際、こうした銘柄に投資して、その価値が再評価された際には、時価総額が増え、大型ファンドが投資できる基準を満たし追随してくるケースがあります。

ーそれでは、ヘムさんのこうした投資に影響を与えた人物や書籍などありましたらぜひ紹介してください。

ヘム:お決まりですが、ウォーレン・バフェット、ベンジャミン・グレアム、ピーター・リンチなどですね。あと、投資を初めて間もない頃「しんさん」のブログをよく参考にしていました。

ーそうした大御所たちから学んだことを、実生活に取り入れる決断を下したきっかけは何だったのでしょうか?

ヘム:私は元々競馬やパチンコなどのギャンブルが大好きで(笑)。22歳の時にギャンブル手帳をつけてみたんですが、その時1年間で60万円程度負けてることが判明したんです。

その時に、たまたま読んだ株の雑誌に影響されて、ギャンブルを止め、そのお金を全て投資に回しました。当時メガバンクの窓口でいくつかの投資信託商品を買い、その後、個別株投資を始めました。

ーギャンブルが投資に変わったのですね!最初はどの銘柄に投資をしたのですか?

ヘム:初めての銘柄は、これから投資家が増えると考え「野村證券」を買いました。次にECサイトが活況になると考え「ヤマト運輸」、高齢化社会到来を踏んで「ニチイ学館」を買いました。

その頃はファンダメンタル分析などは出来ず、テーマだけを考えていたので一向に勝てませんでしたね。その後バリュー投資へとシフトしていくことになりました。

ーヘムさんも初めは失敗が多かった…と。厳しい世界ですよね。ではそんなヘムさんが初めて成功を収めたご経験を教えてください。

ヘム:特定の銘柄での大きな成功というよりは、バリュー株への分散投資という戦略が徐々に成果を上げ始めたことが私にとって大きな成功体験でした。銘柄をピックアップすることも大切ですが、全体としての戦略が成功へと導いたんですね。

ーそうなんですね。では逆に、長いご経験の中で、直面した最大の困難は何でしたか?

ヘム:もうそれは、リーマンショックにつきます。X(旧Twitter)にも詳細を掲載しました

その時は、最後まで買い向かえませんでした。あの時は、あれが精一杯で…。リーマンショックは、私の中で「トラウマ」になるほどの強烈な経験でした。

あの時、多くの凄腕投資家が消えていきました。投資では99勝1敗でも、その1敗が大きければ退場になる。初めて暴落に対する対策を真剣に考えなければいけないと思うようになりました。

ーヘムさんは、リーマンショック以降も多くの暴落を経験されましたよね。

ヘム:はい。コロナ、クリスマスショック、VIXショック、チャイナ、ブレグジット、ギリシャ危機、東日本大震災等の暴落では、リーマンショック時の経験をもとに、戦略的に買い向かう事が出来ました。

フルポジの方が数理的に良い事が分かってはいますが、絶対に狼狽売りしたくないので暴落時買い付け用待機資金を常に確保して、暴落時に買い向かう戦略をとっています

ー貴重な経験談をありがとうございます。そんなヘムさんが追求する長期的な成功に向けた具体的な実践方法について教えていただけますか?

ヘム:「勝つべくして勝つ」投資を行うことです。具体的には次の通りです。

・小型株効果

・割安株効果

・配当シグナル効果

・増配効果

・優待単元買い効果

・不人気株への買い向かい

・暴落時の戦略的な買い向かい

モメンタム効果(握力重視)

・テーマ型投資(東証大号令や親子上場解消期待等)

上記を満たしかつ競争優位性・堀を持つ企業への投資割合を増やす

等各々において期待値1以上のアノマリーを最大限 組み合わせ、分散投資によりリターンを期待値に収束させ勝つべくして勝つという考えです。

ー投資を通じて学んだ最も重要な教訓について教えていただけますか?

ヘム:「投資の儲けは我慢料」だということでしょうか。

上げ相場では「フルポジ」や「グロース」に負ける事に我慢しなければならないですし、下げ相場では買い向かう損失を膨らませることを我慢しなければなりません。目先のマイナスを受け入れる事が出来る我慢が必要です。

でも結局は、それが「勝つべくして勝つ」に繋がります。

投資の基本は「安く買って高く売る」この単純な事を忘れないということ。投資は市場に長くいさえすれば儲かります。決して退場しないことが大事です。

ー重みのある言葉をありがとうございます。では、ヘムさんの投資成果について教えてください。現在の運用成績はどれくらいですか?

ヘム:株式投資で増やした資産額は直近の2024年2月末では1.95億円でした。2億円まであと少しというところです。
自宅の購入や、自分が経営する会社への資金需要で、過去には証券口座から大きな額を引き出したこともありました。そ
のため、正確な総利益は計算しづらいのですが、長期的に見て年間利回りは10%程度だと思います。

私のアプローチは、広範な分散投資に基づいており、レバレッジをかけていないので、一年で50%のリターンは望めませんが、安定した成果を求めています。

ー保有している銘柄の数はどれくらいなんですか?そして、その多さをどう管理していますか?

ヘム:現在約350銘柄を保有していて、はっきり言って全部を完璧には管理できていませんね(笑)
それでも、過去6年間でTOPIXを年間リターンで10%以上は(6年間で60%以上)上回ることができています。
同じ10%のアウトパフォームであっても、5銘柄に集中投資する方法と350銘柄に分散投資する方法では、私は後者の方が再現性が高く、優れた投資戦略だと考えています。

ーなるほど。では、投資初心者の皆さんへアドバイスをお願いします。

ヘム:投資は期待値1以上のゲーム。株式投資で長期に渡り安定して利益を得ることは決して簡単ではありませんが、それでも「株式投資の仕組み」を理解し、「再現性の高い形」で資産を増やしていく事は十分可能だと思います。

迷っている人がいたら、まずは全世界株式(オルカン)などのインデックス投資から初めてみてはどうでしょうか。株式市場は参加者の9割はプロの投資家です。インデックス投資は、そんな世界でも初心者が平均点を取れる「めちゃくちゃお得なシステム」といえます。タイパも最高なので初心者のみなさんはここから始める事をおすすめします。

また、新NISAなどの制度を利用することで、税制面でのメリットも享受できます。

実際、私は息子に「オルカン」「TOPIX」の1:1での投資を勧めました。米国株式(S&P500)も良いと思いますが、GAFAMが生み出したようなイノベーションが今後も米国で生まれ続けるのかやや疑問に感じたからです。現状では米国株に期待値が乗りすぎている気がしているので「S&P500」より「オルカン」が良いのではと思っています。

一方、日本株は今ようやく「ROE重視」の経営に目覚めだしたところですよね。多くの日本企業が資本コストを真剣に考えるようになったことからも、投資対象として日本株は良いと思い、TOPIXを勧めました。

ー初心者向けお勧めの投資手法をありがとうございます。ヘムさんが次に目指す具体的な投資目標についてもう少し詳しく教えてもらえますか?

ヘム:今のステージでは受取配当を「雪だるま」のように増やしていくことが最大のテーマとしています。2023年には税後で約700万円の配当を受け取ることができました。次は、この配当収入を税後で約1000万円にまで増やすことを目指しています。

ーそれは素晴らしい目標ですね。さらに、ヘムさんが今後達成したいと考えていることがあれば、ぜひ共有してください。

ヘム:投資以外にも私はいくつかの夢を持っています。その一つが、起業や経営に関する自分自身の知見をまとめた書籍を出版することです。私がこれまで培ってきた投資手法や経験を、より多くの人に知ってもらいたいと考えています。

ヘムさんの投資戦略は、長期的な視野に立ち、安定した受取配当と安全な利回りを追求するというものです。特に注目すべきは、小型株への投資や分散投資を通じてリスクを管理しながら、継続的な増配を目指すアプローチです。

この戦略は、一見難しそうに感じるかもしれませんが、実は投資の基本原則に忠実なものです。長期的な視点で持続可能な成長を重視する投資家にとって、リスクを抑えた手堅い手法で、非常に参考になる手法であると感じました。

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