PRとはPublic Relations(パブリック リレーションズ)の略であり、もともとは“組織とそれを取り巻く公(おおやけ)との間の良い関係づくり”を指します。広告(アド)が商品やサービスをひろく世間に知らせる手段であるのに対し、PRは商品やサービスがニュースとして取り上げられることで、広く認知度をあげる方法です。
宣伝や広告と混同され、そのサービス内容や結果に至るまでのプロセスが分かりにくいPR活動ですが、「テレビで特集されたらその日のうちにスーパーに在庫がなくなった」「SNSで拡散してトレンドに上がったら、通信社に取材されて社会現象になった」など、成功したときの威力は推して知るべし、しかもかかった費用は0円です。
ぜひ、手掛けている商品やサービスをメディアに取材してもらい、その情報を大勢の人に届けてPRしたい。でもPRって何? どうやってするの? 金額は? 自分でもできるの?
そんなPRをとても分かりやすく説明した本が『PRのススメ』(自由国民社)。著者はPRアドバイザーとして約30年間、業界に携わってきた阿部重郎さん(プレイブ株式会社)です。読めば誰でもPR活動ができるくらいの内容を書きたかったという阿部さん。「あまりに核心的なことを書くと業界的に駄目かなと思ったんですが、書いちゃいました(笑)」という本書。PRに悩む人も、そうでない人も必読です。
写真)『PRのススメ』(自由国民社)の著者 阿部重郎さん(プレイブ株式会社)
誰もがPR活動に挑戦できる時代になってきた
阿部:以前に比べてPRは身近になってきたと思います。プレスリリース配信など業界の人以外にはほぼ知られてない言葉でしたが、配信会社大手の「PR TIMES」がテレビCMを出すようになりましたし、何年か前にはPRパーソンを題材にした映画も作られましたよね。
身近になってきた理由としてSNSや動画配信の存在があります。誰もが配信する側になれる時代で、第三者にどうやったら面白い画を届けられるかを意識する“映える”という言葉も一般化しました。それは感覚的にテレビにうけるということが分かるようになってきたと思うんです。
そんな、誰もがPRに挑戦しやすい時代になってきたのに、世にあるPRについての書籍にはナラティブとか戦略とか、ストーリーとか、PRを知らない人には難しい内容で単純にパブリシティを深堀したものがない印象でした。「プレスリリースの書き方」といった本も、読めば(なるほど!)と膝をうつノウハウが書いてありますが、それ以前に、リリースするそのネタはニュースになるのかという、いちばんの原点が曖昧にしか記されてないと感じます。
そのニュースは本当に“ニュース”になるのか?
PR活動には必ずこうなるというセオリーがありません。予想はできるのですが30年近くPRに携わっている僕でも今だ、学ぶことが多い。さらに、最近はPRと呼ばれる領域が広くなってきていて、ただでさえノウハウが伝え辛いうえに、内容がより複雑化しています。
僕が考え出したP28の「マスコミ露出の構成要素」という図ですが、新人PRパーソンはこれを参考に社長さんや企業の広報担当さんに説明すると伝わりやすいと思います。また、P35の「ニュース性が高くなる要素」の一覧は、記載されている15の要素を、ネタに当てはめてみると、そのネタのニュース性の高さが客観視できるようになっています。当てはまるものが多ければ多いほど、マスコミに取り上げてもらえる確率も高くなります。
図)「マスコミ露出の構成要素」
マスコミの人は、プレスリリースがイマイチでもネタさえ面白くて興味深いものであれば取材して、ちゃんと記事や画像にしてくれます。その代わり“ニュースはひと言”が鉄則。ネタの内容を30秒で伝えられるかが重要です。
テレビ局内を歩いていると“テロップは16字以内”と書いてありますし、ヤフートピックスの見出しは15.5文字と決まっています。プレスリリースなら題名が命で、それで伝わらなければニュースにならないと判断しても過言ではありません。題名には、つい、色々な要素を書き入れたくなりますが、前置きを書かないとその良さや内容が伝わらないネタはニュース性が低いと思っています。
リリースをひと目見て面白い!と分かるかどうか
本書『PRのススメ』には、いくつか成功事例を掲載していますが、選んだ理由はズバリ “映え”です。先ほど“ニュースはひと言”とお話ししましたが、商品の説明が難しい場合は現物か写真か動画を送ってしまった方が早い。
事例商品の「Rain-Pop(レインポップ)」ですがプレスリリースは写真をメインにしました。タイトルは「雨の日が楽しくなる。傘の柄につけるアクセサリー」といった感じで、それ以上は説明できませんでした。もうひとつの掲載事例「グラスマスク」も、現物を見た方が断然、面白いし伝わります。
メディアに取り上げられ大ヒットした「Rain-Pop」。『PRのススメ』には、プレスリリース配信時の記者とのやりとりなど、ニュースになるまでの現場のヒリヒリした様子も掲載されており、新人PRパーソンが読んでもタメになる。
拘りだすと止まらないのがプレスリリースで、より刺さる言葉を探したくなるとは思いますが、言葉を変えてもニュース性はさほど変わりません。それよりもマスコミに情報提供するタイミングに合わせ、季節性やトレンド性などを入れたらいいと思います。仮に「Rain-Pop」を6月に発売するならば『“梅雨”を楽しく!傘専用アクセサリー「RainPop(レインポップ)」』などです。
以前は、いわゆるオールドメディアといわれるものしかなく、プレスリリースを書いてもマスコミに取り上げてもらうためには、ある程度のニュース性が必要でしたが、ネットニュースが登場したことで、今は、あらゆることがネタになります。
最初はマスコミが巨大なものに見えて躊躇してしまうかも知れませんが、メディアの人は忙しいけれど義理人情もあったりします。一回電話してみて恐怖心を克服してみると、案外、身近な存在だと気が付けたりもしますから、ネタがあるのであれば、難しく考えないで配信してみたらいい。いちど行動してみれば、そこから成功も反省も生まれてきます。
どのPR会社を選んだらいいのか?
実際に自分でプレスリリースを書いてみて、これは専門家に任せようとなった場合、PR会社を選ぶことになりますが、これが無数にある。どこを頼りにしたらいいのか困ると思います。人づてで紹介されたとしても、金額も仕事の内容も、信頼できる会社なのか心配ですよね。
PR会社のフィーは一般的に給与の3倍を設定しています。また、人ひとりの労働時間には限りがありますから、その案件にどれくらいの時間が必要かを考えて金額が決まります。活動の中身は、プレスリリースを書いてメディアリストを作成して、配信するというのが基本ですが、配信と平行してメディアに電話や対面で行う交渉がもっとも時間がかかります。
例えば30メディアに電話したとして、そのうち、どのメディアの担当者と直接会って交渉できるのかなど、そこを明確にする会社は誠実だと思います。なかにはプレスリリースを送って適当に電話して終わりとか、そういう会社もありますから。
忘れてはならないのは、同じネタでも世の中の状況によって価値が変わるということです。ニュースって時価なんですよね。前回、バズったとしても、次回もバズるとは限らない。ですからPR会社の良し悪しを比較することは難しいと思います。結局は信頼できる人にお願いするしかない。
ですが、紹介されたPR会社が総合系なのか、化粧品・ファッション・映画・医療など、ある分野に特化精通している専門系PR会社なのかぐらいは、事前に聞いて確かめる必要があります。あるいはSNS専門でインフルエンサーに強い会社とか、同じPR会社といってもまったく質が違いますから、そこは見極めなければいけないところです。すぐにHPなどで実績などを確かめましょう。
PR会社が掲載されている『PR手帳』。(日本パブリック・リレーションズ協会)。Amazonでも手に入る。
はじめてのPR活動の場合、最初は1メデイアにとりあげられれば成功だと思います。自身が仕掛けたニュースネタがメディアを通して世の中に広がっていく様は、本当にワクワクします。企業の代表の方や広報担当の方は、ぜひ、PRの知識を身に着けて、この楽しさや嬉しさを感じていただきたいと思います。それは業界に飛び込んだばかりの新人PRパーソンも同じ。考えたアイディアがニュースになり、世の中を変えるぐらい大きな影響を与えるなんてドキドキしますよね。
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『PRのススメ -小さな会社こそ、社長が広報をしよう-』
著者:阿部 重郎(あべ しげお)