ヨーグルトといえば、市販の有名メーカーのものを日常的に選んで食べている人も多いはず。ヨーグルトと一口に言っても、使われている生乳の産地やミルク感、コク、濃厚さなどによってさまざまな味わいがあります。
そんなヨーグルトの味に関する素朴な疑問を、ヨーグルトマニアの向井智香さんにうかがってみました! 市販のヨーグルト3品のレビューも。これまでに感じたこと、考えたことのなかったヨーグルトの奥深い魅力がわかるかも!?
■ヨーグルトに使われている生乳の産地ごとに味の違いはある?
先日、明治の28年続くというロングセラーブランド「明治北海道十勝ミルクきわだつヨーグルト」がリニューアル。北海道・東北・関東エリアでは2023年10月17日、その他のエリアでは10月30日発売予定です。
生乳、砂糖、乳酸菌など、すべての原材料が十勝素材に。脂肪を微細化する新しい製法を採用し、より脂肪分を高めたような濃厚な食感、口当たりに進化したのだそう。
発売に先立って行われた試食会に、これまでに2700種類ものヨーグルトを食してきたという向井さんが登壇。ヨーグルトに関する素朴な質問をぶつけてみました!
「明治北海道十勝ミルクきわだつヨーグルト」試食会に登壇した向井智香さん
――ヨーグルトに使われている生乳の産地として十勝のほか、八ヶ岳、熊本などいろいろな市販品がありますが、味に違いはあるのでしょうか?
向井さん:残念ながら、「地域単位」での生乳の味の判別は不可能かと思います。地域によって気候風土が異なることで、生産しやすい牧草・飼料、飼育される牛の品種などに多少の特徴はあるものの、皆が同じ飼養管理を行なっているわけではないため、地域内の数百戸もの酪農家さんの生乳が合わさると、どうしても平均的な味わいに近づいてしまいます。
ただし「牧場単位」であれば特徴が強く出ることも少なくなく、個人的に見学で回った十勝の牧場さんでは、広大な土地を生かして牧草地を持ち、青草を食べさせていることで実現すると思われる「お乳が黄色い」、そして夏でも冷涼な気候で牛がバテづらい環境であることで実現すると思われる「乳脂肪分が高い」といった特徴を感じることがありました。
本州では、黄色く乳脂肪分が高い生乳、といえば牛の品種はジャージーであることが多いのですが、この特徴がホルスタインで出ているのが興味深かったです。
――生乳というのは奥深いものなのですね!
■ミルク感をタイプ別に解説!市販のヨーグルトベスト3
――ところで、向井さんによれば、ヨーグルトは製法によって、ミルク感が変わってくるそう。どのような違いがあるのでしょうか。タイプ別に市販のヨーグルトを3つピックアップいただき、レビューしてもらいました。
【タイプ1】水切りして生まれるミルク感
「ギリシャヨーグルト パルテノ プレーン砂糖不使用」(森永乳業)
向井さん:発酵後に水切りをすることで、乳成分が約3倍に濃縮されたヨーグルトです。クリーミーな舌触りは濃厚そのもの。舌にしっかりと絡みつくことで時間をかけてミルク感を味わうことができます。
【タイプ2】原料の調整で生まれるミルク感
「小岩井 プレミアムクリームヨーグルト グルメファン」(小岩井乳業)
向井さん:生乳に生クリームを加え、乳脂肪分を通常の2.5倍ほどに高めて発酵させたヨーグルトです。発酵後に攪拌されてきめ細かい質感になっているため、乳脂肪分の持つ甘さや香りがとてもよく染み出してきます。
【タイプ3】乳酸菌や生乳の加工方法で生まれるミルク感
「明治北海道十勝ミルクきわだつヨーグルト」(明治)
向井さん:無脂乳固形分9.0%、乳脂肪分3.0%と成分値的には生乳とほぼ同等。タイプ1とタイプ2のような成分濃縮ではなく、乳酸菌TM96や脂肪微細化といった発酵・加工技術で足し引きなしにミルク感を際立たせている点に特徴のあるヨーグルトです。
発酵の酸味が少なく、滑らかな舌触りがミルクの優しさを伝えてくれます。甘み付けの素材が十勝産の甜菜糖(てんさいとう)に変わったことで、従来品より甘味が優しく落ち着き、柔らかい口溶けと共に染み出す味わいの中に、ミルク本来の甘味やコクを感じることができます。
――素人ではわからない奥深く新しいヨーグルトの魅力を発見! 今一度、おなじみのヨーグルトを食べ比べて楽しんでみましょう!
【取材協力】
ヨーグルトマニア 向井智香さん
大手からご当地まで日本中のヨーグルトをレビューするヨーグルトマニア。各地の牧場や工場を巡って酪農・乳業を学び、講演会やワークショップなどを通してヨーグルトの ファンづくりに励む。ご当地ヨーグルトの認知拡大・価値訴求を目的に活動する一般社団法人 ヨグネット代表。著書に『ヨーグルトの本』(2022年、エムディエヌコーポレーション)。