株式会社ツムラが、20代〜60代の男女を対象に更年期に関する調査を実施。男女ともに7割が「更年期症状は男女ともに生じると思う」(男性74.8%, 女性73.8%)と回答しましたが、男性の多くは自分の更年期の症状への「対処方法がわからない」(84.3%)状態であることがわかりました。
そんなわけで今回は調査対象のうち男性に焦点をあてその実態を深掘りします。
調査の結果、更年期の自覚症状がある40代~60代男性の約6割は「更年期症状を周りに言いにくい」 「更年期症状があっても認めたくない」と感じています。背景には、更年期へのイメージを聞くと、約7割がネガティブな時期と捉えていたことが影響しているようです。男性が更年期を健やかに過ごすには「今の自分自身を認める」「身近な人や専門家と対話する」「正しい情報」が大切だと考えられます。
■男性にとって更年期という時期のイメージは、「老化」「来てほしくない」「不安・心配」
20代〜60代の男性600人に更年期という時期に対するイメージを聞いたところ、「老化を実感・もう若くはいられない」(73.5%)、「自分に更年期が来てほしくない」(70.0%)、「更年期になるのは不安、心配」(64.8%)といった声が多く、「知識や経験が蓄積され人生が充実する時期」(32.7%)や「自分をアップデートできる準備期間」(21.5%)と前向きに捉えているのは少数派でした。
また、更年期という時期にポジティブとネガティブのどちらのイメージを持っているかと聞くと、約7割が「ネガティブな時期」(71.0%)と答えており、年代による意識差はほとんどありません。
一方、約4人に1人は「どちらでもない」(25.3%)と答えており、更年期に対してイメージがない男性も少なくないようです。
■男性の更年期症状、一般的なイメージは「イライラ」や「疲れ」
次に、男性の更年期症状を提示し、一般的だと思うものを選んでもらいました。すると、「イライラ」(46.3%)、「疲れやすい」(36.3%)、「発汗やほてり」(29.7%)の順となりました。「イライラ」と「疲れやすさ」は全年代共通で1位2位となりました。「発汗やほてり」は30代以降の年代で3位にあがりましたが、更年期世代とは遠い20代では「集中力・記憶力の低下」(26.0%)が3位となり、「発汗やほてり」を選択したのは13.0%しかいませんでした。また、男性の約4人に1人は「当てはまるものはない」(25.7%)と答えており、更年期に現れる不調症状を、更年期症状として認知していないことがうかがえます。
さらに更年期症状を自覚する40代~60代の男性100人に、自身の更年期症状として当てはまるものを聞くと、「疲れやすい」(66.0%)が最も多く、「頻尿」(41.0%)、「不眠」(40.0%)の順となり、年代別でみても共通して「疲れやすい」と感じる人が最も多いことがわかりました。更年期症状のイメージとしては「イライラ」が多いものの、実態としては6割以上が「疲れやすい」と感じていることがわかりました。 ■約8割が自分の更年期症状への対処法は「わからない」、更年期の男性の意識
自分の更年期症状への対処方法について、「わかっている」と答えた男性はわずか15.7%。「どう対処していいかわからない」男性が84.3%と圧倒的に多い結果となりました。
更年期症状を自覚する男性に更年期症状に対する意識を聞くと、約2人に1人は「自分に更年期症状が出るとは思わなかった」(55.0%)と回答。また、約6割の男性が更年期症状について「周りに言いにくい」(63.0%) 、「更年期症状があっても認めたくない」(58.0%)という結果になりました。
■男性の更年期症状、自覚していても約9割は「誰にも相談せず」、何科を受診するのかもわからない
更年期症状を自覚している男性に、更年期症状への対応を聞くと、約3人に1人は「運動習慣を取り入れた」(34.0%)一方、同数が「我慢する/なにもしない」(34.0%)と答えています。
「病院に行った」(21.0%)と答えた男性は約2割、「人に相談した」と答えた男性はわずか8.0%しかいませんでした。 更年期症状に対し「我慢する」と答えた男性に理由を聞くと、「どのように対処すればいいのかわからない」(55.9%)、「自分にあった対処方法がわからない」(38.2%)など、わからないから我慢する男性が多いようです。
さらに、「病院に行った」と答えなかった男性に病院に行かない理由を聞くと、「どの科に行けばいいかわからない」(36.7%)が最も多い理由でした。
■我慢してしまう更年期症状は「疲れやすさ」「体力の低下」
更年期症状を自覚する男性の約3人に1人が我慢すると答えていますが、具体的に我慢していることを聞きました。 更年期症状で起きる心の状態では、「疲れやすい」(62.0%)、「睡眠の質の低下」(51.0%)、「イライラ」(47.0%)が、体の状態では「体力の低下」(61.0%)、「頻尿」(34.0%)、「骨・関節痛」(31.0%)が我慢していることの上位に挙げられました。
■男性の更年期をより健やかに過ごすためのキーワードは「今の自分自身を認める」、「身近な人や専門家と対話する」、そして「正しい情報」
今回の調査結果から、更年期症状を抱える男性には、3つの課題が考えられます。1つ目は自分が更年期症状であることを認めたくないという自分自身における課題。
2つ目は人に相談しづらい、打ち明けづらいという対話における課題、3つ目は対処方法がわからない、何科に行けばいいのかわからないといった正しい対処法に関する情報への課題です。
男性の更年期をより健やかに過ごすためのキーワードは、「今の自分自身を認める」「身近な人や専門家と対話する」「正しい情報」の3つが大切だと考えられます。
■男性更年期の専門医・堀江先生に聞く、男性の更年期との付き合い方
日本初の男性外来「メンズヘルス外来」を立ち上げるなど、男性ホルモンの低下に起因するさまざまな疾患の診断と治療を行う日本の泌尿器科医療をリードする第一人者の堀江重郎先生に、今回の調査結果について聞くと、男性の更年期の時期は「人生のハーフタイム」であり、後半戦をより有意義なものにするための整え期間だと言います。
更年期には現役を終えつつある世代というイメージがあります 。かつて、現役を退くことは、隠居して社会的な存在ではなくなることを意味していました。しかし超高齢社会では、社会との関わりはさらに長くなり、その中で自分らしい人生を送ることが課題になっています。更年期は、例えるならサッカーやラグビーのハーフタイムのようなもの。
前半戦の試合を終え、疲労を感じ、息が上がっているような状況です。ひどく疲れる人もいればそうでもない人もいるように、症状の大小に差はあれど、ここでうまくコンディションを整え、よい後半戦に臨むことが肝心。よいコンディションをつくっていくために情報収集したりアドバイスをもらったりし、現状をしっかり分析してほしいと言います。
更年期は人生の前半戦は終わったことを意味しますが、決してネガティブな時期ではなく、これから人生の後半戦に向けて準備をし整える時期です。健康問題はオープンに話し合うことで、自分に合った解決策やサポートが見つけられる可能性が高まります。無理に打ち明ける必要はありませんが、症状を知ることは大切です。男性の更年期は社会的ストレスが要因となりやすいので、何が要因かを具体的に探り、ストレスから離れるために周囲のサポートが必要な場合は、そのことを伝えてみるのも良いでしょう。
更年期は誰もが迎える人生のハーフタイム。人生の後半戦をより有意義なものとするために、心身ともに整えましょう。 と更年期とのうまい付き合い方を教えてくれました。
■更年期の不安ごとは男性の守護神「泌尿器科」に相談を!
今回の調査では、更年期症状に対して対処法がわからない男性が約8割を超えていました。更年期の男性は、若いときのようなエネルギーがなくなった、周囲から十分に評価されていない、仕事にやりがいが感じられないなど、ネガティブな感情を抱きがちです。
そんなネガティブな感情にとらわれるのではなく、人生のハーフタイムと受け止め、仕事や家族、プライベートについて考え、生きがいを見直し、体調を整えることを優先しましょう。 男性の更年期は症状を我慢してもよくなりません。更年期症状をはじめ、心身の不調などの症状が現れた場合受診すべきは泌尿器科だそう。泌尿器科の「泌」は分泌、すなわちホルモンのこと。
泌尿器科は男性の守護神です。 気になる症状がある方は、全国の専門医を紹介している日本メンズヘルス医学会のホームページなどを参考に、受診も検討してみて。
堀江 重郎(ほりえ・しげお)先生 泌尿器科医、医学博士 順天堂大学医学部
泌尿器外科学講座・遺伝子疾患先端情報学講座・ デジタルセラピューティクス講座 主任教授 日米で医師免許を持ち、手術ロボット ダヴィンチを駆使した前立腺、腎臓手術のトップランナー。
男性ホルモンの低下に起因する様々な疾患の診断と治療を行う日本初の「メンズヘルス外来」の立ち上げなど、日本の男性医療や科学的アンチエイジングをリードする。
発足から22年目を迎える日本メンズヘルス医学会の理事長。日本抗加齢協会理事長。
著書に「男性の病気の手術と治療」(かまくら春秋社)、男性更年期障害(LOH症候群)について解説した「LOH症候群」(角川新書)など多数。 https://www.tsumura.co.jp/newsroom/topics/2022/12081500.html