
ファーストリテイリンググループは、6月20日の「世界難民の日」に先立ち、6月16日に難民支援活動メディア説明会およびユニクロ「PEACE FOR ALL」3周年記念トークセッションを、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)の協力のもと、大阪・関西万博にて開催しました。今回はその模様をリポートします。
ユニクロは、大阪・関西万博の国連パビリオンにて、UNHCRとのグローバルパートナーシップのもと、2025年6月16日から6月22日の期間、難民支援に関する共同展示を実施。展示会場では、ユニクロのチャリティTシャツプロジェクト「PEACE FOR ALL」の取り組みについて知ることができるほか、「PEACE FOR ALL」の新コレクションを6月20日の発売に先駆けて先行販売します。
■第一部 UNHCR・ファーストリテイリンググループ難民支援活動メディア説明会
メディア説明会では、UNHCR次期駐日代表の柏富美子氏が、6月12日にUNHCRが公開した年間統計報告書の最新版「グローバル・トレンズ・レポート 2024」について発表。「2025年4月末時点で故郷を追われた人の数は1億2,210万人に達しました。これは日本の人口に匹敵する数字であり、世界では67人に1人もの人が、紛争や迫害により避難を強いられているということになります」とし、継続的かつ包括的な支援の必要性を訴えました。

また、国連難民高等弁務官のフィリッポ・グランディ氏は、ビデオメッセージを通じて「UNHCRは、緊急支援や難民の権利と暮らしを守る上で重要な役割を果たしていますが、各国の政府や民間企業、そして皆さん一人ひとりの力がリソースを動かし命を守る支援を届けるためには必要不可欠です」と述べました。
ファーストリテイリング取締役グループ上席執行役員の柳井康治氏は、「ファーストリテイリングは2006年から、世界の難民・国内避難民を支援するためUNHCRと協業してきました。グローバルに展開する服のビジネスの基盤を活かし、紛争や災害などによって難民となってしまった方々に対する衣料支援に加え、教育や専門技術を身につけるトレーニングの提供などを通した自立支援や雇用支援など包括的な難民支援を行っています。また新たな難民支援の形として映画を通じた支援も開始しました」と支援活動についてコメント。
さらに「決して見すごすことのできない数に達している難民問題の解決に向け民間企業の果たせる役割は大きく、UNHCRのグローバルパートナーであるファーストリテイリングは、今後も難民支援活動の継続とさらなる貢献をしていきます」と今後について語りました。
■ユニクロが新たな難民支援のプロジェクトとして「難民映画基金」(Displacement Film Fund) を支援
2025年1月に設立した「難民映画基金」に対し、ユニクロは創設パートナーとして10万ユーロを寄付。今回、ファーストリテイリング取締役グループ上席執行役員の柳井康治氏より、本基金創立の背景や目的について説明がありました。
ユニクロは、難民の映画制作者を支援することで、「MADE FOR ALL」という理念と映画の力を結びつけ、より多くの人々に難民の物語を届けるとともに、世界の難民問題への理解と関心を深めるきっかけを創出。会場には、本基金の運営をリードするロッテルダム国際映画祭マネージングディレクターのクレア・スチュワート氏と、基金から支援を受ける5名の映画制作者のうちの一人である、シリア出身のハサン・カッタン氏も登場しました。

クレア・スチュワート氏は、「難民支援は喫緊の課題であり、才能や経験のある映画制作者もこのような状態に直面していることに対し、私たちの取り組みを開始しました。ユニクロのパートナーシップはこの取り組みに不可欠です。ユニクロのグローバルな影響力は、我々が支援する映画製作者や作品の認知向上に、大きく貢献してくれるからです」とユニクロへの期待を語りました。
選出監督のハサン・カッタン氏は、支援の話を受けた時の心境を「あの頃は世界中で様々な出来事が起きていて、本当辛い時期でした。なので、この助成金に選ばれたことは、私にとって非常に重要なチャンスでした。まるで希望の光でした」と語り、「世界の難民に何が起こっているのか、もっと多くの人に知ってもらう必要があります。私にとって、ドキュメンタリー映画を作ることは、難民の命の物語を語る唯一の方法であり、生きる道でもあります」と作品制作への想いを明かしました。
■第二部 役所広司が登場!「PEACE FOR ALL」3周年記念トークセッション
ユニクロのチャリティTシャツプロジェクト「PEACE FOR ALL」は、2022年6月の始動から3周年を迎えました。これを記念し、第二部で、6月20日に発売されるTシャツの新たなコラボレーターである俳優の役所広司氏を迎え、「伝えるチカラ」をテーマにトークセッションを実施しました。
「PEACE FOR ALL」では、これまでに43組のコラボレーターが参加し、7,192,387枚のTシャツを販売。その売り上げによる寄付額は2,157,716,100円に達しています(2025年4月末時点)。寄付金は、難民支援をはじめ、貧困、差別、暴力、紛争、戦争によって被害を受けた人々を支援する、UNHCRをはじめとした国際的な団体へと寄付されます。

トークセッションで役所氏は、主演を務めた映画『PERFECT DAYS』の印象的なワンシーンに「こんどはこんど、今は今。」という主人公のセリフを添えた、自身のコラボレーションTシャツに込めた思いについて、以下のように語りました。
「セリフは、映画の中で主人公の平山が姪っ子に諭すようにかけた言葉なのですが、未来や過去のことで思い悩むよりも今この瞬間を大切に生きていれば痛みも悩みも消えていくんだよ、と本当は伝えたかった言葉なのではないかなと思いを込めました」
また、役者を通じて「伝える」ことへの向き合い方についても、「受け手側に深く豊かに伝えるために、言葉過多にならないように気を付けます。それぞれ受け取り方が異なるので、相手の心や頭で考える余地があったほうが会話の質が高まると思います」と思いを告白しました。
6月20日には、役所広司氏とイチロー氏が新たなコラボレーターとして参加し、アカマイ・テクノロジーズと佐藤可士和氏の新デザインを含めた全4柄の新コレクションが発売されます。
■第三部 国連パビリオンのUNHCR・ユニクロ「PEACE FOR ALL」共同展示の内覧

役所氏が国連パビリオンを訪問。ユニクロ「PEACE FOR ALL」の展示を興味深そうに見ていた役所氏は、「過去、現在、未来と時系列で現状が分かる展示がとても素晴らしく感動しました。これまで報道ではよく見ていたが、日常では忘れてしまいがちなので改めて知ることができて良かったです」と感想を述べました。また、展示されている自身のTシャツにサインをしました。