
©WSJ
4月6日に神奈川県の鵠沼海浜公園スケートパーク(HUG-RIDE-PARK)で第3回マイナビスケートボード日本 OPEN supported by Murasaki Sports パーク種目決勝が開催され、男子は志治群青(13歳)が涙の初優勝。2位は攻めの滑りを見せた櫻井壱世(16歳)。
3位には永原悠路(19歳)がそれぞれ表彰台入りした。
永原は第1回大会(2022年4月)、第2回大会(2023年4月)で優勝しており、3連覇の期待がかかっていたが、今大会は新星たちにその座を明け渡す形となった。
※2024年は日本オープンの開催はなかった。
予選を91.17点という、驚異の得点で決勝に進んだ優勝候補の猪又湊哉は、決勝では思うように滑ることができずに5位で大会を終えた。

「予選首位通過後の1枚」
女子は2位以下に圧倒的な差をつけた、草木ひなの(17歳)が優勝。
2位には最後まで観客を沸かせた、藤井雪凛(19歳)。
3位はスタイリッシュな滑りが光る、貝原あさひ(18歳)がそれぞれ表彰台入りを果たした。草木は第1回マイナビ日本オープン(2022年4月)と合わせて、2回目の優勝となった(第2回大会は欠場)。
余談だが今大会期間中、オリンピックのスケートボード競技などを統括するワールドスケートから大ニュースがあり、なんと2028年ロサンゼルスオリンピック以降は出場資格に14歳以上の年齢制限を設けるとの発表があった。
これにより、2021年に開催された東京オリンピックのストリート種目で金メダルを獲得した、日本選手史上最年少金メダリスト西矢椛(当時13歳)。パーク種目で銀メダルを獲得した、日本選手史上最年少メダリストの開心那(当時12歳)。
この2人の記録は、さらに規定の変更が無い限り永遠のものとなった。
【パーク種目のルールと今後の国際大会の予定】
パーク種目決勝は45秒のランを3本行い、一番得点の高かったスコアで順位が決まる。
今大会と2024年10月に開催された、第7回日本スケートボード選手権大会の成績に基づくWSJランキングポイントによって、国際大会派遣選手の選出を行うとともに、2025年強化指定選手の選考を行うため、2028年のロス五輪を目指す選手にとって重要な大会となる。
World Skateboarding Tour(以下WST)2025のスケジュールは以下の通り
・WSTオスティア(イタリア)パーク プロツアー 6月1日~8日
・WSTローマ ストリート プロツアー 6月8日~15日
・WSTワシントンDC パーク 世界選手権 9月19日~26日
・WSTワシントンDC ストリート 世界選手権 9月21日~28日
・WST北九州 ストリート 11月23日~30日
※4月4日時点World Skateホームページより https://www.worldskate.org/skateboarding/news-skateboarding/3745-world-skateboarding-tour-2025-schedule-release.html
【天候に左右されたか?大番狂わせの予選】

今大会は4月5日(土曜)に予選が行われたが、翌日6日(日曜)は「曇り時々雨」の予報。
これを受け、翌日予定されていた準決勝は中止となり、予選の上位8名で決勝が行われることが事前にアナウンスされた。
さらに、6日も雨で開催が困難と判断されれば予選の結果が最終結果になるとのことで、実力者でも予選から緊張感ある滑りを見せる大会模様となった。

「笹岡建介」
日本勢のパーク種目第一人者であり、これまで日本選手権、日本オープンともに表彰台常連でシーンをけん引している笹岡建介(26歳)が今大会、まさかの予選敗退を喫する展開に。
予選では2本のランを披露するのだが、2本ともフルメイク(ノーミスで滑りきること)することができずに13位でフィニッシュ。
本来なら16位以上が準決勝で決勝進出をかけて争うのだが、準決勝をカットしての開催というのも影響があったのかもしれない。さらに加えると、男子予選の開始時間になった途端、急な湘南の海風が吹き荒れ選手のパフォーマンスに影響があったかもしれない。ともあれ10代前半から半ばにかけて、爆発的な進化を遂げる日本のパーク男子勢を引っ張る“兄貴分”としての存在感は、本人が滑り続ける限り揺るがないだろう。
今後さらなる活躍に期待したい。
【13歳涙の初優勝/志治群青】

予選2位で決勝進出を決めた、13歳の志治群青。
決勝1本目のランではバリアルバックサイドディザスター、ウェドル(ミュート)540、ロデオ540、フロントサイドキャバレリアル、フロントサイドオーリー、バックサイドスミスグラインド、フロントサイド5-0グラインド、スタイルの入ったジュードーエア、ギャップ越えのインディエア、最後は体勢を崩したもののフルメイクの滑りを見せ、62.44点を獲得する。

2本目では、ラスト付近にギャップ越えのバックサイド360エアに挑むもミス。
3本目のランでは、2本目にミスしたバックサイド360を見事にメイクしてのパーフェクトランで締めくくると76.26点を獲得し、大逆転優勝を飾った。
最終滑走者の猪又湊哉が残念ながらフルメイクできずに終え、優勝が決まった瞬間涙を見せて喜ぶ姿が印象的だった。
【ハイエアと攻めの滑り/櫻井壱世】

予選3位で決勝進出を決めた、櫻井壱世。
ラン1本目では、いきなり高さのあるトランスファー(セクションをまたぐこと)のバックサイドエアから、続けてステイルフィッシュ。
コースの縁を上るように滑らせる、フロントサイド5-0グラインドから、ウェドル(ミュート)540、バックサイドオーリー、フロントサイドノーズグラインド、トランスファーのバックサイドテールスライド。
フロントサイドフィーブルグラインド、フロントサイドエア、バックサイドリップスライド、バックサイドオーリーと、ハイスピード&ハイエアのランが続き。
ボディバリアル540、アーリーウープのバックサイドディザスターをフルメイク。
全てのトリックがブレの無い滑りで、一切スピードと高さを落とすことなく滑りきる素晴らしいランを見せ、70.02点を獲得。一時的に首位に立つ。

2本目では高さのあるキックフリップインディからのスタートで、さらに高得点を狙うが途中でミス。
3本目も攻めの姿勢を見せるが1発目にミスしてしまう。
最終的には志治群青に優勝の座を明け渡す形になったが、見事準優勝に輝いた。
【日本のエース/永原悠路】

予選では、あまり調子のいい滑りを見せることができずにいた永原悠路だったが、それでも7位で決勝進出を決める。
ひときわ、大きな声援を受けて迎えた決勝1本目のラン。高いインディエアから、フロントサイド5-0グラインド、フロントサイドリップスライド、トランスファーからのバックサイドノーズスライド フェイキー。
ここでフェイキースタンスから、キャバレリアルでメインのスタンスへ。フロントサイドのインディエア、ジュードーエア、キックフリップインディ トランスファー、バックサイド540。
フロントサイドオーリー、バックサイドノーズグラインド、バックサイド50-50グラインド フェイキーアウト、キャバレリアルディザスターをフルメイク。
最後のトリックは、制限時間内に入っていたかどうかが微妙だったが、前日の調子の悪さを忘れさせるような、目の覚める滑りで68.55点を獲得する。

2本目のランではさらに難易度を上げたラン構成に挑むも、キックフリップインディ フェイキーでミス。3本目でも序盤にミスがあり、日本オープン3連覇に期待がかかるオリンピアンは今大会3位で幕を閉じた。
【鬼の強さ/草木ひなの】

予選トップ通過の草木ひなの。
決勝のラン1本目から、アーリーウープのサランラップエア、ボディージャー、バックサイドスミスグラインド、トランスファーのサランラップテールから、さらにもう1つサランラップエア、ボンレス、コーナーでロックンロールスライドを決めるフルメイクの滑りで67.88点を獲得し、首位に立つ。
2本目のランではさらに難易度を上げて得点を伸ばし(69.87点)、2位以下を突き放すと、ウイニングランとなった3本目。

さらに攻めの姿勢でバックサイド540を織り交ぜるパーフェクトランを見せ、一気にスコアを上げて80.11点を獲得。
終わってみれば2位に13点以上の差をつけ、圧倒的な優勝劇を見せた。
【爆発力は世界トップ/藤井雪凛】

予選3位で決勝に進出した、藤井雪凛。
決勝1本目のランでは、高いキックフリップインディなどを見せるが、アーリーウープのバックサイドエアでミス。
続く2本目のランでは、フロントサイド5-0グラインド、フロントサイドクレイルスライド、キックフリップインディ トランスファー。フロントサイドスミスグラインド、ボンレス、ジャパンエア、アーリーウープのバックサイドエア、バックサイドフィーブルグラインド、リーンtoテール。
フロントサイド5-0グラインド、インディグラブ トランスファー、レイバックエアをフルメイク。
66.93点を獲得し、草木に続く2位で2本目のランを終える。

3本目のランではキックフリップインディを失敗してしまい、フルメイクの滑りを見せることができなかったが、みごと準優勝で大会を終えた。
3本目の滑走終了後には、マックツイストを見せ会場を沸かせたのも藤井らしい一幕だった。
【世界屈指のスケートスタイル/貝原あさひ】

予選を5位で通過した、貝原あさひ。
決勝1本目のランでは、いきなり高さのあるスタイリッシュなベニハナから魅せると、得意のマドンナ、バックサイド50-50グラインド、バックサイドオーリーと技をつなぐ。
さらにリーンtoテールスライドから、オリジナリティ溢れる技、ノーリーで飛び上がってからのフロントサイドディザスター、バックサイド5-0グラインド、バックサイドフィーブルグラインド フェイキーアウト、フェイキーバリアル、バックサイドディザスターを決めるフルメイクの滑りを見せ、66.47点を獲得し一時首位に立つ。

2本目と3本目は、フェイキーバリアルをミスしてしまい得点を伸ばすことができず、草木、藤井に次ぐ3位で競技を終えた。
【第3回スケートボード日本オープン・男子パーク結果】

©WSJ
1位 志治 群青(13) –62.44/44.28/76.26 Best/76.26
2位 櫻井 壱世(16) –70.02/19.48/2.07 Best/70.02
3位 永原 悠路(19) –68.55/65.38/30.93 Best/68.55
4位 溝手 唱太(15) –63.99/67.46/1.33 Best/67.46
5位 猪又 湊哉(15) –66.20/7.40/1.33 Best/66.20
6位 岡田 光瑠(15) –48.85/7.40/52.36 Best/52.36
7位 西川 有生(12) –51.27/50.36/13.10 Best/51.27
8位 徳田 凱(17) –10.12/14.55/0.00 Best/14.55
【第3回スケートボード日本オープン・女子パーク結果】

©WSJ
1位 草木 ひなの(17) –67.88/69.87/80.11 Best/80.11
2位 藤井 雪凛(19) –25.90/66.93/10.42 Best/66.93
3位 貝原 あさひ(18) –66.47/48.32/46.02 Best/66.47
4位 鷹野 芙由佳(13) –25.29/64.51/2.64 Best/64.51
5位 能勢 想(15) –43.45/61.27/64.06 Best/64.06
6位 小川 希花(24) –57.27/63.83/55.38 Best/63.83
7位 福田 碧(14) –62.85/23.44/27.60 Best/62.85
8位 加藤 渚都夏(14) –59.19/57.08/24.58 Best/59.19
表彰式の写真 ©ワールドスケートジャパン
写真・文 小嶋勝美:スケートボード放送作家&ライター
※ライディングの写真は全て予選時のもの