さびれた商店街を”ディスりソング”で町おこし!?「西金沢」はアイドルの聖地に成れるか

2017/08/07
放送作家 石原ヒサトシ

7月30日(日)、西金沢駅前の広場で総勢14組のアイドルが集う「西金プリンスロードまつり」が開催され、約1000人のギャラリーが訪れて盛り上がった。

確認だが、メジャーな金沢駅… の一つ隣にある”西金沢駅”で開催された小さなお祭りである。ローカルな話題で申し訳ない。ただ、この小さなお祭りが、数年後には大きなフェスティバルへと進化するかも!? その先頭に立ったアイドルは「西金沢少女団」というユニット。

西金沢駅前には「西金プリンスロード」という商店街がある。しかし、そこは商店街と呼ぶには寂しい。総距離にして約700メートルの通りに25ほど店舗があるが、コンビニエンスストアは1店、飲食店が5店程。スーパー、ドラッグストアといった日用品が手軽に買えそうな店はおろか、カフェ、メジャーなファストフード店、カラオケボックスもない。家族で行けそうな店、友達で集えそうな店が殆ど無い、というかそもそも店が少ない、だから人も歩いていない。商店街って雰囲気がない。

※西金プリンスロード。西金沢駅の手前、金沢駅で北陸新幹線は終点。でも車庫へ入るため時々上を通ります(笑)

商店街をディスるアイドル

実は、20年ほど前までは店が沢山あって人や車の往来も激しく賑やかなストリートだった。しかし、数キロ離れた地域が都市化され、人がそっちへ流れるようになると駅前から活気が消えた。時代の流れってやつだ。

そんな西金沢駅の傍に、2014年、石川県の地元アイドル「おやゆびプリンセス」が所属する事務所が拠点を置き、翌年には「西金沢一丁目劇場」というライブハウスをオープンさせた。事務所も商店会に入ることになったのだが、そこで何かできないか? と考えた時、頭に浮かんだのが「アイドルで商店街を活性化」だった。

商店街の状況は散々たるもの。売りがない…。そこでそのネガティブをポジティブに変換することにした。まず、楽しいコンテンツを沢山発信しようと『西金プロジェクト』を発足。地元応援ユニット西金沢少女団を編成して、“商店街をディスって歌っちまえ!”とばかりに作ったのが、5月にリリースしたこの曲だ。

西金沢少女団「T・S・O・N・P ~The song of Nishikane Princeroad~」

「歩いてる人そんなに見かけない」

「金沢駅からはたった一駅なのに」

「実は隠れた人気店もある」

「1回! 1回でいいから来てみてぇぇぇぇ」

“ディスって、褒めて、媚びる” というメタルロック(笑)。アイドルが、地元を自虐した曲でPRするというのはなかなか斬新だ。お店の人もYouTubeで世界に顔が知られるとは思いもしなかったはず(笑)。地元新聞やテレビ、ラジオの食いつきは良く、すぐに話題となった。そして、プロジェクト最初の大イベントがこの度開催された「西金プリンスロードまつり」なのだ。

西金沢少女団のマネージャーで、西金プリンスロード商店会事業部の伊勢保彦さんに伺った。

「いざ商店会の仲間入りをしたら、50~60代の方ばかりで40歳の自分が最年少だったんです(笑)。すると、18年前に夏祭りが休止になってから、ずっとイベント行事的な事をやっていないので何かできないか? と話を振られた。そこでアイドルを抱えた事務所なので『アイドルを呼んでお祭りをしましょう』と提案したんです。最初はみんなキョトンとしてましたけど」

とはいえ、潤っていない商店会の資金は乏しい。伊勢さんは、助成金を申請、そして出演アイドル集め、宣伝活動といった運営の手はずを殆ど一人で行い、商店会には「屋台を出して欲しい」と協力を求め、話を進めた。Twitter、ホームページ、動画などのWeb関連の作成、チラシ、商店街ののぼり、といったアナログ面も着手。現実的にまつりのビジョンが見えてきて、ようやくみんな本気になってきた。

「一番大変だったのは会議?会合?寄り合い?を増やすことでした。進行状況や運営に関するあれこれを話し合いたいけどみんな腰が重い。なんとか月1回を2週に1回、そして週1回と増やしていきました」

まつりに出演してくれたのは北陸を拠点に活動する、いわゆるローカルアイドルばかりだが、関東や関西から応援に駆けつけてくれたファンもいて西金沢駅前は久しぶりの大衆で湧いた。

伊勢さんは「商店会では“様子を見て来年の開催を検討”という話しでしたが、何人かのお店の方は“来年もやろう”とご機嫌でした。やっぱり、昔みたいに沢山人が集まるのを見て嬉しかったんだと思います」と汗だくの顔をほころばせた。

西金沢を北陸のアイドル聖地に

先頭に立ってPRする西金沢少女団は、このプロジェクトをどう受け止めているのか?“セールストークはいいから本音を聞かせて”とリーダーのオモテカホさんにいろいろ聞いた。

「商店街? どこに? って感じでした(笑)」

オモテカホさんは、そもそも石川県の地元アイドル「おやゆびプリンセス」のメンバーで、現在はソロ活動をしているが、西金沢少女団結成に伴いこのユニットに参加。メンバー8人のリーダーを命じられた。週に数回西金沢に来るようになって3年以上経つが、コンビニ以外の他のお店に入ったことはなかったという。歌詞にもあるように商店街という感じがしなかった。

「何もないところだな~と思ってましたけど、言われてよく見たらお店いっぱいあった(笑)。そこで、お店めぐりをしたんですが、孫を見るかのように接してくれるおじいさん…いや、おじさん、おばさんが多くて(笑)、皆さん本当に優しいんです。“よろしくね”って言われて、頑張ろうって」

ユニットデビュー曲がアイドルらしくないメタルロックだった

「こんなので大丈夫!? って思いましたけど(笑)、でもインパクト強いし面白い。それにオリジナル曲がもらえただけでも嬉しかった」

西金沢少女団は、現在月2回(第1、第3、土曜)に西金沢一丁目劇場で定期公演を行っているが、お客さんは徐々に増えて盛況。デビュー曲のMVや西金プリンスロードのお店を紹介するPR動画をアップするなど活動を行っている。

また、お店サイドも、店頭に西金沢少女団のポスターを貼り、ケーキ屋さんではコラボスイーツを作るなど、相乗効果を狙う今までにない動きを見せている。一見さんも増えたそうだ。

「西金沢少女団は西金プリンスロードを盛り上げることが使命なので、特に北陸圏なら沢山イベントに参加したいです。私達のことを知ってもらって、劇場にライブを見に来てもらえればお店に行ってくれるかもしれない。商店街でも私達や事務所を含めて応援してくれるので、WIN-WINの関係になれれば嬉しい」

西金沢一丁目劇場でのライブは1日100人以上を集客する日も少なくない。西金沢駅の一日平均利用者は約2600人だが、劇場ができてからは西金沢駅の電車、バスの利用者も増加傾向にあるだろう。コレに伴う飲食店などがもう数店増えればいいと思うのがもどかしいところ。商店街で一番の稼ぎ頭は、劇場横の飲料自動販売機だと言われている(笑)。

最後に、最大の目標を掲げてくれた。

「西金プリンスロードまつりは継続して開催したいです。そして、西金沢が“北陸のアイドル聖地”と呼ばれるようにしたい」

アイドルの聖地化と、かつての活気を取り戻さんとする、少女たちと商店街の野望の炎はチリチリと燃えはじめた。焔立つと信じる。JR西金沢駅は金沢駅から一駅、たった3分で行ける魅惑の地だ。

【オモテカホ ワンマンライブ】

8月15日(火)12:30~17:00

場所:THE MAT'S(小松市土居原町13-18)

西金プロジェクト西金沢少女団ホームページ

https://www.nk-pjt.com/

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この記事を書いた人

放送作家 石原ヒサトシ

放送作家 「クイズ雑学王」、「ボキャブラ天国」等 バラエティを中心にイロイロやってきました。なんか面白いことないかなぁ~と思いながら日々過ごしています。野球、阪神、競馬、ももクロ、チヌ釣り、家電、クイズ・雑学、料理、酒、神社・仏閣、オカルトなことがスキです。

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