株式会社東急コミュニティー(東京都世田谷区)が10月、30代以上の男女3,128人のマンション居住者に対して防災意識に関するアンケート調査を実施。震災被害経験者と非経験者の回答を比較・分析したところ、災害対策の課題が見えてきました。
今回の調査では、災害発生時の初動について「わからない、何もできない」と回答をした非経験者が震災被害経験者より1.6倍多く、何らかの対策を講じているものの、災害リスクに対しての優先順位や具体的な対策法に差がみられました。
震災被害経験者と非経験者を比較すると、「命のリスク」、「ライフラインのリスク」、「生活必需品のリスク」という3つのカテゴリーで両者の備えに対する差が大きく、「家具の固定や転倒防止、落下物防止の対策」(56.0%)や「懐中電灯や乾電池をすぐに持ち出せる場所に用意」(34.6%)といった回答が多く、実際の災害において、これらリスクに備えることが大切だと分かります。
また、過去に震度5強以上の地震を経験した人へのアンケートでは、半数以上が「家具や家電製品の転倒」(45.4%)を経験。まずは「命のリスク」への備えを優先させ、実体験を踏まえた対策を実施しており「生き延びる」より「生き残る」ことが大事であることが理解できる結果となりました。
その他、両者の差が顕著に現れたのは、「家族と災害発生時の集合場所や連絡方法を確認した」、「家族で災害発生時の想定や行動を話し合った」という回答。前者は震災被害経験者25.4%に対し非経験者は19.0%、後者は震災被害経験者20.7%に対し非経験者13.7%という結果に。
また、災害発生時の初動において「わからない、何もできない」という回答が、非経験者に多かった結果と併せ、被害経験から学んだ生きた「シュミレーション」が必用であることが伺えます。
「近隣世帯を助けようとする意識」78.6%
マンション単位で行う「共助」の意識は全体的に高く、特に大規模マンションほどその傾向が高い結果になりました。
「災害発生時に近隣世帯を助けようとする意識」の調査では78.6%が「自発的に声をかけて、助けを必要とする人を助けたい」と回答。500戸以上のマンションでは83.4%でした。
大規模マンションは管理会社スタッフが常駐するケースも多く、組合による防災イベントの運営やマネジメント体制が機能しやすいため、共助意識が高まったと推察できます。
しかし、東京大学生産技術研究所教授で都市基盤安全工学国際研究センター長の目黒公郎氏は「震災体験の有無にかかわらず、マンションに住まう人々全般の防災に対する意識や備えが、思った以上に不足している」と警鐘を鳴らしています。
目黒氏は「災害時に直面する状況の理解が不可欠。変化する災害状況を正確に想像する“災害イマジネーション”が必要になる」とし、「自分と家族の身体と生命を守る。つまり“災害発生時に生き残る”ことを最優先に考えること」と話しました。
実際に起こっていないことを想像するのは難しいです。特に震災を経験したことのない人にとってみると、どのような対策をすれば良いのか分かりません。災害経験者の体験を参考に、あらためて世帯単位で行う「自助」と近隣住民と行う「共助」について考えてみてはいかがでしょうか。