普段、どんな「推し活」をしていますか? 推し活と一口に言っても、色んなやり方がありますよね。そんな推し活を、投資を通して行っている人もいるようです。推しを応援するために、推しに関連する会社の株式を買う、広告を出稿するといった方法です。推しの応援投資には、どんなメリットがあるのでしょうか? また気をつけたい点もあわせてファイナンシャルプランナーの伊藤亮太さんに伺いました。
■Z世代は「推し」への「応援投資」が好き?
最近よく耳にするようになった「応援広告」。これは自分の推しを広く一般にし布教するために、消費者自らがお金を出して屋外メディアへ広告を出稿することで推しを応援するための広告を指します。広告に投資するといっても良いでしょう。
ジェイアール東日本企画の「jeki応援広告事務局」が行った「推し活・応援広告調査2022」では、15~49歳の過半数の「推しがいる」層のうち、約4割は周りに自分の推しを知ってもらいたい「推し布教意向者」でした。
その推し布教意向者の5割は「応援広告」の存在を認知し、そのうち4割は応援広告の実施意向があり、1割は既に応援広告の出稿経験があることがわかりました。
今後、このような応援広告をはじめとした応援投資は定着していくのかもしれません。
●金融教育を受けたZ世代は資産形成で有利になる可能性も!
ところでZ世代は、応援投資をはじめ他の世代と比べて特有のお金に関する考え方を持っているようです。それは幼少期から金融教育を受けたかどうかという点も関係しているのかもしれません。
三井住友信託銀行の組織「三井住友トラスト・資産のミライ研究所」が行った調査では、金融教育を受けた60歳以上の男女の資産のストックは、金融教育を受けていない男女よりも500万以上多いという結果に。
2023年3月に三井住友信託銀行が開いた記者発表会では、金融教育を受けた時期に着目すると、資産形成意識の高さを計るすべての項目で「小学校に入る前」に金融教育を受けた人が抜きん出ていることがわかったと発表されました。
金融教育の有無や開始時期が、そこまで資産に関係するとは驚きます。
幼少期から金融教育を受けてきたZ世代は、今後、資産形成の可能性が高そうです。ぜひ金融に関する学習を積極的に行っていきましょう。
■推しの「応援投資」ってどうなの?
ところで、推しを応援するために株式投資を行う応援投資をしたいと考えている人もいるかもしれません。対企業、対アーティストが所属する会社などの推しを応援することのメリットとデメリットには、どのようなことがあるのでしょうか?
ファイナンシャルプランナーの伊藤さんは、次のようにアドバイスしてくれました。
●メリット
「推しに対してさらに応援が強化され、さらに推しを好きになることができるでしょう。
また株主優待を受け取ることで、コンサートなどに参加しやすくなるほか、限定グッズなどをゲットできる可能性もあります。支援している企業の業績が上がれば株価は上がるため、自身の資産も増やすことができるという好循環になります」
●デメリット
「推しを見つけて応援するのは良いことですが、そもそもその会社の業績が良くないと株価が下落し、損失を被る可能性があります。推しに注目しすぎて、その会社の他の事業などを確認しないことで、業績を見誤る可能性があることは留意しましょう。
リスクを考えると、株主優待などはあくまで『おまけ』としてとらえるべきです。株主優待を廃止する企業もあります」
■推しの「応援投資」で気をつけたいこと
推しを応援するための投資は、リスクもあるようです。どんなことに気をつければ良いでしょうか。伊藤さんに伺いました。
「企業全体を推しているのであれば、その企業の全体の事業の魅力だけで投資するのではなく、同業他社と比較してどうなのか、先行きはどうなのかをしっかり見定める必要があるでしょう。
アーティストなど、単体推しの場合には、そのアーティストの成長が良かったとしても、株式に関しては、そのアーティストが在籍する企業全体の状況が影響するため、全体の業績、成長をしっかり確認する必要があります。
一方で、本当に好きなアーティストや企業であれば、損得関係なく応援していくことは大切な視点ではあると思います。とはいえ、一つの企業だけに投資した場合、コロナ禍のような想定していないような事態が起きることも今後もあり得るため、複数の異なる分野の企業にも投資し、様々な備えを行うのをおすすめします」
■将来の資産形成のために取り組むべきこと
Z世代は、将来、資産形成が得意になる可能性があります。いまからどんなことき取り組めば良いでしょうか。
「まずは少額でも構わないので、投資をはじめてみると良いでしょう。証券口座を開設し、1万円でも良いので、投資信託を購入してみては。例えば、推しの会社の株式を100株買ってみる。そして、どんな値動きをするのか、どういった場合に株価は上がるのか下がるのかを確認するのです。失敗しても少額であれば損失は大きくないため、実践あるのみです。
一方で、投資本や投資セミナーなどで知識を身に着けるのもおすすめです。その際に、一つの本やセミナーだけを鵜呑みにせずに、複数の本を読みこなし、複数のセミナーに参加し、様々な考え方ややり方を学びましょう。そして、ご自身に合った投資手法を実践していくのが、将来の資産形成の近道といえると思います」
推しがいる人は、投資の勉強を兼ねて、応援投資を始めてみるのも良さそうです。しっかりとリスクを踏まえた上で行いたいですね。また投資を少額から始めたり、自ら知識をつけたりすることもぜひトライしてみましょう。
【取材協力】
伊藤 亮太さん
ファイナンシャルプランナー
証券会社にて営業・経営企画部門、社長秘書等を行う。また、投資銀行業務にも携わる。現在、不動産を含む資産運用と社会保障(特に年金)を主に、FP相談・執筆・講演・を行っている。東洋大学経営学部および秀明大学総合経営学部非常勤講師
(https://www.ryota-ito.jp/)
【調査出典】
jeki「推し活・応援広告調査2022」(https://ebisu-hatsu.com/9682/)
三井住友トラスト・資産のミライ研究所「第 3 回住まいと資産形成に関する意識と実態調査」(2022 年 1 月実施)(https://www.smtb.jp/-/media/tb/personal/news/2023/pdf/20230323.pdf)