先日、テレ朝の人気番組「激レアさんを連れてきた。」に、去年話題位なった絵本の作者が出演されておりました。この絵本の主人公のモデルでもあります。
その絵本の作者というのが、山下賢二さま。この山下さまのエピソードが激レアなのでございます。なんと、幼稚園入園から小学校卒業までの9年間、学校で一言も喋らなかったのでございます。しゃべれなかったのではなく、しゃべらなかったのでございます。ここが重要でございます。あえてしゃべらないと決意し、実行に移したのでございます。ちなみに、その絵本がこちら。
「やましたくんはしゃべらない」(作:山下賢二 絵:中田いくみ 出版社:岩崎書店)
ストレートなタイトルでございます。実話でございます。山下さまのドキュメンタリー絵本でございます。がしかしでございます。果たして9年間も声を出さないで過ごせるものなのか…。
その9年間の奇跡の物語が、絵本になり、さらに、それが番組スタッフの目にとまり、激レアさんということで番組に出演することになり、さらには、ゲストの栗山千明さま、司会の若林さまを唖然とさせるに至ったのでございます。
そもそも、きっかけが気になるのでございます。幼稚園1日目の自己紹介タイム、その時に事件が発生いたしました。山下さまの誕生日は4月3日。ということで一番手に抜擢。が、山下さまは誰の紹介も聞かずに、いきなり自分から自己紹介させられたことに腹を立ててしまうのでございます。
緊張もあったとか。一言も発することなく自己紹介は終了。その日、その翌日も先生に残されて、「なんで?」「なんでしゃべらないんだ?」と言及、いや心配されたのでございます。
その心配されたことが、裏目にでたのでございます。山下少年は、そのことで頑なになり、「もう、しゃべらない」と決心を固めたのでございます。……
みなさん、お察しの通り、9年間無言を通すには、かなり緩いと申しますか、ぼやっとした理由なのでございます。しかし、事実、ここから山下くんの9年間無言学生生活がスタートするのでございます。
録画していてやっと観ました「激レアさんを連れてきた。」!
— ホホホ座尾道店 コウガメ (@kougame_) 2019年2月13日
ホホホ座浄土寺店の山下さんがテレビに! すごいなあ pic.twitter.com/wSzisJhcJh
しかし、本当にそんなことが可能なのか?
本人曰く、コミュニケーションは、うなずきと首振りで。細かいやりとりの際は、エアー筆談でクリア…とか。鬼ごっこの鬼になった際には、「もういいかい」を口にしないで、無言のまま、探し始めるというスタイルをつらぬいたそうでございます。そんな特別ルールが、山下くんには許されていたのでございます。
ちなみに幼稚園の先生は、通信欄に「けんちゃんの『おはよう』『さよなら』が毎日聞きたいな」と書き記し、さらに、卒園の際には「もっともっともっとお話したかったな」と、その思いが綴られていたとか…。
小学校にあがると、友達や先生から、様々なトラップが仕掛けられるようになります。担任は放課後、山下くんを残し「話すまで帰れまテン、いや、帰しません」と強行策に打って出ます。その際、山下くんのとった作戦は、“泣く”でございます。もちろん、声は出しません。無言で泣き続けてたのでございます。健高倉ばりの無言泣きを小学生にして習得していたのでございます。恐るべし…。
さらにピンチは容赦なく山下くんを襲います。その辺りは絵本でご確認くださいませ。そして、中学受験の時でございます。筆記試験と面接があったのですが、知らない子ばっかりと思っていたグループ面接に、なんと同級生が同席。
そうそう、ひとつ、言い忘れておりました。山下くんの無言学生生活のルールは、「学校でしゃべらない」(家では、普通にしゃべっておりました)でございます。
山下くんは、悩んだのでございます。9年間守り続けてきた「喋らないキャラ」をとるか、面接(中学受験)をとるか…。究極の選択でございます。
その結果、なんと、面接で無言をつらぬき、みごと不合格に…。恐るべし…。
そんな無言レジェンドの山下くんの無言生活の結末ですが…
きっかけ同様、緩いのでございます。壮絶なドラマはございません。中学受験を失敗した山下くんは、地元のあまり素行のよくない生徒がたくさんいる中学に進学することになりました。その時に、山下くんの防衛本能が静かに、こう語りかけて来たそうです「中学では無言生活はかなり過酷なものになるよ、中学生活が灰色になるよ」と…。そこで、小学校卒業を期に、無言生活に終止符を打つことを決意するのでございます。
気になった方は、是非、「やましたくんはしゃべらない」でご確認くださいませ。昨今の絵本ブームのなか、こんなゴイスーなエピソード実話の絵本も登場していることをみなさんに知って頂きたいのでございます。山下くんエピソード、ネットでも検索できますが、是非、ご本人原作の絵本でご体験して頂きたいと存じます。
(文:絵本トレンドライター N田N昌)