寺田倉庫は12月10日~同23日の期間、同社イベントスペースで「TERRADA ART AWARD 2021 ファイナリスト展」を開催。10月より入場予約の受付を開始しています。
「TERRADA ART AWARD 2021」は、新進アーティストの支援を目的とした現代アートアウォード。世界のアートシーンでプレゼンスを発揮できる才能を見出すため、国際的な舞台で活躍し、現代アートに深い見識を持つ審査員による選考が行われ、その結果、国内外1,346組の応募の中から5組のファイナリストが選出されました
「TERRADA ART AWARD 2021 ファイナリスト展」では、倉庫をリノベーションした、無機質でありながら何色にも染まりアーティストの世界観・才能を開花させる空間を展示の舞台として、ファイナリスト5組が独自の展示プランで未発表の新作を含む作品を発表します。
会期初日には、最終審査員の片岡真実氏、金島隆弘氏、寺瀬由紀氏、真鍋大度氏、鷲田めるろ氏からファイナリストへ授与する各審査員賞を発表。また、会期中には一般投票が実施され、オーディエンス賞が決定します。
会場は寺田倉庫 G3-6F(〒140-0002 東京都品川区東品川 2-6-10 寺田倉庫G号)。入場は日時指定予約制で、入場料は無料となっています。
入場予約:https://www.terradaartaward.com/finalist
以下、ファイナリスト5名の展示プランを紹介します。
川内理香子(かわうち りかこ)
身体のありどころはどこだろうか。
コロナウイルスによって、自身の身体や、自分が保有するものへの意識、その境目の曖昧さが顕著になった。今、神話の世界のように、内と外、自己と他者の境は複雑で入り混じってしまうものということを突きつけられていると思う。
今回の展示では、内と外の境目のなさが暗喩される神話をモチーフにした、自然と動物、身体が入り混じる世界を描いた油彩のペインティングとともに、針金の半立体、ネオン管の彫刻を制作し、様々な線のあり方を一堂に展示する。それらが互いに響き合い、重なり合うことで、ネオン管の光の脈動のように、それぞれの線が常に動き続けているようなイメージを感覚できる展示にしたいと考えている。多様な線の中に1つの身体を見せたい。
久保ガエタン(くぼ がえたん)
ここ(会場)がまだ海の中だった頃。一人の漁師が光り輝く面を引き上げた。それは牛頭天王の面であったことからこの地は天王洲と呼ばれる様になったという。1798年には一匹の鯨が打ち上げられ、それを祀る鯨塚が現在も残されている。その後、黒船に対する海防強化のため第四台場として埋め立てられた天王洲は、海から地へと拡張された。現在、羽田空港新飛行ルートとして会場の頭上450mを航空機が通過している。
太平洋の彼方にいる一匹の鯨の鳴き声から、頭上の航空機が発する轟音まで、繰り返される音がもたらすものとは。海の向こうからやってくる何かによって空間のレイヤーを変容させてきたこの地で、その起源を考察し未来の音を発してみよう。
スクリプカリウ落合安奈(すくりぷかりうおちあい あな)
ー鎖国と国際結婚から見る、帰属意識の姿ー
本作は、2019 年にベトナムのホイアンから始まった、3部作とも言える一連のビデオインスタレーションの第3章に当たる。
2019年ベトナムにて、江戸時代に「鎖国政策」に翻弄されながら異国の地で永い眠りについた、ある1人の日本人の墓と出会った。墓は、日本の方角に向けて建てられている。また墓の主は、鎖国政策によりベトナムのフィアンセとの仲を引き裂かれたものの、海を越えて会いに行く姿が言い伝えとして残されている。1つの墓の存在から、国策や、時に人々を隔てる境界を越えていく個人の想いについて考えさせられる。
ホイアンはかつて日本人街があり、日本による 様々な研究も行われていたが、彼については僅かな情報としての伝説が複数あるということに留まり、正確な足取りを掴むことは困難を極めた。そんな中、墓に刻まれていた情報を頼りに、墓の眼差しの先にある彼の生まれ故郷の長崎の平戸を訪れる。すると、「鎖国と国際結婚」、「隔たりを生むものと、それを越えてゆくもの」を象徴する様々なものとこの土地を通じて出会っていくことになった。時代を超えて浮かび上がってくるものを、映像とサウンド作品として発表する。
持田敦子(もちだ あつこ)
仮設的な素材を用いた階段作品で空間を埋め尽くす。鑑賞者は実際に階段に登ることができる。階段は何か所も分岐点があり、立体状の迷路のようになる。階段の上を歩くことで、空間を新たな視点から捉えることができる。作り、分解し、また作り直すことができる階段を使い、できる限り多くのルートを空間上に設定し、選択肢を提示する。階段は2013年より何度も手がけてきた私にとって重要なモチーフである。足を一歩あげるという単純な行為、そしてその足を受け止める台、その組み合わせで空間をどこまでも探求していくことができる。
山内祥太(やまうち しょうた)
人間とテクノロジーの恋愛模様をパフォーマンス・インスタレーションとして描き出す。
両者をつなぐピンク色のケーブルは互いの匂いを交換するための装置である。
人間とテクノロジーは匂いを交換することで互いの考えていることがわかるようになるが、テクノロジーは度を越して人間の匂いを求めるようになる。
人間がテクノロジー依存症であると同時にテクノロジーもまた人間依存症なのである。
テクノロジーを愛しながら、人間も愛するためにはどうしたらいいのか。
快楽と絶望の中間領域を見つけ出し、現在生きる我々人間の性に投影したい。