「ももクロマニア2018」に“警視庁”が犯罪遺児らを招待【なぜ、ももクロなのか?】

2018/08/14
放送作家 石原ヒサトシ

2018年8月4日(土)、5日(日)、千葉県・ZOZOマリンスタジアムで、ももいろクローバーZライブ「ももクロマニア2018」が開催され、二日間合計65039人の観客を集めて盛り上がった。

このコンサートが終わった5日深夜、TBSテレビのニュースがこんな出来事を伝えた。 

「事件・事故の遺児ら『ももクロ』コンサートに招待」

【(一部引用)人気アイドルグループ「ももいろクローバーZ」のコンサートに、事件や事故で親を亡くした子どもたちが招待されました。

招かれたのは、事件や事故で親を亡くした8歳から18歳までの子どもたち14人とその保護者です。子どもたちは、会場の観客とともに、曲にあわせてペンライトを振ったり歌を口ずさんだりして楽しんでいました。

子ども「とても楽しくて、今までで、とてもいい日になったと思います」

保護者「他の被害者と交流することがなかなかない。話をすることまではなくても、こんなに周りにいるんだっていう気持ちが分かり合える」

こうしたコンサートなどへの招待は、被害者支援の一環として2015年から行われていて、警視庁は「児童が辛い経験を抱えつつも夢や希望を抱いて成長するきっかけを提供したい」と話しています。】

__という内容。

ももクロ発の企画ではない

ももクロは、2016年、2017年の夏と冬に開催される大型コンサートでも遺児を招待していて、今回が5回目とのこと。これまではテレビやネットニュースで大々的には扱われておらず、ファンでも知らない人は結構いたようだが、今回はライブ当日深夜にニュースとして伝えられたためか今まで以上に反響が大きかった。ネット上では・・・ 

「ももクロって、こんな慈善活動してるんだね。すばらしい」

「ももクロだけじゃなくて、他もやればいいのに」

「ジャニーズ系とかAKB系とか、見習ったらどう」

これらの声を見て“おや!?”と思った。勘違いしている人が多い気がする。何が勘違いかというと、これは、『警視庁から、“遺児の方々をコンサートで楽しませたい”という依頼をももクロが引き受けた』

という流れなのだ。つまり、ももクロ陣営が企画したわけではない。

報道を見ると、ももクロ陣営が遺児を招待したと受け取られそうだが、よーく聞くと、アクションを起こしたのはあくまでも警視庁なのである。だから、決してももクロが手柄を上げたわけでもないし、他のアーチストを貶めるのは可哀そう。これは誤解しないでほしいところだ。

なぜ、ももクロが選ばれたのか?

この記事は“誤解しないで”と、それだけ言いたくて書いたのだが、これで終わりじゃつまらないので、ちょっと考察する。

警視庁が、遺児という複雑な境遇の子どもたちに楽しんでもらおうと企画したコンサート鑑賞なのだが、協力を依頼したのが、なぜももクロだったのかである。こういったお役所仕事というのは、私達が思っている以上にリサーチを入念に行う。トラブルや不満が出るなど結果が“失敗”と評価されたら風当たりが強いからだ。

招待された子どもや保護者の中には、ももクロのファンでもなく全く興味がない人もいただろう。女の子ならジャニーズ系、男の子ならAKB48や乃木坂46の方がテレビの露出が高く、CDのセールスからすると歌を耳にする機会は多いはずなので認知度は高いかもしれない。

しかし、ももクロのコンサートを選択したのは「初めてでも、歌を知らなくても、年令性別関係なくみんな一緒に楽しめるだろう」と判断したからではないかと思う。

ももクロのファン層は広い、小さな子供から90代のお年寄りまでライブ会場へ足を運ぶ。一言で言えば、アットホーム感が強いのだ。

ライブに関しては、声援の送り方が簡単でわかりやすい。ももクロは、メンバーが4人と少数でそれぞれカラーが決まっていて、百田夏菜子(赤)、玉井詩織(黃)、佐々木彩夏(ピンク)、高城れに(紫)とわかりやすい。お気に入りのメンバーの色のTシャツを来て、その色のペンライトを曲に合わせて振れば、それだけで面白いし楽しいはず。曲に合わせたコールも、基本的に歌うパートの名前「かなこ~!」「あーりん!」などと叫ぶパターンが多く、周囲のコールを聞いて真似ればいい。

それを、3万人一体となって行うなんてなかなか体験できないことだ。カラフルなペンライトが一斉に振られる光景を目の当たりにしたら、“楽しさの衝撃”を受けるはずである。

曲にも秘密が?

これは、私のうがった考えかもしれないが、ももクロの曲全体のイメージも良いと思うのだ。

ももクロの曲は150以上あるが、「元気出していこう!」「頑張れ!」というアゲアゲホイホイな励ます曲はあっても、「もうダメだ」「諦めた」という落ち込んだり傷ついたりする絶望的な曲はない。片思いや初恋など恋愛の切ない気持ちを謳う曲はあっても、失恋や破局の悲しい曲はない。付け加えてエッチな内容の曲もない。

つまり、基本的にネガティブ要素がなくポジティブオンリー、前向きしかない。ももクロの活動コンセプトは「笑顔を届ける」だということを考えれば、遺児たちに最良のエンターテイナーであるといえる。

近年、日本列島を震災や天災が毎年のように発生している。ももクロもライブ会場で義援金をお願いするといった支援活動を行うことがあるが、そんな時のステージでよく歌う曲がある

 【ニッポン笑顔百景!】それにはこんな歌詞がある。

「笑おう 笑おう さあ笑いましょう

 こんな時代こそ笑いましょう

 笑おう(ソイヤソイヤ)

 泣いたら負けだ

やけくそ笑いましょう」

笑う門には福来るという言葉を描いたような、どんな時でも何があっても笑顔で行こう!というただただ明るい曲。本当に大変な人の中には「ふざけんな」と憤慨する人もいるかわからない、でも、ももクロは決まってこの曲を歌う。今回のももクロマニア、7月に西日本を襲った豪雨被害に遭った方々、招待した遺児の皆さんへのメッセージも含めてか意図は定かではないが「ニッポン笑顔百景!」を歌った。きっとみんなに笑顔が浮かんだはずである。

ももクロは、関東エリアを中心に数年前から警視庁・警察庁主催の様々なキャンペーン・イベントにゲストとして呼ばれ、またいくつかの所轄警察署などで一日署長に任命されるなど貢献度は高い。このようなイベントには必ず大勢のファンが足を運ぶが、特にももクロファンはマナーが良いとされ、その評価が噂に違わないことから高感度も高いはず。

つまりは、総じて「子どもが参加するに最もふさわしいコンサート」として、ももクロに遺児招待コンサートの白羽の矢を立てたのだろう。

最後に、今回の活動の協力後、ももクロは警視庁から感謝状を贈られているが、その事もそしてコンサート遺児招待の件も警視庁広報からの情報のみで、ももクロサイドからは何も発信していない慎ましさを付け加えたい。

この記事が気に入ったらいいね!しよう

放送作家 石原ヒサトシ
この記事を書いた人

放送作家 石原ヒサトシ

放送作家 「クイズ雑学王」、「ボキャブラ天国」等 バラエティを中心にイロイロやってきました。なんか面白いことないかなぁ~と思いながら日々過ごしています。野球、阪神、競馬、ももクロ、チヌ釣り、家電、クイズ・雑学、料理、酒、神社・仏閣、オカルトなことがスキです。

放送作家 石原ヒサトシが書いた記事

あなたへのおすすめ

カテゴリー記事一覧

pagetop