最近、ネット上では子供にはシュールすぎるトラウマ絵本が話題ですが、その元祖的な存在でもあるのが鈴木のりたけ様の「ケチャップマン」でございます。
こちら2008年に出版後、絶版になっておりました。しかし、時代がやっと追いついたのか大人絵本ブームもあってか、おととし11月に復刊され話題になった作品でございます。
そもそも、鈴木のりたけ様とはどんな絵本作家なのか?
子どもにトラウマになりそうなシュールな作品ばかりを描いているアウトロー絵本作家なのか…。…
違います。子どもたちに人気の仕事の現場をじっくりと取材、大人も釘付けにする笑いのセンスも織り交ぜつつ描く「しごとば」シリーズで大ブレイク!
さらに、「す~べりだい」など遊具シリーズも大人気。最近では、「とんでもない」がMOE絵本屋さん大賞2016で第4位に。MOE絵本屋さん大賞でも常連の大人気絵本作家様でございます。
ちなみに、絵本作家の前の職業はグラフィックデザイナー。その前はなんとJR東海にお勤め、新幹線の運転もされておりました。絵本の中に出てくる乗務スケジュールは、実際にご本人が経験したものを参考にされているとか。
そんな人気絵本作家、鈴木のりたけ様のデビュー作が「ケチャップマン」だったのございます。絵本ファンの間では、幻のデビュー作として有名でございました。他の絵本と比べると少し違和感を持たれる方もいらっしゃるかもしれませんが、根底に流れる笑いのセンスは変わっておりません。ただ、かなり大人向けでシュールなだけでございます。
ところが!最近になって、復刊された「ケチャップマン」と絶版になった初版の「ケチャップマン」は、かなり内容が変わっているという情報を入手したのでございます。こちらが、その初版の「ケチャップマン」でございます。
版をかえるタイミングで絵や表現(テキスト)が変わるケースは稀にありますが、小生がチェックしたところ、この作品はそのレベルではないかと…。是非、みなさまにも間違い探しに挑戦して頂きたい!間違い探し絵本としても存分に楽しめるはずでございます。出版社も文芸社ビジュアルアートからブロンズ新社に変わり、絵本の判型(大きさ)も変わっております。
原画を描き足した部分もございますし、テキストもかなり変わっております。
絵の構成やレイアウトもかなり変わっております。そして、一番の発見は、読み比べると、かなり印象が違うのでございます。絵本にとって、いかに絵のレイアウトやテキストが大切なのか、改めて教えてくれる2冊でございます。
ただ、初版のものは希少本としてAmazon等でも高値がついております。図書館にはよっては、初版の方の「ケチャップマン」が置いてありますので、そちらで確認されるのも手かと。そうそう、内容ですが…。
ごく一般的な青年が仕事の理想とギャップに悩みながら少しだけ成長していく物語でございます。ただ、この青年は人間ではなく、ケチャップでございます。ネットで検索するともっと詳しくでてまいります。
余談ですが…、本当に余談です。
小生が大好きなJ―WAVE(FMラジオ)の「BOOK BAR」という大倉眞一郎様と女優の杏様がナビゲーターを務める、本を紹介する番組でも、この「ケチャップマン」が取り上げられておりました。
そして最後になりしたが、タイトルの「初版は容器の中が空っぽだった!」ですが、2冊を比べると表紙の絵もかなり違っております。初版の方は中身が空っぽになっております。さらに、タイトルの文字の部分等も変わっております。
ちなみに、最後のページでは、絵は同じですがテキストがなんと!!
まず初版では「ケチャツプ容器でこの容姿 個性が生かせる場所探し そんなの悩む暇もなし」。これが復刊されると、「・・・・・」に。(購入もしくは書店、図書館でご確認くださいませ)。
言い回しが違うレベルではございません。悲壮感漂う問題提示型社会派絵本からハッピーエンド感すら感じられる子供向け絵本に衣替えされているのでございます。もし、興味を持たれ方いらっしゃいましたら、お手数はかかりますが、是非、比較頂ければと思います。
(文:N田N昌)