2022年9月に静岡県内の認定こども園で起きてしまった「3歳園児バス置き去り事故」の報道はまだ記憶に新しい。政府は、2023年4月から通園バスに安全装置の設置を義務づけるなどの緊急対策を取りまとめているが、半年近く先のことになるため、各園の対応にはばらつきがあり、保護者からは不安の声も上がっているという。
このような事態を受けて、民間企業や個人の間でも園児の置き去りを防ぐために、様々な支援の動きが始まっている。 その一つとして、中古車の販売や買取を行う「Gulliver(ガリバー)」を運営するIDOM(イドム)が、東京都板橋区にある製造業オクト産業と協力し、幼稚園・保育園・認定こども園などの事業者を対象に、通園バス100台に安全装置(置き去り防止ブザー)の無償取り付けを開始した。
10月28日に第一号が東京都世田谷区と福島県郡山市にある園の送迎バスに取り付けられることを聞き、筆者も世田谷区に足を運ぶことにした。
安全装置を取り付ける様子
IDOMという社名は聞きなれないが、中古車の販売や買取を行う「Gulliver(ガリバー)」といえば知らない人はいないのではないか?
Gulliverを運営するIDOMはこれまでも移動に関わる社会貢献を行ってきた企業で、コロナ禍では移動が困難になったエッセンシャルワーカーなどを対象にIDOMが保有する車両在庫の一部を無償で提供している。今回は支援策の第2弾という位置付けになる。
取り付け前の安全装置
安全装置の仕組みは非常にシンプルで、通園バスのエンジンがオフになると車内後方に取り付けられたブザーが起動。社内外に警報音が鳴り響く。運転手が後部座席まで歩いて行って、手動で電源を切るまで警報音は止まらないため、運転手の目が車内の隅々にまで届くようになるというものだ。
事故発生からたった1週間での試作機開発。発案者の強い想いに共感
発案者の畑中洋亮さん、IDOM プロジェクト担当の植本一生さん
痛ましい事件が起きてしまってから、約2ヶ月という短期間でスタートしたこの取り組みは、元々3人の子どもの父でもある、畑中洋亮さんが思い立ち東京都板橋区にあるオクト産業に依頼したことが始まり。なんと思い立ってから約1週間で試作品を完成させたそうだ。
しかし、完成させてからの課題として立ちはだかっていたのが「どうやって全国のこのシステムを広めていくのか?」という点だった。そこで日本全国で中古車販売などの店舗を運営しているIDOMが立ち上がり、オクト産業と連携して今回の連携につながった。
IDOMのプロジェクト担当の植本さんは、「置き去り事故を受けて、我々としてもいち早く全国に届けていきたい、という思いがありました。今回は畑中さんが発案し、オクト産業さんが形にした安全装置を、私たちの強みでもある全国のGulliver店舗を使って、世の中に広めていくことで、移動への不安を少しでも軽減させて行きたいです」と語った。 取り付けを希望する事業者は、IDOMのWEBサイト上に掲載された申し込みフォームにて詳細を記入。
IDOMの担当者とやりとりを行った上で、設置が正式に決まり次第、指定のGulliver店舗での設置の案内があるとのこと。
「子どもの命を預かっている」ドライバーへの負担軽減にも
「HILLOCK(ヒロック)」初等部のスクールディレクター蓑手章吾さん
安全装置第一号が設置された東京都世田谷区の教育機関「HILLOCK(ヒロック)」初等部のスクールディレクター蓑手章吾さんは、「運転手さんには子どもたちの安全を第一に、相当なプレッシャーの中で日々業務に当たっていただいている。業務への負担が増えれば増えるほどヒューマンエラーのリスクも増加することを踏まえると、このような安全装置の導入は、子どもたちの安全の担保はもとより、運転手さんの負担軽減につながるのではないか?」と、期待を寄せていた。
安全装置の設置の申し込みは、ガリバーの問い合わせフォームから
取り付けを希望する事業者は、IDOMのWEBサイト上に掲載された申し込みフォームにて詳細を記入。IDOMの担当者とやりとりを行った上で、設置が正式に決まり次第、指定のGulliver店舗での設置の案内があるとのこと。
申し込み/問い合わせフォーム: https://docs.google.com/forms/d/1PbtHdEwSR6qY42rftASbpc2rYdQFlg_4bxBZ2T8RGGI/edit