正しく使っても意味が通じないかも… 間違った日本語ブームまた来るか?

2016/06/21
放送作家 石原ヒサトシ

昨年末あたりから日本語に関する書籍が多数出版され部数を伸ばしています。

また先日、gooランキングで「ほとんどの人が実は間違って使っていた日本語ランキング」が発表されて話題になりました。

もしかしたら、再び“間違った日本語ブームが来るのでしょうか?”

ちなみにランキング上位を見ると…

1位 爆笑
◯大勢が笑う
×
大笑いする
補足)「大笑い」は1人で笑う事。大笑いしている人が大勢一緒にいたら「爆笑」。


2位 フレンチキス
◯舌を使った熱烈なキス
×
軽い唇だけのキス


3
位 敷居が高い
◯相手に不義理などをしてしまって行きにくい
×
高級すぎたり上品すぎて入りにくい、とっつきにくい


4
位 元旦
◯元日の夜明けから明け方
×
元日、11
補足)ちなみに、「旦」という字は水平線に太陽が昇る様。

 

5位 微妙
◯趣深くなんともいえない美しさがある様子
×
よくもなく悪くもなくイマイチ


6
位 姑息
◯一時しのぎ
×
卑怯


7
位 性癖
◯性質上のかたよりやくせ
×
性的嗜好


8
位 辛党
◯甘いものより酒が好き
×
めっちゃ辛い食べものが好き


9
位 複雑骨折
◯骨が折れて皮膚を突き破った状態
×
複雑に骨折して骨が粉々になったり潰れた状態


10
位 割愛
◯惜しい!と思いながら省略
×
単に省略すること

2位の「フレンチキス」は日本語じゃないのでランキングに入れるのは間違っている気がしますが(笑)。にしても、文章を扱う仕事に携わりながら、ご指摘のように間違って使っている言葉もありドキッとしました。

これでも気をつけているつもりですが、不勉強ですね。

 

言葉ひとつに対し特に敏感になったのは、間違った日本語を問い質すのがブームになった2004年頃でしょうか。

『問題な日本語』(北原保雄著)が話題になり、テレビでは「タモリのジャポニカロゴス」(フジテレビ)等の番組がスタート。

出典 http://www.fujitv.co.jp/b_hp/japonicalogos/

 

その後も日本語やカタカナ語などの本来の意味、正しい使い方を取り上げる番組がけっこう増えました。

 

よく聞いたのが

○「押しも押されもせぬ」

×「押しも押されぬ」

どこへ出ても圧倒されることがない。力があって堂々としている。という意味。「押すに押されぬ」なら合っているけど、変に簡略化され誤用が増えたみたい。

 

○「汚名返上」「名誉挽回」

×「汚名挽回」

2つの四字熟語がごっちゃになって誤用されるようになった。よく考えたら汚した名を挽回してどうする?って事になります。

(ちなみに ×「四文字熟語」 ○「四字熟語

 

この2つ、今でもたまに聞きます。最近、雑誌の表紙に「押しも押されぬ」が堂々と書いてあってガッカリしました。


こういった間違って使われる日本語は、会見やスピーチでもよく耳にするほど…

 

よく耳にする2つの間違った日本語

ちなみに、巷でよく耳にする言葉で「それ間違ってるのに」とよく思う言葉が特に2つあります。

「ご賞味下さい」

CMや広告でもよく使われていますよね? 

冒頭で紹介したランキングでは20位に入っていて、

 

○よく味わって食べてくださいね

×食べてくださいね

 

と説明してあるのですが、言語学者・金田一秀穂先生による説明だとこれはちょっと違うようです。

 

本来、「賞味」とは自分がするものなので、「賞味して」と人に対して発する言葉ではないとのこと。

だから正しい使い方は、食べる自分が「賞味いたします」等

人に食べるよう促すなら正しくは「お召し上がり下さい」(召し上がれ)等が正しいそうです。

 

もう一つ、よく聞く言葉

「ご遠慮ください」

これも本来は間違いだそうです。

遠慮とは、自分がするもので「遠慮しろ」と人に言う言葉ではありません。

だから「遠慮します」と自分が使います

“やめて欲しい”と人にお願いする際の言葉として適当なのは「お控え下さい」(控えて)が当てはまるそうです。

 

でも、日本語は変化する

今挙げた2つに“本来”と前置きしたように、もう一般化して間違った意味が通じてしまっているのなら、“だったら良いのでは?”という考え方も学者の間では実際にあるようです。

言葉が進化し本当とは違う意味が一般化したら変えざるをえない場合も出てくるでしょう。

 

それは、実際にあります。

例えば「素晴らしい」という言葉。

 

一般的に「とても優れている」というポジティブな意味で使っていますが、

実は元々「ひどい」「とんでもない」という悪い意味で使われていました。

 

1923年(大正12年)関東大震災を報じる新聞に掲載された無残な街の写真に「素晴らしい被害」と見出しがあったそうです。

 

【素晴らしい】の語源は、「狭くなる」「縮まる」という意味の動詞「窄る(すばる)」。これが形容詞化されて「素晴らしい」になったそう。

意味が逆転していったのは「晴」という字が、空が晴れ晴れ・清々しい、というイメージを連想させ誤用が増えたのだと推測します。

 

『あの素晴らしい愛をもう一度』という歌謡曲がヒットしたのが1971年なので、大凡50年も経たない内に意味が変化し根付いたことになります。

 

正しい日本語なんだけどな~

となると、今回のgooランキングに入った、間違って使っていた日本語を正しく使ったとしても逆に相手に伝わらず、それどころか「意味がおかしいだろ?」と憤慨される恐れすらあります。一体どちらが正しいのやら?ってことになりますね。

 

日本語は面白い

日常的に使う文字が、ひらがな、カタカナ、漢字の3種類を使い分ける国は日本だけとも言われています。また外来語をアレンジして和製にしたり、あて字にしてさも日本語のように作ったりもする、凄く変わった国なのだそうです。

新しい言葉が作られればその意味も生まれるわけで、言葉と使い方は今後益々増えることになります。

 

「ググる」「ディスる」「おしゃかわ」「かまちょ」「じわる」「つらたん」

最近作られた若者用語も何年後かには一般的として国語辞典に載るかもしれません。

更に何十年後かには進化して

「ディスるのディスはthisじゃありません!」

「え~~!?」

みたいなリアクションが返ってくるような変わった意味で使われる可能性もあります。

 

ここまで記事を書いてきて、違う使い方、間違えた日本語があったらとても恥ずかしいので謝っておきます。

「すいませんでした」…あ、間違えた

「すみませんでした」

 

 

< 取材・文 / 放送作家 石原ヒサトシ >

この記事が気に入ったらいいね!しよう

放送作家 石原ヒサトシ
この記事を書いた人

放送作家 石原ヒサトシ

放送作家 「クイズ雑学王」、「ボキャブラ天国」等 バラエティを中心にイロイロやってきました。なんか面白いことないかなぁ~と思いながら日々過ごしています。野球、阪神、競馬、ももクロ、チヌ釣り、家電、クイズ・雑学、料理、酒、神社・仏閣、オカルトなことがスキです。

放送作家 石原ヒサトシが書いた記事

あなたへのおすすめ

カテゴリー記事一覧

pagetop