日本人女性の約5人に1人が悩まされているという「貧血」。世界保健機関(WHO)は生殖年齢の女性の貧血を減らすことを目標に掲げていますが、日本の生殖年齢の女性は貧血の割合が他の先進国より高いことが報告され、対策が急務となっています。
そんな中、貧血の実態を調査した論文「日本における貧血の割合、治療状況、また貧血患者における医療費、生活の質(QOL)、生産性損失」が発表され、日本新薬が「貧血患者の85.3%は無治療」「貧血患者の全国の年間生産性損失は推定1兆1,300億円」などの実態を指摘しました。
貧血は、疲労感、頭痛、血の気が引く、運動時の息切れなど、さまざまな症状を引き起こすことが確認されています。同論文によると女性の約20.8%(約5人に1人)、男性でも約9.1%(約10人に1人)は「貧血」であり、さらに年齢別に細かく見ていくと64歳までは女性のほうが男性より有病割合が高いことが分かりました。また、併存疾患等の影響を含むものの、貧血の人における生産性損失は推定1兆1,300億円という結果が算出されました。
貧血は経済的損失にもつながる恐れがありますが、日本における貧血有病割合は15.1%(約1600万人)と推定され、そのうち55.3%が未診断となっていることが明らかに。さらに、貧血と診断されても85.3%の人は無治療であり、貧血の人は、貧血でない人と比較して1カ月の超過医療費が1万7,776円多く、全国の年間過剰医療費は推定3兆3,200億円となっています。
■貧血とは
貧血は、赤血球の数やその中のヘモグロビン濃度が正常より低い状態であり、臓器や組織に酸素を運ぶヘモグロビンが不足することで起こります。症状は多岐に渡り、疲れやすさ、めまいや立ちくみ、頭痛、動悸、息切れ、顔面蒼白、作業量の減少などがあげられます。最近の研究では、貧血と精神疾患(不安障害、うつ病、睡眠障害)との関連、妊娠中および産後の貧血では早産、低出生体重児、産後うつとの関連などが示唆されています。