人生一度きり、夢を忘れず棺桶に納まるまで夢を見ていたいもの。世界一周旅行をしたいとか高級珍味を食べたいといった夢は時間と財があればなんとか叶いそうなものですが、そうもいかないのが職業。いわゆるプロ。ルール上、年齢制限の上限がありいくら願ってもそれを超えれば諦めねばなりません。
そこで今回はそんな厳しくも優しい(?) ”その道の年齢制限”を紹介します。
警察官
名作ドラマ『踊る大捜査線』の主人公・青島俊作は大学卒業後、民間企業に就職。その後、憧れを叶えるため脱サラ警察官になりました。年齢設定は20代半ばとなっています。では現実世界での警察官採用試験の年齢制限は何歳までとなっているのでしょうか? 調べてみると大卒程度の場合、神奈川県警は35歳、福岡県警は30歳、埼玉県警は29歳と各県警によって様々。警視庁は35歳未満となっています。(いずれも令和2年)
漫画家
漫画家としてプロデビューするにはたくさんの方法がありますがそのひとつに漫画賞を受賞する、があります。主だった漫画賞の応募資格を見てみると年齢不問がほとんどですが、その実、将来性を考えそれなりに若い作家の作品が賞に引っかかるようです。そんな中、あえてアダルトな年齢の作家にも門戸を開いているのがグランドジャンプ新人賞「R30漫画賞」。上記の様に20代が重宝がられる漫画家ですが30代の作家のために立ち上げた賞なんだそう。実際過去13回で30代、中には40代の作家が各賞を受賞しています。
また、若手漫画家支援プログラム「トキワ荘プロジェクト」。漫画家を志す若手に安価で住居を提供したり、勉強会を開いたり、仕事を紹介したりとサポートする事業ですが、入居申し込みを見てみると35歳までとあります。
お笑い芸人
名乗ってしまえば誰でもお笑い芸人。プロとアマのラインを事務所所属としたならば、それぞれの事務所で条件はあるでしょうが年齢の上限はあってないようなもの。
そんなお笑い芸人が、名を売る手段として参加するのが大きな賞レース。これには年齢制限はあるのでしょうか?例えばR-1ぐらんぷり、The W、キングオブコントなどは年齢、芸歴問わずエントリーできます。しかしM-1グランプリは条件が存在します。かつて「結成から満10年以下」という出場資格がありました。これは企画を立ち上げた島田紳助氏が10年やって一定の結果を残せなかったら辞めた方がいいという考えに基づくもの。芸歴なので年齢で判断するものではありませんが高卒ですぐ漫才師になったのなら28歳、大卒なら32歳、社会人経験者ならプラスアルファ……。ただ養成所で結成した芸人は卒業後から芸歴をカウントしている人が多いようです。ちなみに王者で最高齢だったのはますだおかだの岡田さんで当時34歳です。
M-1は第1回の2001年から一旦幕を下ろした2010年の10回までは上記の条件でしたが、復活した2015年11回から「芸歴15年以下」と条件が緩和されました。
相撲取り
新弟子検査を通過し所属する親方の申請によってなれる力士。義務教育修了や体格などの条件はありますが、もちろん年齢制限もあります。上限は一般で23歳未満。また日本相撲協会が指定する社会人や大学のアマチュア大会で一定の成績を収めた人は25歳未満も認めているようです。
プロ棋士
藤井聡太棋聖の登場で注目が増している将棋界。彼は14歳2カ月で最年少プロ棋士となり話題になりました。さてそのプロ棋士になるになるためには日本将棋連盟の奨励会に入らなければなりません。入ったあとでも21歳までに初段、26歳までにプロ入りとなる四段になれなければ退会。プロとしての活動が閉ざされます。この年齢で足切りした理由は明文化されてはいないようですが、一説には実力を最大に発揮できるのが20代中ごろだから、諦めても社会復帰できる年齢だからなどと言われています。
さてその将棋界、26歳までと厳しい条件ですが、それをはるかに上回る年齢でプロ棋士になったのが今泉健司五段。初めて奨励会に入ったのが14歳のときでしたが、規定の条件をクリアできず退会。その後、社会人となりますがプロ編入制度にチャレンジし合格。ところがここでもクリアできず2度目の奨励会退会。それでもあきらめず編入制度にリベンジし合格。好成績を上げ四段に昇段、年齢は41歳でした。そんな遅咲きで苦労人、戦後最年長でプロ棋士となった今泉五段、2018年のNHK杯で藤井七段を撃破。「最年長ルーキーが最年少ルーキーを破った」と話題になりました。
何かの職業に就く場合、若ければ若い方がいいというのは当然ではありますが努力と熱意があれば今泉五段のように夢が成就することもあるかもしれませんね。ただやはりそれはごく一握りの人たち。それを知っているからこそ先人は優しさで年齢設定をもうけたのだと思います。