2020年の東京オリンピックなども控え、ますます目まぐるしく変化する都市・東京。中でも渋谷という場所は、まさに秒単位で変化を遂げている、時代の最先端を行く都市といっても過言ではないでしょう。
そんな渋谷で、この度ソニーと東急電鉄、そして写真のノーベル賞ともいわれるハッセルブラッド財団国際写真賞を受賞した世界的な写真家、森山大道氏によるアート共創プロジェクト『SHIBUYA / 森山大道/ NEXT GEN』が、6月6日よりスタート。
これに伴い東京・渋谷モディの1Fにあるソニースクエア渋谷プロジェクトにて写真企画展『TODAY is -Next Generations of DAIDO MORIYAMA-』が始まりました。今回はこの会場の様子をお送りいたします。
ソニー ブランド戦略部の森繁樹さん
渋谷といえば、多くのアーティスト、クリエイターが集う場所であり、新たなアートを生み出すポテンシャルを持つ場所でもあります。そんな渋谷で、このプロジェクトでは大きく2つのイベントを実施します。
一つは、都市型のアートエキシビション。これは、公募で選ばれた次世代クリエイターの作品を、渋谷駅周辺で開催されるアートエキシビションにて展示するというもの。6月より募集を開始、7月のレビューを経て審査、そして8月にエキシビションで選ばれたクリエイターの作品が展示公開されます。
一方、『TODAY is -Next Generations of DAIDO MORIYAMA-』では、デジタルネイティブ世代でもある8人の新進気鋭のフォトグラファー達が、「TODAY=今」をテーマとして「渋谷の今」を映した作品を毎日更新しながら展示、合計で400枚以上の作品がこの会場で披露されます。この展示は、森山大道氏のスナップ写真に対する考え方の一つ「量のない質は無い」という言葉を具現するものとして企画されたとのこと。
なお、ここではInstagram連動プログラム『SHIBUYA PHOTO SCRANBLE』を同時開催。客が撮影した写真をInstagramに投稿、この写真が同会場に設置されたモニターに展示される『SHIBUYA PHOTO SCRAMBLE』に映し出されるというもの。一般の方にも「TODAY is」を体感いただけるプログラムとなっています。
この日は、8人のフォトグラファーの中の6名、草野庸子さん、市田小百合さん、小林健太さん、山谷佑介さん、河合穂波さん、三保谷将史さんが挨拶に登壇。渋谷に住まいを構える草野さん、小林さんは、このプロジェクトの参加で、これまで日常としてかとらえる機会のなかった渋谷という場所に向き合うことで、様々に新たな発見を得られたと振り返ります。
左から三保谷将史さん、河合穂波さん、山谷佑介さん
また山谷さんは渋谷に対し“13年くらい、遊びに来る場所”というスタンス、どちらかというと新宿や池袋みたいな“土着型”の場所と比べると、あまりにも変化が速すぎて、強い印象がない、という思い。大阪在住の三保谷さんは、過去に東京に住んだ経歴がある中で、渋谷は“人混みが苦手だったので、あえて避けていた”という場所だったといいます。何となく渋谷という場所に強い興味を持たれた覚えがないお2人ですが、だからこその視点で今回この場所に向き合った、というところに面白さが感じられます。
左から小林健太さん、市田小百合さん、草野庸子さん
一方、それぞれのフォトグラファーによる作風の違いも、この展示の面白さであります。現在、海外を拠点に活動されている市田さんは、日本にいる際には渋谷を生活圏内としたこともあり、その時の渋谷を印象に持つ中で、現在一時帰国するたびにその目まぐるしい変化より、自分がアウトサイダー(よそ者)となった感覚に陥ることがあるといいます。そして今回は、その視点を面白く切り取れたらと、望遠レンズを使用し、自分が傍観者であるという視点から作品を作りあげたといいます。
また川合さんは、普段の作品作りで使用している高性能で大きめのカメラとは対照的に、今回はソニーより借用したハンディーなデジタルカメラでの撮影ということもあり、ストリートスナップに挑戦。日常ではよく動画の一部をスナップショットとして切り取り作品にするということもあり、このチャレンジでは、渋谷という町の現在を動画、そしてそこでスナップショットを切り取る気持ちで作品を作っていったといいます。
『SHIBUYA PHOTO SCRANBLE』モニターの様子
また、期間中には気鋭のフォトグラファーと未来のクリエイターである学生との交流・育成の場として、ソニーのカメラを使用したストリートスナップのワークショップなどを実施予定。写真に興味があり、実際にフォトグラファーと話をしてみたいという方には、絶好の機会となるでしょう。
近年はカメラも手軽かつ高性能なものが安価で手に入り、アマチュアでも鮮明な写真を撮ることも容易になってきておりますが、例えば今回のテーマのように、場所やタイミングなどそれぞれの人が持つ感性と照らし合わせて、どんな画が作り出せるかなどと考えると、また一つカメラの面白さを得ることができるかもしれません。今回のこのプロジェクトは新たなクリエイターと、その作品を見出す場でありますが、同時に多くの人に対して、カメラというものに対して一つの可能性を見出す場ともなるでしょう。