名作を連発する北欧ミステリー映画界の中から、トンデモ系な異色作品が日本到着で泡食ってます。それが、 観ちゃいけない雰囲気満載の映画『ボーダー 二つの世界』。
ちょっとヤバい映画を観ちゃった感があるんですけど、そのヤバさをご紹介します!!実際に、各国の映画祭で上映され、カンヌ国際映画祭の「ある視点」部門でグランプリを受賞しているものの、「ショッキングすぎる」と話題に。所が、日本ではオリジナルの意向を尊重し、ノーカット完全版で無事、公開に漕ぎ着けました!!
野獣女の特殊能力!!
舞台は港町。主人公は野獣顔の女性ティーナ。彼女は船の発着所の税関職員。日夜、激悪の目つきでゲートを通過する人々を凝視。歯をむき出しに、鼻をクンクン。なんと彼女は匂いで相手の感情を読み取る事ができるんです。ビジュアルを裏切らない野獣のような能力!! そんなX-MEN並みの特殊能力を活かし、酒を隠し持つ若者を見抜いたり、ビジネスマンから児童ポルノの入ったメモリーカードを没収したりと的中率は100%!! さらに野獣度を上げるのは、森の中でキツネやトナカイに話し掛けたり、車を運転中に鹿が通るのを先に察知して停車したりと、ファンシー感ゼロのディズニーみたいなお方。いや、この後の展開を考えると、実は『もののけ姫』に近いんですけどね。
ある男との出会いが……そんなある日、発着所に現れた髪も髭もボサボサ、服もボロボロの旅人ボーレ。ボーレも負けず劣らずの野獣顔。この2人の出会いのシーンがとても良いんです!!セリフはほぼ無いにも関わらず、匂いを嗅ぎ合う本物の野獣のようなファーストコンタクト。沈黙の間や表情で、お互いに何かを感じ取った様子がよく表現できてるんです!!勿論、メチャ怪しいビジュアルなボーレはティーナじゃなくても呼び止めるレベル。所が、荷物検査をしても何も怪しい物は持ってなかったんです。しかも、ボーレには、このビジュアルからは解る訳がない驚きの秘密が!!
実は、会話は伏線だらけ!!
宿泊先を知ったティーナは、後日、柄にもないスカートでオシャレして、ボーレの元へ。お互いの話をしていく2人。そこで2人には、野獣顔以外にいくつかの共通点があると発覚。2人は尾てい骨の辺りに傷痕があり、さらに雷に当たった事があるというレア経験の持ち主なんです。全く訳の解らない、この二つの共通点や前半の会話部分は後半以降の伏線になっているので、要チェックです!!そして、何より上手いのは、主人公のティーナが旅人ボーレの正体を知っていく上で、自分自身が何者なのかを知っていく構成。さらに、その真実を知った上で彼女のとる行動は?自らのアイデンティティと道徳観の間で、決断を迫られていく事になります。原題は『Grans』。カタルーニャ語の「大きなもの」の意味らしいんですけど、邦題の『ボーダー』ってのが何重の意味にも重なってて、唸らされます。
ジャンルのゴッタ煮!!
淡々と生活を写し出し、内面を浮き彫りにしていく演出なんですが、ミステリーであり、ホラーであり、ファンタジーでもあり、サスペンスでもあるというジャンルのゴッタ煮。それがパンチの効いたビジュアルとグレーで統一されたカラーにベストマッチ!! 警察に協力して、児童ポルノ業者の摘発を手伝うミッション要素も追加!! ヤバい映像を観ちゃった感が煽られまくります!! そして、主人公の特殊能力の理由が明らかに!! 映画『ボーダー 二つの世界』は明日10月11日から全国公開です。
映画『ボーダー 二つの世界』
2019年(スウェーデン・デンマーク合作映画)
原題:Gräns
監督:アリ・アッバシ
キャスト:エヴァ・メランデル、エーロ・ミロノフ、ヨルゲン・トーソン、アン・ペトレン、ユテーン・ユングレン
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