ラグビーの“トライ”は点が入るのに、なぜ“挑戦(TRY)”なのか?

2016/03/02
放送作家 イチカワ
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ラグビーマガジン
ベースボール・マガジン社

 

日本チームの参戦で話題のスーパーラグビーが、2月26日に開幕した(日本の開幕戦は2月27日)。そこで、ラグビーの話題になったとき、さらっと披露できる話をひとつ紹介。

 

それは「“トライ”は点が入るのに、なぜ“挑戦(TRY)”なのか?」ということ。5点も入るのに、なぜ挑戦だなんて呼ばれているのか?調べてみると、ラグビーが誕生する前に、理由があった。

 

ラグビーの原型は、1点取ったら勝ちのお祭りだった

ラグビーの原型は、数百年前からイングランドで行われてきた、地域のお祭りとされている。ルールはひとつで、設定したゴールへ、先にボールを運んだ方が勝ちというもの。

 

例えば村全体をフィールドに、村人が東側と西側に分かれて、数百人対数百人で、押し合いへし合いボールを運ぶ。手も足も使ってOK。

 

反則は特になかったようで、ケンカしたり、家を壊したりとやりたい放題。決着がつくまで2日も3日もかかることもあり、途中でごはんを食べたり、居酒屋に入ってお酒を飲んだりと、まさにお祭りだった。

 

試合を終らせないために、トライのあとに難しいキックをつけた

当時の人たちは、そんな祭りが楽しくてたまらないから、祭りが終わってほしくなかったという。そこで人々は、どうすれば祭りを長引かせられるのか考えた。

 

試合を終らせない方法……そうだ、点が決まらなければ終わらないじゃないか!というわけで、各地で“点が決まりにくいローカルルールが作られた。

 

例えば「ボールを運んだあと、距離の長いゴールキックを決めたら勝ち」とか「ボールを運んだあと、投げたボールをボレーシュートでゴールを決めたら勝ち」とか。ボールを運び込むだけでは、得点にならないようにした。

 

「トライ」は実際に“挑戦”権を得るためのプレーだった

そんなお祭りの名残が、そのまま、得点を取り合う形になって19世紀のラグビー競技の得点ルールになった。トライは0点で、トライ後のキックをゴールに決めて1点。つまりトライは、キックの“挑戦”権を得るプレーだった。

 

ちなみに、トライ後のキックは『コンバージョンキック』と呼ぶけれど、コンバージョンは日本語で“変換”という意味。トライで“挑戦”権を得て、コンバージョンキックで得点に“変換”するってわけ。

 

トライの価値が上がって、言葉の意味が分からなくなった

トライでも得点が入るようになったのは1886年。イングランド発祥のルールで、

最初は3トライで1点だった。それ以降、1890年に1トライ1点、1891年に1トライ2点、そして1893年には1トライ3点と、トライの価値が一気に上昇。

 

トライ後のコンバージョンキックで得られる2点を上回ったことで、力関係が完全に崩れ、何がトライ(挑戦)なのか分からなくなってしまった。何ならトライがメインで、キックはボーナスのイメージ。本来のトライの意味とは逆だった。

 

というわけで、トライは点が入るのに“挑戦(TRY)”である理由は、『ラグビーの初期、トライはキックの挑戦権を得るためのプレーだったから』。

ラグビーの話題になったら、この話にトライしてみてください。

 

 

 

< 取材・文 / イチカワ >

 

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放送作家 イチカワ
この記事を書いた人

放送作家 イチカワ

放送作家。1979年生まれ。静岡県出身。 ゴールデン帯の情報バラエティ番組などを担当していますが、生活の知恵にも、人生の糧にもならなさそうなことでも、ふと気になったことを書いてしまうのは、仕方ないと思っています。

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