サラリーマンから叔父の事業を継承し、新企業を設立。しらすの佃煮の全国展開を目指して

2022/06/17
マガジンサミット編集部

今回、お話しを伺ったのは、マル伊商店株式会社の代表取締役社長 坂下史朗さん。なぜ社長になったのか、現在の仕事への想い、今後の展望について聞いた。

同社のある愛知県南知多町(みなみちたちょう)は、県の南部、知多半島の最南端に位置する、漁業が盛んな場所。特にしらすで知られており、その漁獲量は全国1位を誇る。同社では、主にしらすの佃煮類の加工をメインとし、その他、養殖魚の餌を手がけたり、人が食する加工用の鯖などの輸出などを行ったりしている。

坂下さんが設立した同社の前進は、叔父が行っていた個人事業所だった。その先々代の方が亡くなったのをきっかけに「サラリーマンを辞めて後を継いでくれないか」と言われ、快く引き受けたと坂下さんは話す。幼少期から工場(こうば)が遊び場であり、手伝っていたこともあり、「いつか誰かが継承しなければならない」という気持ちはあったという。

ところで、同社のしらすの佃煮は、生のしらすから作っているところにこだわりがあるという。多く獲れるしらすを目の前に、佃煮にできないかと考え、色々と試行錯誤した末に「生炊きしらす」の佃煮の製造を始めたという。

坂下さんが現在、仕事をする上で、最も大事にしているのは何かと尋ねたところ、「人」だと回答。特に大事にしているのは、人との連携やコミュニケーションだ。例えば、魚が揚がったときはかなり忙しく、鮮度が落ちないうちに素早く処理する必要がある。そこで重要になってくるのが人と人との連携だ。スムーズに連携を取りながら仕事ができるよう、日頃からコミュニケーションをとるように心がけていると話す。

これまでに「覚悟を決めた瞬間」はいつだったかを尋ねたところ、継承の話が来たときだと坂下さんは答える。サラリーマンとは異なり、経営者となれば、すべては自分の責任になる。当時は個人事業主だったため、事業を広げていくには会社にして、社会保障を取り入れていかなければ働き手も得られない。そもそも、しらす漁の時期は年間を通して限られているため、漁獲期とそれ以外の時期の忙しさのギャップが激しいこともあり、なかなか雇用が取りにくい。そのため、年間を通して常に仕事がある状態を作っていき、いかにして雇用を守るかというところが課題だったという。

また、坂下さんにとってのかっこいい大人を尋ねたところ、「いい人脈を持った大人」「人から慕われる人望を持った大人」と答えた。つまり、人のために行動のできる人だという。先述の通り、仕事においては、人とのつながりがとても重要だと実感しており、それができている人はかっこいいと坂下さんは述べた。

今後の展望として、坂下さんは、愛知県のしらす、そしてマル伊商店の生炊きしらすの認知度を全国に広めたいと話す。理想は、「しらすといえば愛知県。愛知県のしらすといえば南知多町。南知多町といえば生炊きしらす。生炊きしらすといえばマル伊商店」と言われるまで認知度を上げたいそうだ。それによって地域も盛り上がり、漁師たちのやる気を引き上げ、新しい雇用にもつながっていくのではないかという。

生炊きしらすは、10年ほど前に農林水産大臣賞を受賞したという。その受賞の理由は、生炊きという類を見ない製法が評価されたからではないかと話す。全国の人々に味わってもらえるよう、さらに生産量を伸ばし、全国のどのお店に行っても置いてあるような商品にしていきたいと坂下さんは締めくくった。

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