
2026年6月30日、みずほ銀行とUPSIDERは、創業期・成長期の企業に向けた法人向け総合金融サービス「UPSIDER BANK by MIZUHO」の提供開始を発表した。法人口座を起点に、決済、法人カード、オンライン融資、人材マッチングなどを一体的に提供する新ブランドだ。
発表会には、みずほフィナンシャルグループ グループCEOの木原正裕氏、みずほ銀行頭取の加藤勝彦氏、UPSIDERホールディングス代表取締役社長の宮城徹氏らが登壇。メガバンクの金融機能とスタートアップのAI技術を掛け合わせ、中小企業の成長支援に本格的に踏み出す狙いを語った。
みずほが中堅・中小企業支援に本格参入する理由

発表会の冒頭で木原氏が強調したのは、日本経済における中堅・中小企業の重要性だ。
地政学リスク、インフレ、労働人口の減少、AIをはじめとするテクノロジーの進展。企業を取り巻く環境が大きく変わるなか、日本の産業競争力を高めるには、地域経済やサプライチェーンを支える中堅・中小企業の成長が欠かせない。

木原氏は「大企業と中堅・中小企業をつなげていく。それによって、日本全体として力強いサプライチェーンを作っていくことが重要になる」と説明。みずほとしても、中堅・中小企業の成長支援を本格的に進める必要があると語った。
一方で、みずほはこれまでもUPSIDERとの連携を進めてきた。共同ファンドの運営や、UPSIDERの法人カードとの連携、AI与信を活用したスタートアップ向け融資などを通じて手応えを得たことが、今回の新ブランド立ち上げにつながっている。
「安さ・使いやすさ」と「成長支援」の両立へ

UPSIDERの宮城氏は、自身も創業者として企業を成長させてきた経験から、中小企業が直面する金融面の課題を語った。
成長企業は、取引先や従業員が増えるにつれて、口座管理や入金確認、権限設定などのバックオフィス業務が複雑になっていく。しかし、手続きのたびに支店へ行く必要があったり紙の書類を提出したりと、数週間待たされたりする状況では企業のスピード感に金融サービスが追いつかない。
一方で、オンライン完結型の低コストな口座は使いやすい反面、大きな融資や取引先紹介、人材紹介といった成長支援を受けにくい。
宮城氏は、これまでの中小企業向け金融サービスについて「低コストな法人口座」と「融資や成長支援」が分断されてきたと指摘する。「これをテクノロジーによって、相反するコンセプトだと言われてきたものを両方同時に提供できる道がないのかを探る。それが今回の新しいブランドの考え方です」
みずほの金融基盤と、UPSIDERのAI与信・プロダクト開発力を組み合わせることで、利便性と成長支援の両立を目指す。ここに「UPSIDER BANK by MIZUHO」の大きな特徴がある。
口座、決済、法人カード、融資を一体で提供

新ブランドの中核となるのは、日々の取引を支える法人口座と決済機能だ。口座開設は最短即日、インターネットバンキングの契約料・月額利用料は0円、他行宛振込手数料は一律100円に設定されている。
加藤氏は「日々の取引から成長投資まで、企業の成長ステージに応じて必要な機能を届けていきたい」と説明。法人口座を起点に、法人カード、創業支援融資、オンライン融資、成長支援サービスへと段階的につなげていく考えを示した。

法人カードでは、UPSIDERがAI与信を活用し、最大10億円の与信枠を提供する。仕入れ、広告宣伝費、サーバー代など、成長企業に必要な支払いを資金繰りの制約で止めないことを狙う。
さらに、UPSIDERは新サービス「アップサイダー・キャッシュブースト」も紹介した。AI与信を活用し、最大1.5億円の融資を即時提示するサービスで、無担保・無保証・オンライン完結・決算書不要を特徴とする。
デモでは、管理画面上で融資可能額を確認し、借入額や期間を選択してオンラインで契約まで完了する流れが示された。
2027年春には、みずほのオンライン融資も展開へ
今後の展開として、みずほ銀行は2027年春から、AIエージェントとAI与信モデルを活用したオンライン融資を提供する予定だ。24時間365日受付可能なサービスとして、最大3億円の融資を想定している。加藤氏によると、みずほが持つ財務データベースや与信モデルに、UPSIDERのキャッシュフローモデルのノウハウを取り込むことで、より幅広い資金使途や長期資金にも対応していくという。
加えて、企業成長には資金だけでなく、人材、会計、バックオフィスなどの課題も伴う。発表会では、130万人超の登録人材を持つ「みずほココナラ」などを通じ、専門人材やスキル人材とのマッチングを支援する構想も紹介された。
2030年度までには、中小企業向けオンライン融資実行額5,000億円、アクティブ口座10万口座の獲得を目指す。
法人金融は“手続きの場”から“成長支援の入口”へ
今回の「UPSIDER BANK by MIZUHO」は、単なる新しい法人口座サービスではない。低コストで使いやすい決済機能を入り口に、法人カード、融資、人材マッチング、バックオフィス支援までをつなげることで、企業の成長ステージに寄り添う金融プラットフォームを目指す取り組みだ。
木原氏は質疑応答で、中小企業向けレンディングのリスクについて問われた際、「“リスクがあるからやらない”ということは、やってはいけない」と語った。
メガバンクの安定した金融基盤と、UPSIDERのスピード感あるテクノロジーがどこまで融合できるのか。日本企業の大多数を占める中堅・中小企業の成長支援に向けて始動した、新たな法人金融サービスの今後に注目したい。
みずほ銀行公式サイト:https://www.mizuhobank.co.jp/







