地方の起業はハードルが高い? 解決のための企業の取り組み2選

2022/07/28
佐伯美佳

いま、「週末起業」などの言葉が聞かれるようになり、起業が身近になってきています。けれど、実際のところ、起業をしたいと思っても、何から始めればいいのか分からないなど、まだまだハードルが高く感じるのではないでしょうか。

実際、「起業したいけどノウハウがない」「地方では情報や機会が少なく起業しにくい」などの問題もあります。もっと起業へのハードルが下がればいいですよね。

そこで今回は、こうした起業のハードルの高さの課題を解決するための企業の取り組みをご紹介します。

■起業をとりまく課題とは?

起業イメージ

中小企業庁は、起業活動を促進することは経済を再生させ、日本経済の未来を切り拓く上で、非常に重要な課題として据えています。では、いま起業をとりまく課題にはどのようなものがあるのでしょうか。

●資金調達

中小企業庁が2010年に実施した調査では、起業時に直面した課題として「資金調達」が最も多いことが分かりました。次いで「質の高い人材の確保」でした。

●都市部と地方の機会格差

スタートアップ企業の地域別調達額割合の調査結果(※)によれば、2021年には7,801億円のうち、東京都が83.7%と大多数を占めています。都市部と地方の機会格差は大きいようです。

※株式会社ユーザベース「 2021 年 Japan Startup Finance~国内スタートアップ資金調達動向決定版」より

●女性の起業家はまだマイノリティ

女性の割合もまだまだ少ない状況です。内閣府「男女共同参画白書 令和元年版」によれば、起業家に占める女性の割合は、2017年で34.2%であり、これは1982年の42.0%のピーク時と比較すればむしろ減っています。

■地方での起業を促進させる起業の取り組み

こうした起業をとりまく課題を踏まえ、地方での起業促進のためのさまざまな取り組みが行われています。そこで、2つの取り組みをご紹介します。

1.起業家の育成・支援を強化する「NESファンド」

2022年7月4日付けで、投資会社のNESと信金中央金庫と三井住友トラスト・ホールディングスが連携し、地方の起業家の育成・支援を行っていくことを発表しました。

NESはこれまで「都市部と地方の機会格差を是正し、日本中のどこにおいても社会課題の解決・イノベーションが起こせる社会へ」を企業理念とし、大学や地方公共団体等との連携により起業家育成活動を行ってきました。

そしてこのたび、NESはベンチャーキャピタルファンド「NES 投資事業有限責任組合(以下、NESファンド)」への出資を起点として、NESファンドの様々な出資者が保有している機能・ネットワーク・専門性を融合させることで、事業創出の一層の加速を目指すといいます。

この連携により、NESファンドの資金支援と共に、起業塾や起業家育成プログラムなどの人材育成支援がスタートアップ企業へと行われます。

NESファンド連携イメージ図

●地域の課題の解決へ向けて

特に地方の人々にとって、起業はいまだ縁遠いものであり、起業やスタートアップの成長においても東京に一極集中の状況があることが、地域の課題として指摘されています。そうした中、今回の連携による取り組みによって、地方で起業家及びスタートアップと新たな事業(ロールモデル)を創出し、持続可能な地域経済社会を実現することを目指しています。具体的には、各教育支援エリアから全国規模の企業を各1社輩出し、支援エリアを全国に拡大拡充できる規模のファンドを目指すことを発表しました。

今後、地方で起業家のロールモデルがぞくぞくと創出され、都市部との差が埋まるのが楽しみです。

2.地方創生のため「副業・起業家支援・地方企業採用広報PR支援」

ベンチャー・成長企業のための就活サイトCheerCareer(チアキャリア)を運営している株式会社Cheerは、「地方創生・教育」の事業ミッションを体現するため、日本全国の地方自治体・商工会、企業様と連携し「Cheer Local Innovation(チアローカルイノベーション)」事業を2021年11月からスタートしました。

この事業では創業支援サービスを行っており、具体的には、事業モデル作成支援、事業計画書作成支援、事業アライアンス営業代行支援、資金調達代行支援、事業グロースのためのマーケティング広報支援などが挙げられます。

地方創生起業家応援ファンド取り組みスキーム図

組織のチームメンバーが目指すところは、地域を愛し、地域の人々との交流を通じ、「地方こそ働くという領域において、ワクワクするイノベーションが起きる舞台となる」という機会を創り出すことにあるそうです。

これにより、地方の起業家がぞくぞくと生まれるのを期待したいものです。

まとめ

コロナ禍や価値観の多様化により、起業が従来よりも身近になってきていることは確かなことです。しかし、地方は特に、起業はまだまだ縁遠いのは事実です。そうした中、今回ご紹介したような取り組みが進んでいけば、今後、地方での起業のほか、起業にハードルを感じている人がどんどん起業できるようになっていくでしょう。

 

【出典】
中小企業庁「2011年版 中小企業白書」(https://www.chusho.meti.go.jp/pamflet/hakusyo/h23/h23/html/k311300.html)

内閣府 男女共同参画白書 令和元年版「起業家に占める女性の割合の推移」(https://www.gender.go.jp/about_danjo/whitepaper/r01/zentai/html/zuhyo/zuhyo01-02-15.html)

【参考】
NES「信金中央金庫・三井住友トラスト・ホールディングスとの起業家教育及び起業支援に関する連携合意について」
(https://nes-vc.com/p-news/%e4%bf%a1%e9%87%91%e4%b8%ad%e5%a4%ae%e9%87%91%e5%ba%ab%e3%83%bb%e4%b8%89%e4%ba%95%e4%bd%8f%e5%8f%8b%e3%83%88%e3%83%a9%e3%82%b9%e3%83%88%e3%83%bb%e3%83%9b%e3%83%bc%e3%83%ab%e3%83%87%e3%82%a3%e3%83%b3/)

CheerCareer「Cheer Local Innovation」(https://cheercareer.jp/hslp/cheercareer-onlineevent)

起業イメージ

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この記事を書いた人

佐伯美佳

国内出版社のWeb媒体を中心としたライター。Web業界を経て、ライターとして独立・起業。健康・美容・グルメ・ライフスタイル・ビジネスのジャンルを中心に執筆中。思わず読みたくなり、読んだら得する情報を発信してまいります。

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