「食事で病気は防げる」——手作り療法食でペットと飼い主を支える獣医師・木原とも子氏の挑戦

ペットの病気の予防や体調の改善、健康に貢献しているリアルドッグ栄養セラピー。主宰の木原とも子氏は動物病院も経営しており、日々さまざまな動物と向き合っている。また、リアルドッグ栄養セラピーを通じて、ペットの飼い主の安心にも貢献。コミュニケーションを大事にしながら精力的に講座や発信活動を行っている。木原氏にリアルドッグ栄養セラピーへの想い、そして今後の理想を伺った。

ペットの健康を守ることが飼い主の心理的ケアに

リアルドッグ栄養セラピーとは、言い換えれば、犬や猫が20歳を目指すための手作り療法食マスター講座です。私は動物病院も経営していますが、ご自宅で飼い主さまの手でできる食事面のアプローチと位置づけています。動物は喋らないため、ペットが苦しんでいたり、痛い思いをしていると飼い主さまの大きな不安や苦しみにつながってしまいます。リアルドッグ栄養セラピーを通じて、現状に対して具体的に私が指示をすることで、何をしていいかわからない不安を段階的にケアすることが可能。そうすることで、ペットだけでなく飼い主さまの心理状態もよくなっていくのです。

私が大事にしている理念は、「動物本来の自己治癒力を引き出す治療」を行うこと。
そして、ペットの体調を改善していくためには、食事面からのアプローチも欠かせないことに私は気づきました。しかし、ペットの食事である市販のドッグフードやキャットフードを手作り食に変えていくことは、常識を覆していくことでもあります。取り組みをしていく中で、人々の固定観念を変え、本質を伝えるためには飼い主さまとのコミュニケーションが大切だと気づいたのです。そうしていくことで、「動物本来の自己治癒力を引き出す治療」を行うという理念が実現に近づいていく。当初は本質を伝えることに苦労もしましたが、徐々に私の取り組みが広がっています。

健康の実現は根本的なアプローチから

リアルドッグ栄養セラピーを始めたきっかけは、獣医として最初に働いていた頃にまで遡ります。多くの病気になった犬や猫を目にしてきましたが、人間と同じような現代病が多いことを不思議に感じていました。ご飯に困らずにいい環境にいるはずなのに、なぜこの病気になるのか、なぜこの病気が治らないのかと疑問は尽きなかったのです。加えて、多くは症状に対する対処療法となってしまうので、根本的な治療ともいえない。そして、自分自身が開業する際に、真の治療は一体何なのだろうかと考えるに至ったのです。その中で食事からのアプローチを始め、犬の解剖的、生理学的な特質に合わせた手作り食を研究していきました。

過去を遡ると、私が獣医になったのは、周りで共に過ごしてきた動物がなぜ病気で亡くなってしまうのだろうという強い疑問からでした。理由が分かれば助けてあげられる。だからこそ具体的な理由が知りたい。そのような思いを強く抱えていたのです。実際、ペット達は人間がつくった環境の中で生き、病気になれば人間がつくった薬を与えて治そうとする。治療を意図しているにもかかわらず、元々の環境を全く変えない点に私は違和感を感じていたのです。本来であれば、自然な生命の営みの中で、病気を予防したり、あるいは治療をすることが理想。つまり、自己免疫など体に対する根本的なアプローチをしていくことが重要なはずです。そのような結論に至り、今では使命感を持って取り組んでいます。

手作り食が自然な選択になる未来へ

今後はペットの食事として、手作り食という選択肢が当たり前にある社会となっていってほしいです。現在はペットフードが主流で、製造販売している企業があることで経済が回っています。しかし、手作り食のメリットが広がっていけば、フードメーカーも手作り食のような製品を開発していくかもしれません。だからこそ、私や講座を受けている会員さんたちと協力していくことで業界を動かすこともできるかもしれない。手作り食が増えることでペットの健康に貢献ができ、飼い主さま達にも安心を与えられる。そのような理想に向かって、私たちの取り組みが広がっていくことを願っています。

実際、私の講座を受けてくださっている飼い主さまの中には、ペットの体調が大きく改善したという声を頂くこともあります。加えて、この取り組みを広めていくべく、私の声に賛同してくださっています。今では私が提供する講座を受けてくれた方が、同じ立場の飼い主さまに言葉を届ける段階に入っていると感じます。今後も私の取り組みに賛同してくれている方と共に、さらに多くの飼い主さまに手作り食のアプローチを広めていきます。