日本コンタクトレンズ協会は、コンタクトレンズを安全快適に使用してもらうためにさまざまな普及・啓発活動を行っている。その一環として、9月10日「コンタクトレンズの日」にメディアセミナーを開催し、第10回目となるコンタクトレンズユーザーの実態調査結果を発表した。セミナーでは、眼科専門医の松澤亜紀子氏による、コンタクトレンズを不適切に使用することで生じる深刻な眼障害の症例についての講演も実施された。
9月10日が「コンタクトレンズの日」とされている理由は二つある。一つ目は、コンタクトレンズを人差し指に乗せ、目に装着する動作のイメージが9と10に類似していることから。二つ目は、コンタクトの「クト」と「9と10」の語呂合わせ。10月10日は「目の愛護デー」であり、その1ヵ月前をコンタクトレンズの日とし、1ヵ月間をコンタクトレンズの正しい使用と目の健康の啓発期間として定着させることを目的としている。
セミナーでは、一般社団法人日本コンタクトレンズ協会の会長・川浦康嗣氏による「消費者実態調査から見たコンタクトレンズユーザーのコンプライアンス意識」の調査結果が発表された。本調査は今年で10回目となり、コンタクトレンズユーザーの購入や使用の実態、眼科受診の頻度、コンタクトレンズおよびコンタクトレンズケースのリサイクル意向などを明らかにすることで、コンタクトレンズの適正使用や、定期的な眼科受診の啓発に生かす目的で実施されている。
本調査の概要は①若年層(10・20代)カラーコンタクトレンズユーザーの購入時の都度眼科受診は1割以下、10代の4人に1人が一度も受診なし。②男性コンタクトレンズユーザーの使用コンプライアンス(適正使用率)が低下。女性4.8%に比べて、男性は10.8%が眼障害を発症というもの。
昨今のコンタクトレンズの購入経路について、インターネット販売店や雑貨店・ディスカウントストアなどの非対面販売チャネルでもコンタクトレンズが購入できるようになり、多くのユーザー(特にカラーコンタクトレンズユーザー)が利用している、と調査結果をもとに指摘。特に、2020年と比較するとディスカウントストアや雑貨店などでの購入頻度が7ポイント上昇。
この結果を踏まえて、コンタクトレンズを購入しやすくなり便利な反面、対面販売に比べて眼科受診の推奨や適正使用の指導がされにくいため、眼科受診頻度の低下や使用コンプライアンスの低下の一因になっていると考察を述べた。
松澤氏は「コンプライアンス軽視で起こる深刻な眼障害」と題した講演を行った。講演では、眼科医として実際に見てきた眼障害の症例を多数紹介。コンタクトレンズを外さず寝てしまった、使い捨てコンタクトレンズを長期間装用していた、カラーコンタクトレンズの硬さあるいはアレルギーにより痛みや痒みが起こったなど、さまざまなケースが説明された。
コンタクトレンズを長時間装用や就寝時装用することで、角膜のキズによる疼痛(とうつう)、角膜の浮腫(ふしゅ)によるかすみ、角膜の炎症による充血といった症状が起こる。酸素の通りが悪いコンタクトレンズを長時間使用することで、角膜内皮細胞の減少、角膜混濁(にごり)などの不可逆性の障害(自覚症状が乏しい)が生じる。
講演のまとめとして、コンタクトレンズの不適切な装用により、急性の症状や自覚症状のない不可逆性の障害が生じることがあることや、レンズの不十分な衛生管理によって感染症が怒ると、永続的な視力障害が生じるリスクがあると指摘した。不適切な装用をしてしまう人は、眼科での定期検査を受けていないため、正しい知識がない。正しいコンタクトレンズの知識を広めて眼障害を減らせるよう手助けできれば、と話した。
これまでに行われている啓発活動としては、カラーコンタクトレンズを使う主に10代、20代の女性に向けて行っているポスターやリーフレットを眼科やコンタクトレンズ販売店に配布、掲出しているものがある。本年度の啓発活動としては、「吹き出しコンテスト」は、同協会のキャラクターのイラストに合わせてコンタクトレンズの正しい使い方の啓発につながるメッセージを考えて応募するというものや、動画クリエイターなどのインフルエンサーを起用した企画も行われている。