曲で言うとカバー、映画ならリメイク、過去の名作を現代によみがえらせるときにそう呼ばれる手法があります。そんな中、過去の名作漫画もとい、レジェンド漫画家のタッチを寸分違わぬ描写でよみがえらせる作家がいます。いわゆるイタコマンガ家。
ファンアート? 同人?
卓越したイタコマンガ家の忠実に再現した作品を見ると、レジェンド漫画家の新作? 遺稿? と見紛うときも。それほどにイタコマンガは、本家に近い画風になっており、その画力はイタコされた作家への敬愛の念を大いに感じます。そこで今回は、異色の作家「イタコマンガ家」やその作品について紹介します。
※イタコされる漫画家の中にはご健在の方もいるので早とちりされぬようご理解ください
手塚治虫先生をイタコする田中圭一先生
おそらくイタコマンガという名称がうまれるきっかけになった人物。漫画の神様・手塚治虫先生のタッチを忠実に再現し、パロディー漫画を描いています。本人が対談で語っていますが下ネタがお好きなようで、手塚先生が絶対に描かないであろう下ネタを、手塚タッチで描いたりしています。
また、車田正美先生、松本零士先生もイタコしています。そんな田中先生のコミック神罰では、手塚先生の娘・るみ子氏が帯を担当。「ライオンキングは許せても田中圭一は許さない」との推薦文を書き、良い関係を築いているようです。
アムロ・レイをデザインした安彦良和先生をイタコする針井佑先生
機動戦士ガンダムのキャラクターデザインを担当した安彦先生。アニメ監督としても大家。
針井先生は安彦先生をイタコしたイラストを描いています。安彦先生は70年代後半、人気のあったSF小説「クラッシャージョウ」の挿絵を描いていましたが、このたび漫画「クラッシャージョウ REBIRTH」として連載開始。針井先生は、安彦先生の絵柄をリスペクトし、この漫画の作画を担当しています。
ひとりで「りぼん」を網羅 前川さなえ先生。
イラストレータであり主婦でもある前川先生。さくらももこ先生、池田恋先生、岡田あーみん先生ら、あらゆる「りぼん」作家をイタコします。その作風を活かし、何人ものりぼん作家の作品をパロディーした漫画を掲載した「ひとりりぼん」を刊行しています。
藤子不二雄 鍵野真紀先生
藤子不二雄先生をイタコする作家、鍵野先生。ドラえもんを中心に、オバQ、パーマンなどF先生、もちろんA先生の作品もパロディーしています。劇中に携帯電話やペッパーくんが出てきたりと現代を意識した題材があったり、ドラえもんの世界観、絵柄でルパンや、だがしかしのほたるが登場したり、にぎやかな作風です。ちなみに男性です。
るーみっくわーるどを忠実再現 すべてぬげ先生
70年代後半、うる星やつらの誕生から現在まで、ヒット作を飛ばし続ける高橋留美子先生。彼女をリスペクトしイタコするのが、すべてぬげ先生。うる星やつらはもちろん、らんま、などまさにるーみっくわーるどを再現。その絵柄で忍たま乱太郎らも登場します。
さて、今回紹介した先生の作品を見て「同人じゃん」と思った方もいると思います。実際、同人として活躍されている先生もいますが、その忠実っぷりは生半可なものではなく、大本のレジェンド漫画家への尊敬と作品そのものへの愛情が感じ取れます。
田中先生は「パロディー作品」と断言し様々なイタコ作品を描いています。こっそりトレースする漫画家がいる世界で、腕一本で再現して見せるイタコマンガ家の情熱は、読み手のこちらもリスペクトしてやみません。