冬になると必ず本屋さんの絵本売り場で見かける超定番の冬絵本といえば?!
こちら、「てぶくろ」でございます。
絵本の発行部数は300万部。絵本の発行部数ランキングでは堂々の4位!又吉さんも驚きのミリオンセラーでございます。ちなみに、1位は「いないいないばあ」(569万部)、2位は「ぐりとぐら」(472万部)、3位は「はらぺこあおむし」(368万部)でございます。
これを見ると、その人気がいかに凄いか理解いただけるかと…。こちらはウクライナの民話で、雪の上に落ちていた片方だけのてぶくろに、次々と動物たちが住みつくというお話でございます。
物語の中で、最初は、「ねずみ」、そして、「かえる」、次に「うさぎ」と、どんどん、てぶくろの住人が増えていきます。今で言う、てぶくろ造のシェアハウスでございます。ところがです!果たして、人間が落としていった人間のてぶくろに、そんな大勢入れるものでしょうか?物理的に考えて、かなり無理があります。
なにしろ、最後に登場するのは「クマ」ですから…。もちろん、そこには「実は、このてぶくろ、ゴムゴムの実を食べていた」とか、「なるほどぉ~、そういうことね…、それなら入れるね」という謎解きがあるわけではございません。なんの仕掛けもなく動物の皆さんは、てぶくろをシェアされております。
そんなありえないシチュエーションが気になる大人には、この人気の理由は絶対に理解できないのでございます。
では、なぜ人気なのか…子供は、「繰り返し」が大好物なのでございます!昔話の「三匹の子ブタ」や「三匹のやぎのがらがらどん」を思い出してください。絵本に同じ設定で登場人物が次々に変わるだけという「繰り返し」モノが、とても多いのも、これが理由なのでございます。
子供は、気に入った絵本を何度も親に「読んで」と、せがみますが、子供は自分がよく知っているものに、再び出会うことに喜びを感じるのでございます。大人のように「また同じかよ」と、退屈しないのでございます。子供は大人と違い、次は何の動物が来るかな?って、ワクワクしながら、この絵本を楽しむのでございます。
ピコ太郎のPPAPが子供に大人気なのも、まさに、この「繰り返し」好きのせいではないでしょうか。
さらに、理由として考えられるのは…登場人物、失礼、登場動物のネーミングでしょうか…。「くいしんぼうさぎ」、「ぴょんぴょんがえる」、「はやあしうさぎ」、「おしゃれぎつね」、「はいいろおおかみ」、「きばもちいのしし」、「のっそりぐま」。
大人だと、なんてことのない形容詞、修飾語が子供には超ハマるのでござます。
そして、絵。暖かさの伝わってくる絵の中には、様々な仕掛けが…。徐々に改装されていく「てぶくろハウス」にご注目ください。まさに、「匠」の技でございます。呼び鈴がついたり、窓ができたり、はしごが設置されたり、…。大人はなかなか気づかないのですが、子供は必ず気づきます。そして、いろんなものを発見して楽しみます。
最後に、もうひとつ。「現実⇒空想(ファンタジー)⇒現実」という物語の構成。センダックの「かいじゅうたちのいるところ」も同じ構成になっております。
「かいじゅうたちのいるところ」は、男の子が、自分の部屋(現実世界)から怪獣の住む島(空想・ファンタジー)に行き、最後にまた自分の部屋(現実世界)に帰ってきます。この同じところに帰って来たという安心感が子供には、心地良いのでございます。
「てぶくろ」も、まったく同じ構成です。お気づきの方、いらっしゃいましたでしょうか…。絵本をよ~く見ると、おじいさんが落としていった最初のページと、おじいさんが忘れたことに気付いて戻ってきてみんな逃げてしまって手袋だけが残されたページと絵が全く同じなのでございます。
機会がございましたら、書店の絵本のコーナーでご確認くださいませ。