「水曜日のカンパネラ」様といえば、歌詞に独特の世界観がございます。小生も、水曜日のカンパネラ様の『桃太郎』を初めて聴いた時は、ビックラコキました。桃太郎にこんな解釈があるのかと…。
桃太郎は勉強・宿題そっちのけでゲーム三昧。みかねたおじいさん、おばあさんは、団子を桃太郎に投げつけ「家でゴロゴロしている暇があったら、鬼ヶ島にでも行ってこい!」と…。
ちなみに、この曲が収録されているアルバムの名前も「私を鬼ヶ島に連れてって」でございます。そんな「水曜日のカンパネラ」の世界観が好きな方に、是非ご体験頂きたいのが、こちらの絵本でございます。
「桃太郎が語る桃太郎」(絵:岡村優太 文:クゲユウジ)
今年5月に出版され今話題の一人称絵本「桃太郎が語る桃太郎」でございます。もし桃太郎が自らの口で語ったら、その額にカメラがついていたら…。そんな発想から誕生したちょっと変わった絵本でございます。
キャッチコピーもイカしています。「ぼくは鬼がこわいと思いました」です。
企画を考えたクゲ様は、絵本情報サイト「絵本ナビ」のインタビューで「小説にしろ映像やゲームにしろ、視点の違いで味わいは変わる。もともと、童話や昔話がナレーション形式で決まって語られることを、なんとなく不思議に思っていた」と。
この一人称絵本(正確には一人称童話シリーズ)の面白いところは、まず、主人公の桃太郎の姿が出てこないところ。体の一部が見切れることはございます。
そして、お話。こちらは、かなり大人向きかと…。
まだ桃の中に在住のシーンでは、「楽しみと心配が僕の胸にかわりばんこにやってきて、なんだかとてもドキドキしました」と、桃太郎は語っています。
さらに、鬼ヶ島に出発するシーンでは、「僕の旅立ちの日です。僕は2人を三日三晩説得しました。無事帰ってくると百回も約束し、ようやく鬼退治を許してもらったのです」と。かなり大人テイストのテキストになっております。
しかし絵本の最後には、子供向きというか、読んだ子供に対するメッセージも…。「キミが桃太郎ならどんな桃太郎?」「他の登場人物も考えてみよう」という、メッセージで絵本は締めくくられております。
第二弾「シンデレラが語るシンデレラ」も8月に出版になっております。こちらも一人称絵本でございます。内容も大人が楽しめるものになっております。
ラストの王子様からシンデレラへのプロポーズの言葉もイカしておりました。「12時の鐘が鳴ってもずっとそばにいてくれますか」…。
「水曜日のカンパネラ」のような独特の世界観が好きな方、また普段絵本を読まない大人の方に、是非ご体験頂きたい、ちょっと変わった大人絵本でございます。
(文:N田N昌)