人生にはいくつかの岐路があり、そのたびに人は何かを得たり、何かを捨てたりする。そこには決断があり選択がある。企画「私の道しるべ」では、様々な業界で活躍する人物を取り上げ、日本の明るい未来の為に、「誰かの道しるべ」となれるようなメッセージを届けています。
今回、その「私の道しるべ」に、靴や鞄、革小物を製作する工房「株式会社ユハク」代表取締役・仲垣友博さんが登場。革についてのことや事業を行う上での社員の育成のことについて語りました。
株式会社ユハクとは
仲垣友博さん(以下、仲垣)「『日々の暮らしを豊かにする』というコンセプトのもと、革製品を製造しています。絵を描くかのように全て手で染色をすることが特徴で、グラデーションを使って色を表現しています。自然の風景など、移り変わる色というのがものすごく心に響くと思うのですが、それを革の中に表現する中で、手で行うことによって一つひとつ違いが生まれる。それを革の中に閉じ込めているという感覚です。」
「手染め」の技をマニュアル化
仲垣さんは事業を続けていく中で、社員の育成方法を模索。マニュアル化という結論にたどり着きました。
仲垣「手染めに対する工程に関しては、他社ではやっていないことになるため、第三者からは教わることができなく、次なる職人が育ちにくいということを実感したため、その中でベースになる染色を一つひとつマニュアル化していくということが、一つの育成の方法として一番近道になるなと感じ、マニュアル作成に取り組みました。この色を作るには、染料の種類や特性、染料のレシピ、手の動かし方や力の入れ具合など、通常は自分であれば感覚や経験値でカバーしていくところも一つひとつ細かくマニュアル化していきました。」
社員に研究の時間を
作業をマニュアル化することによって生産性は上がったものの、ある問題が浮上。そこで仲垣さんは一つの解決策をとりました。
仲垣「マニュアル作りをしっかりしたことで、商品のクオリティが上がって生産性が上がったのですが、その反面、応用力が欠如してしまったと感じました。革は生き物なので、同じように染めていても同じように反応するわけではないのです。この革のこういう反応が出たときには、どう対処するかっていうところを経験値の中で補わなければいけないのですが、そこで、考える力を身につける時間を作っていきたいと考え、社員に研究の時間というものを設けました。
革表現の研究
研究の時間では応用力を育てるための課題を設け、社員にモノづくりの楽しみも感じてほしいと仲垣さんは言います。
仲垣「社員に様々なお題を与えるのですが、例えば一つの写真を出して、その写真を見たうえでどう受け取って、お客様がどう要望しているんだろうっていうところを想像して、それを革に投影するっていうことをやっています。やはりうちの会社に入ってきている者は、みな何かモノづくりをしたいという気持ちで入ってきているので、自分でクリエイトしていく楽しみ、自分でイマジネーションしてそれを形にしていく楽しみというのを味わって欲しいなと。」
職人自身の表現の場
仲垣「うちの会社で働いていてよかったなという喜びを感じてもらいたいと考えています。今『ユハク』というブランドの中でモノづくりをしていると思うんですけど、ただ自分がイマジネーションして生み出していく商品を形にするだけではなく、自分たちが発信して生み出していくことによって、『ユハク』というプラットフォームを使って一人ひとりが表現する場っていうのを作っていきたい、という風に考えています。」
ブランドのクオリティを高めるため、自身の持つ技術を社員に伝えるとともに、モノづくりの楽しみを感じる場も提供していく仲垣さん。仲垣さんと社員との間でまさにwin-winの関係となる理想的な職場が作られているのではないでしょうか。