「おまえの親になったる!」加害者への憎しみを乗り越えた男が選んだ道とは?

2019/10/18
佐伯美佳

ある愛情あふれる一人の社長のお話です。

カンサイ建装工業株式会社・日之出塗装工業株式会社 代表取締役の草刈健太郎さんは、日本財団による「職親プロジェクト」に参加しています。職親プロジェクトとは、刑務所出所者や少年院出院者の働き口を提供することで、再犯を防ぐ取り組みです。

草刈社長は、そこに参加する一企業の社長でありながら、ただの社長ではありませんでした。その背景には、今は亡き妹への思いと葛藤があったのです。

「職親プロジェクト」とは?

日本財団職親プロジェクトは、刑務所出所者や少年院出院者が再び罪を犯すことを防ぐため、また犯罪で悲しむ人を増やさないため、就労・教育・住居・仲間づくりの視点で社会復帰を応援するプロジェクト。
2013年に大阪市内で7社が調印式に出席し、発足しました。そこにはカンサイ建装工業株式会社の草刈社長の姿もありました。その後、12月には東京地域の調印式も9社によって行われています。

刑務所及び少年院にて採用面接を行い、面接合格者にはその企業の仕事や住居などが与えられ、再犯を防ぐために支えます。

日本財団の公式サイトによれば、「再犯者率(1年間の逮捕者のうち、犯罪件数が2回目以上の者)が1996年27.7%から2016年48.7%まで下がることなく上昇を続け、罪を犯した者のうち、約2人に1人が再犯をしている計算です。また、再犯者の70%が無職で、再犯時の有職者に対し無職者の数は約3倍の人数になっています。」とあり、再犯を防ぐ大きな手段の一つが、有職であると考えられています。

■留学先の米国で妹を殺害された過去

草刈社長が職親プロジェクトに参画したのは、知人の「千房」の中井正嗣社長からの誘いがきっかけでしたが、2005年に脚本家を目指し米国に留学中だった妹さんが同居していた米国人の男に殺害された経験から、「加害者の支援をする」こと自体、はじめは本当に嫌だったといいます。
しかしプロジェクトの活動を始めるにつれ、「加害者を減らすことが被害者を減らすことになる」のだと気づいたのだといいます。そして、「妹から課せられた使命」だと思うようになったのだそうです。

■親以上の愛情を注ぐ

草刈社長は現在も、元受刑者をわが社に雇い入れ、就労支援を行いながら職親を務めながらも、まるで本当の親以上の存在になっています。
初めて雇った少年は親の愛情を受けず、嘘をつきまくって、何ごともごまかして生きてきた子でした。雇い入れても何度も辞めては戻ってくるこの少年を、草刈社長は幾度となく受け入れてきました。
心も体も弱っている子たちに与えるのは厳しさではなく、愛情。本来、親から愛情を受けて育ち、社会に出て荒波にもまれるという基礎が人間には必要で、彼らにはそれがない。だから、愛情を注いで、基礎を今から作ろうとしている、そう草刈社長は述べています。
2019年10月10日に発売されたノンフィクションルポルタージュ「お前の親になったる 被害者と加害者のドキュメント」は、草刈社長が妹を殺めた男が仮釈放されるということを目の前にしたことから書こうと決断した初の書籍。読んだ人が一歩踏み出し、そこに何か気になるものがあればそっと手を差し伸べられるお手伝いになればという思いが込められています。

【取材協力】

草刈 健太郎さん
1973年、大阪府岸和田市生まれ。近畿大学法学部卒業。カンサイ建装工業株式会社をはじめとした3社の代表取締役を務める傍ら、日本財団の再犯防止プロジェクト(職親プロジェクト)を立ち上げメンバーとして推進するなど、幅広く社会復帰促進就労支援を実施。刑務所や少年院からの出所者に社会復帰や就職機会を提供する公益社団法人OMOIYARIプロジェクトを設立し、その代表理事として就労支援以外にも被災地支援や発展途上国支援など活躍の場は多岐にわたる。著書に「お前の親になったる 被害者と加害者のドキュメント」(小学館集英社プロダクション)がある。

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この記事を書いた人

佐伯美佳

国内出版社のWeb媒体を中心としたライター。Web業界を経て、ライターとして独立・起業。健康・美容・グルメ・ライフスタイル・ビジネスのジャンルを中心に執筆中。思わず読みたくなり、読んだら得する情報を発信してまいります。

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