「カウンセリングは重たいものではなく、友達に話すような感覚で悩みを吐き出すだけで楽になるもの」。そう語るのは、兵庫県伊丹市でカウンセリングとコーチングを提供する株式会社COCOHARELISS(ココハレリス)の庄野晴美代表。カウンセリング、コーチングの重要性を伝え、気軽に受けられる環境作りをしていきたいという庄野さんに思いを聞いた。
「楽になった」と言われるのが喜び
当社では、企業・団体のメンバーと個人の両方を対象に、コーチングとカウンセリングを提供しています。自社にあるカウセリングルームでのセッションに加え、Zoomを使ったオンラインセッションも行っています。
企業のメンバーに対するコーチングの目的は、モチベーションを高め、目標を見つけるサポート。もちろん、目標達成までの伴走も大切な役目です。資格取得を目指す方に合格まで伴走することもあります。企業にとって、これからの時代の一番の課題は人材育成と定着です。そのお手伝いにやりがいを感じています。
働く方の中には、新型コロナウイルス禍により、リモートワークへの勤務体制の変化や行動制限が原因で、心が疲れている方も少なくありません。私はカウンセラーの資格も持っていますので、心のケアもしながらコーチングを進めています。
個人の方のセッションを通じても、人と対面で接する機会が少なかったことで不安を抱えている方が大勢いらっしゃると感じます。カウンセリングで不安や悩みを吐き出し、楽に生きられるようになっていただきたいですね。
また、誰しも、小さい頃からの親の言葉などに無意識のうちに縛られているところがあります。それを解きほぐして、「今のままの自分でいいんですよ」と伝えてあげると「楽になりました」と言われます。その言葉がとてもうれしいですね。原因が分かれば次に進んでいけますから。
若い世代の方からのお問い合わせも多いです。先行きが不透明な時代で不安要素も多々ありますが、若い人にはやりたいことに積極的にチャレンジしてもらいたいと思います。失敗も貴重な経験ですから、恐れることはありません。
チャレンジしてチャンスや可能性をつかむためには、準備が必要です。そのための土台作りを、コーチングやカウンセリングで培ってもらいたいと考えています。
父の介護がきっかけで心理学を学ぶ
心理学を学んだきっかけは父の介護でした。父が四肢麻痺で寝たきり生活になり、見舞いにいく度に精神崩壊していく姿を目の当たりにしたのです。最初は、介護士さんに暴言を吐いても、家族にはそれまで通りの父でした。それが徐々に私たちにも攻撃的になってきて。こういう状態の人に必要なのは、身体のケア以上に心のケア。しっかりと向き合うためには、心理学を勉強する必要があると思うようになりました。
家族の協力を得て、一年間専門の学校に通って学び、複数の資格を取りました。しかし、最後の資格が取れるまでに父は他界してしまい、父には何もできなかったのです。
父にはできなかったからこそ、他の人のために学んだことを生かしたいという思いが湧いて。父のこと以外でも、子育てや夫、義理の家族との問題など、悩んだり辛い思いをしたりすることもたくさんありました。同じような経験をしている女性が気軽に話せる場所を作りたくて、起業してカウンセリングルームを開設しました。
遠方の方や家を空けられない方にも利用していただくために、オンラインでのセッションも行っています。対面には対面の良さがありますが、オンラインならノーメイクでパジャマ姿でもいいですから、子育てや家族の介護中の方も気軽に受けられるという大きなメリットを感じています。
カウンセリングに対するイメージを変える
若い時に友達が亡くなり、義理の父母と自分の父も見送りました。身近な人の死に接することで人生の終わりを意識し、「誰かのお役に立てた」と思いながら旅立つことが、私のゴールだと思うようになりました。そのゴールを達成するために、年齢や性別にとらわれず、自分がやりたいことをやっていこうと思います。
一番やりたいと思っているのは、カウンセリングに対するイメージを変えることです。日本ではカウンセリングに対して、うつ病や自殺寸前のようにとことん落ちた状態で受けるものというイメージがあります。それを払拭して、ちょっとした悩みでも友達に話すような感覚で吐き出すだけで楽になる場所、と思ってもらえるようにしたいですね。
カウセリング、コーチングを広めるために自分一人でできることには限りがありますから、仲間たちと一緒に取り組んでいます。活動の一つとして、先輩が日本メンタルコミュニケーター協会を立ち上げており、私もその会員です。例えば、男性の方が「女性には話しにくい」という場合は、男性のカウンセラーやコーチを紹介することもできる体制を作っています。
「念ずれば花開く」という言葉が好きです。これは「ただ念じていればよい」ということではなく、「今を大切に生きていれば、いつか必ず花開くときが来る」という意味です。私も下を向いていた時期もありましたが、今は前を向けるようになっています。カウンセリングを受けてくださる方々にも、しんどい時がずっと続くわけではない、絶対に前を向けるときが来ると伝え、共に歩んでいけることを願っています。