手塚治虫がキレた!?村上春樹御用達の絵本作家・佐々木マキとは何者?

2017/02/23
N田 N昌

村上春樹先生が24日に4年ぶりに小説『騎士団長殺し』を出すと発表されましたが、その春樹先生が、高校時代から大ファンで、最初の小説「風の歌を聴け」が単行本になると決まった時、「ぜひ、この方に!」と、その表紙の絵を依頼したのが、何を隠そう人気ナンセンス絵本作家の佐々木マキさんなのでございます。

 

その後、数々の村上作品の表紙や挿絵を手掛けております。世界の巨匠、村上春樹に「佐々木マキは僕にとっては永遠の天才少年である」と言わせてしまう、この佐々木マキという絵本作家とは…

 

 

実は、佐々木マキさん、春樹先生がファンになった頃は、まだ絵本作家ではなく、漫画家だったのです。そう、マツコ・デラックスさんが絶賛したナンセンス絵本の重鎮、長新太先生と同じ経歴なのです!

 

漫画家時代は、伝説の漫画誌「ガロ」などで活躍。実験的ともいえる、スタイリッシュで前衛的な作風の漫画家として大きな注目を集めておりました。たとえば、フキダシの中に絵を入れてみたり、中世ヨーロッパの書物の挿絵みたいなタッチのみで描いてみたり、コラージュやスタンプを使用したり、もう好き放題!様々な描画手法を使いまくり!でございました。

 

内容もシュール、ナンセンス、旅行記風、SF風、…なんでもござれ!その前衛すぎる作風に、当時、アノ手塚治虫大先生が「あれは狂ってる」「あの連載をすぐにやめろ、載せるべきではない」などと表明するほど。

 

恐るべし佐々木マキなのでございます。気になる方は、ぜひ、佐々木マキの漫画の方もチェックしてみては…

 

 

では、本題の絵本作家としての佐々木マキについて。デビューは、1973年、「やっぱりおおかみ」(福音館書店)という作品。

 

 

こちらは、有名な作品なので読んだことのある方も多いかも。かなりのロングセラー絵本となっております。主人公はまるで影のような真っ黒なおおかみ。さらに、このおおかみは物語の中で「け」の一言しかしゃべりません。発売当時は「子供らしくない」という反発の声も大きかったとか…。

 

逆に言えば、すこぶる大人ウケする絵本と言えるかもしれません。読んだことのない方はぜひ!間違いなく大人が楽しめる深~いナンセンス絵本でございます。

 

そんな佐々木マキさん、実は、絵本を描くようになるまで、まともに絵本を読んだことがなかったそうです。そこで、出版社の方に「これ、読んでみたら」と薦められたのが、あの「かいじゅうたちのいるところ」で有名な絵本作家、モーリス・センダック氏の絵本、「まよなかのだいどころ」だったそうです。

 

ご存じの方もいらっしゃると思いますが、センダックの絵本は、漫画のように、ページの中に枠線があったり、吹き出しがあったりします。佐々木さんは、このモーリス・センダックの作品をみて、見よう見まねで「やっぱりおおかみ」を描いたんだとか。

 

興味ある方はぜひ、佐々木マキの「やっぱりおおかみ」とセンダックの「まよなかのだいどころ」、読み比べてみてはいかがでしょうか。余談ですが、当時、この「やっぱりおおかみ」は、ある漫画賞の最終候補まで残ったそうです。(「これは漫画ではない」という判断で落選したそうです…)

 

 

その後、絵本界で大活躍!今や、ナンセンス絵本界を代表する大人気絵本作家のおひとりでございます。「ムッシュ・ムニエル」シリーズ、「ねむいねむいねずみ」シリーズ、「ぶたのたね」シリーズなど、数多くの人気絵本を世に送りだしていらっしゃいます。

 

ナンセンスで大人にも大人気の佐々木マキさまの絵本は、大人絵本デビューにも超おすすめでございます。ぜひ、いちど!

 

 

 

そうそう、最後に…佐々木マキさんは男性です。(実は、私も最初ずっと女性だと思っておりました)

 

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N田 N昌
この記事を書いた人

N田 N昌

放送作家・ナンセンス絵本マニア 「有田とマツコと男と女」「レゴニンジャゴー(アニメ)」 「天才テレビくんMAX」「小島慶子のオールナイトニッポンGOLD」 など、テレビ・ラジオ番組の構成脚本を担当。

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